第78話 太陽がいっぱい #1
「えっ…海?」
わたしはびっくりして聞き返した。
「はい!やっぱり夏なんで、みんなで楽しめるところがいいと思うんです」
副部長の笹森さんは満面の笑顔を向ける。
「任せてください!稲垣くんと一緒に絶対いい合宿にしてみせます!」
そう言いきる笹森さんにわたしは何も言えなかった。
『海…かあ…』
海やプールは苦手だ…人が多いし…
何より、海なんか行ったら潮風で髪も躰もベタベタして気持ち悪い…
「部長も泳ぎますよね?」
笹森さんがわたしに訊いてくる。
「無理!無理!無理!無理!無理!無理!」
わたしは必死で断った。
「え~っ!何でですか?」
笹森さんが不満げだ。
「だって泳げないし! 第一水着なんて持ってないよ!」
場所はともかく、海に入るのだけは絶対阻止しないと…
「だったら一緒に買いに行きましょう!わたしが部長に似合う水着選んであげますよ!」
笹森さんが勝ち誇ったように言う。
みんなの前で水着なんて…恥ずかしくて絶対無理だって!
「瀬戸先輩だって部長の水着姿見たいですよね?」
「えっ?…いや…俺は…」
いきなり振られて瀬戸くんもびっくりしている。
「ほらっ! 見たいそうです!」
笹森さんが断言する。
「えっ?…だって今何も…」
もう泣きたい…
「素直に見たいと言えないだけですよ!
否定してないのがいい証拠です」
笹森さんはニッコリ笑うと、わたしの腕を取って買い物に誘う。
「さあ、行きましょう!」
わたしはそのまま引っ張られる…
教室を出た時、笹森さんと稲垣くんとでサインを交わしてるなんてわたしは気付かなかった。
「じゃあ、先輩1時間お願いします」
合宿場所は笹森と稲垣の提案通り海になった。
海では、水の事故等危険もあるため、泳ぎの出来る男子部員が必ず1人は傍に居ることが条件付きになった。
とはいえ、何だかんだ殆どのやつが海に来ているので、あまりこの当番は必要無さそうだった。
「あっ、ほらみんなあそこにいます」
稲垣はひと塊になっているグループを指差して教えてくれた。
「なんだ? 何ナンパなんかに引っ掛かってんだよ!そう云うのは今回無しなのに!」
よく見ると、ウチの女子に混じって何人か知らない男がいる。
「もう…しょうがないなぁ」
稲垣が近づいて行くので俺もその後を追った。
俺が目線を向ける先にアイツもいる。
知らない男に声をかけられ、目隠ししてスイカ割りをしている。
『アイツっ!』
傍に行き声をかけてる男をどかす。
何か文句を言いたそうだったが、俺が睨み付けると後退りしている。
ちょうどスイカに見立てたビーチボールに棒を振り下ろした時だった。
「あっ…ダメだったみたい」
目隠しを外した目の前に俺が立っているのに気付いて可成り驚いている。
「あっ…あの…しょ…」
「何やってんだ真古都ぉ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます