24
――訓練場に到着すると、リットたちは
ネイルが戻ると、訓練場にいた彼の仲間たちが手を止めて集まってくる。
おそらくリットたちのことを説明しているのだろう。
いかにも
それからネイルは、リットたちに武器や防具を選ぶように言った。
訓練場の端にあった棚には、立てかけられた剣や斧、さらには弓矢や盾、兜などが並んでいる。
使い込まれていそうだったが、どれもよく手入れされたものばかりだ。
その棚から、ガーベラとフリーは迷わず武器を選んだ。
ガーベラは
フリーは金属製のロッドを手に取る。
ファクトはどれにするかを悩み続けている。
「フリーはわかるけど。ガーベラって前から騎士になるって言ってなかった? 騎士っていったら剣じゃないの?」
リットがガーベラが戦槌を選んだことを不思議に思って訊ねると、彼女はこれでいいのだと返事をした。
相手を兜や甲冑ごと粉砕するため、そして分厚い壁などを破壊するには戦槌が向いていると、ガーベラは棚にあった一番重量のあるものを選ぶ。
剣の腕ならば仲間内で一番長けているのにと、リットはいまいち納得できなかったが、まあいいかと棚から剣を取った。
ファクトのほうも決まったようで、彼は投げナイフとそのホルダー、
「武器は決まったか。じゃあ、始めようぜ。誰からいく?」
四人に声をかけたネイルの背には、二本の片手剣が見えた。
彼は双剣使いなのだと、それなりに彼のことを知っていたリットはこのとき初めて知った。
「私からいこう」
「えーと、ガーベラつったか。たしか腕力に自信があるんだったな。じゃあテメェからいくかい」
ガーベラが名乗りを上げて前に出てくると、ネイルも前に出た。
彼が全員の腕を試すつもりだったのだろうが、そこへ訓練場にいたニ人の男が声を上げて止めてきた。
ネイルが不機嫌そうに顔をしかめると、そこにはなんと――。
「ガーディとトリッキー……。ニ人とも生きてたの!?」
それは、流刑島パノプティコンで一緒だったガーディとトリッキーのニ人だった。
リットが驚いていると、彼らは詰め寄ってくる。
視線に怒りをにじませ、今にも斬りかかろうといった様子だ。
「ああ、小舟から放り出された後、運よく
「とっても良くしてくれてよぉ。今ではネイルの下でギルドの仕事をしてる。つまりは俺らはお前らの先輩ってわけだ」
ニ人はいきさつを口にしながらも、その
彼ら彼女らとニ人が
彼はそのやり取りからリットたちとニ人の関係を察し、ガーディとトリッキーにフリー、ガーベラ、ファクトと模擬戦をするように指示を出した。
ガーディが話がわかると言いたげに口笛を吹くと、こっちはニ人で構わない、全員でかかってこいと言う。
当然そんな態度を取られれば面白くない。
だが、ネイルはガーディの言うとおりに戦うように言った。
文句は勝ってから言えと続け、リットの頭を掴んで下がっていく。
「ちょっとネイル!? みんなのことバカにしすぎだよ! 3対2なんて楽勝すぎるでしょ!? フリーもガーベラもファクトも結構強いんだよ!」
「甘く見ているのはテメェだ。あいつらはなんだか知らねぇがうちに来てからバカみてぇ鍛えてたからな。そりゃもう崖から転がった岩や交尾するウサギみてぇによぉ。有利だからって油断していると、あいつら殺されるぞ」
ネイルの言葉からは
この男は口こそ悪いが面倒見がよく、何よりも
以前のニ人とは違うのか。
リットは不安を感じながらも、下がらされた位置から戦いを眺めると、向き合う男女が武器を振り上げていた。
ガキンといった金属音が訓練場に響き渡る。
ガーベラの戦槌とガーディの
フリーとファクトがそれぞれ左右に動いた。
フリーは
正面で再びガーベラと打ち合いを始めたガーディと、彼の後ろにいるトリッキーに向かって、彼らは遠距離攻撃を仕掛けるつもりだ。
それを読んでいたトリッキーは、すでに詠唱を開始している。
「大地よ。我に
地面が震え、土がうごめくと三人の体に巻き付いた。
縛るように身動きを封じ、それを見たガーディが、まずは目の前にいるガーベラに向かって戦斧を振り上げる。
ガーベラはこれをなんとか戦槌で受けるが、全身に絡みついた土の拘束のせいで反撃ができずにいた。
「よし、ガーディ! お前はその女を殺せ! こいつらは俺が
トリッキーは歓喜の声を出してガーディに
このままでは終わりだ。
まずはフリーとファクトがトリッキーの魔法攻撃によって倒され、なんとかガーディの攻撃を受けているガーベラも次にやられる。
相手の出方もわからずに、むやみやたらに突っ込むからこうなる。
戦いを眺めていたネイルがそう言うと、リットは笑みを浮かべて彼の肩を叩いた。
「まだ終わらないよ。だって、あの三人はとってもスゴいんだから」
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