第161話 シオンの初恋

 パパとママがお友だちの家に行くことになった。


パパのお友だちは絵描きさんをしてる。

その人が自分の絵の個展を開く時は、必ずパパが会場のお仕事をする。

ママ同士も凄く仲良しだ。


今年のクリスマスはその家から招待されている。フランスへは久しぶりなのでパパもママもとても楽しみにしている。

わたしも一緒に行きたいと言ったら、普段は家に籠もってばかりいるので凄く喜んでくれて、連れて来てもらった。


わたしは学校以外はずっと家の中で生活している。学校も最近では行ったり、行かなかったり…所謂引きこもりと云うやつだ。


わたしがフランスまで一緒に来たかったのは、逢いたい人がいるから。


その人に初めて逢ったのは小学校3年生の時だった。

ママと出先で途中花屋に寄った。

ママのお友だちの花屋さん。

そのお店に王子様みたいにカッコ良い男の子が花屋のエプロンをして働いていた。


マリンブルーの瞳に少し亜麻色の髪。まるでマンガやアニメに出て来る男の子みたい。


「数真くん? やだっ大きくなったねぇ」

ママはその男の子を知ってるみたいだった。


「益々カッコ良くなっちゃって…もう高校生だっけ?彼女とか出来た?」

「そんなもの…いませんよ」


「螢ちゃんも久しぶり」

「ヒナギクさん、お久しぶりです」

一緒にママと挨拶してる女の子は顔中雀卵斑そばかすだらけで、真っ赤な長い髪を二つにおさげにしてる。


「二人でリースと鉢植えをキクちゃんの車に運んでくれる?」


「はい」

「おう」


ママはパパのお仕事で使うお花をいつもこのお店で買ってるみたい。

わたしはアニメの王子様みたいな男の子から目が離せなかった。


「数くん鉢物は重たいから二人で運ぼう」

「バカを言うな。お前の細い腕にこんな物持たせられる訳無いだろう。俺は男だから大丈夫だ。リースを持ってついて来い」

うわぁ~まさにアニメの王子様だ!


「相変わらず螢ちゃんには優しいのね」

「姉弟みたいなものだからね」

ママたちは笑って話してた。


「可愛いお姫様、気をつけてな」


車が出る時、王子様がわたしにシオンの花を一輪くれた。


わたしの初恋だ。


パパとママがフランスに行くと訊いて、あの時の王子様にまた逢いたかった。



来てみて驚いた。

緩やかな坂道を登った先には大きな正門があって、木々に囲まれた中庭、そこに建っていたのは煉瓦造りの古い教会だった。


いくら何でもお城に住んでるとは思って無かったけど、教会だなんて…!


「よう瀬戸、暫く世話になるな」

「おう」

パパ同士が話をしてると扉の中から男の人が出て来た。


「父さん、荷物運ぶの手伝うよ」

「ああ頼む」


すぐに判った。わたしの王子様だ!


「シオンちゃんも来てくれてありがとう」

笑顔を向けて話しかけてくれる。

ドキドキが止まらない!


あの時よりずっと、ずっとカッコ良くなった。


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更新遅れのお詫び

いつもご訪問ありがとう御座います。

最近更新が遅れ気味で申し訳ありません。

持病の悪化と仕事の忙しさに加え、10月の資格試験に向けて勉強中です。

毎週列車に2時間揺られ講習会場に通っています。

時間が遅れても、持病がこれ以上悪化しない限り毎日更新したいです。

どうぞよろしくお願いします。

           ねこねこ

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