ハッピーエンドは願えない

増澤 瑞穂

誕生日

今年の誕生日を前に、大好きなあの子に彼氏が出来た。自分じゃない誰かと誕生日を楽しく過ごす姿を想像しただけで嫌で嫌で堪らなかった。去年までは眠気と戦いながらあと15分、あと3分…と掌の中の液晶が0:00を表示するのを待って、喧しいほどにお祝いのメッセージを送っていた。でも今年はそんな気にもなれなかった。いじけた私はその日1日あの子を思い浮かべながらも寝る直前、誕生日が終わる数分前までメッセージを送らなかった。

「遅くなった!誕生日おめでとー!頻繁には会えないけどまた遊んでね」

すぐに既読の文字が表示された。

「ありがとう!日付が変わった瞬間に来てなくて寂しかった…これからもいっぱい遊ぼうね!」

寂しかった、この一言で翻弄される。あまりにも単純。本当に寂しかった?まだメッセージ来ないなって私を思い浮かべた?

ねぇ寂しかったなら来年はさ、この日は休みを取って新幹線に乗って会いに行くから。

早くそいつと別れてよ。

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