第28話

この8年間、高田重工業は劇的な成長を遂げた。新しい技術の開発や、様々な事業展開を通して、日本を代表するメーカーに成長し、輸出も行うグローバル企業となった。


新しい技術の開発においては、IoT、PT-RFID技術をはじめとした先進技術を各事業部で活用し、工業、農業、医療、介護、運輸といった多様な業界への展開を行った。その成果は社会に大きなインパクトを与え、経済の立て直しに貢献した。


8年前、"ドローンロンダリング"で貴仁の元に戻った石は、その後、高田重工業の開発部門で解析が進められた。研究チームは日夜を問わず、石の謎を解き明かそうと奮闘していた。そして、ついに衝撃的な事実が明らかになった。


石の解析からわかったことは、なんと1億年前、地球外の生命体がこの物体を地球に送ったというものだった。地球外生命体の存在が示唆されるこの石は、人類の歴史に革命をもたらす可能性があった。


瑛介の石には、まず送られた経緯が書かれていた。

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遥か宇宙の彼方、星の数さえも把握できないほどの広がりの中に、ある高度な文明が存在していた。その文明は地球からは想像もつかないほど進んでおり、人類の知識をはるかに超える技術を持っていた。彼らは自分たちと同じような文明が他にも宇宙に存在するのではないかと考え、他の生命体と交信を試みることにした。


しかしその試みは容易なことではなかった。宇宙は広く、また時間の流れは様々である。人類の時間で数百年、長くとも1000年程度の短い期間しか文明は存在しえない。宇宙のどこかに生命があるとしても、自分たちと同じように文明があるとは限らない。仮にあるとしても、同じ期間に文明が栄えている可能性は極めて低い。


宇宙船を使って他の惑星に移住する方法も検討されたが、それも困難であった。非常に長い間移動しなければならず、技術的にも難しく、また誰もそれをやるとは言わなかった。


そこで彼らは新たな方法を思いついた。無人の宇宙船を作り、生命がいそうな惑星に次々と送り込むことにした。その宇宙船には彼らの文明の象徴である石が搭載されており、他の文明との交流の手がかりとなることを願っていた。


何百もの惑星に向けて宇宙船が送り込まれ、その中の一つが地球であった。


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「これはまるでボイジャーのゴールデンレコードのようだ」と高田が言った。


ボイジャーは100年近く前に打ち上げられた探査機で、その中には総合的で電子的なメッセージが搭載されていた。これは地球の文明や文化、自然界の音などを記録し、未知の生命体に向けて送ることを目的としていた。ボイジャーのゴールデンレコードは、地球のあらゆる情報を詰め込んだ、まさに宇宙へのメッセージであった。


ゴールデンレコードには、以下のような内容が含まれている。


自然界の音:風、海、鳥のさえずり、雷など、地球上の自然現象に関連するさまざまな音が収録されている。

人間の言語:55種類の言語で「こんにちは」や「平和」などの挨拶が収録されており、地球上の多様な言語を紹介している。

音楽:クラシックから民族音楽、現代音楽まで、世界各国のさまざまな音楽が収録されています。これにより、地球上の文化の豊かさが伝えられる。

画像:ゴールデンレコードには、地球の風景、動植物、人々の生活、科学技術など、さまざまな画像が記録されている。これらの画像は、地球上の多様な生命や文化を示すものだ。

挨拶メッセージ:アメリカ合衆国大統領や国際連合事務総長からの挨拶メッセージが収録されている。これにより、地球上の指導者たちの平和的な意志が伝えられる。

数学と科学の情報:地球の位置や構造、人類の進化、DNAの構造など、地球とその生命に関する基本的な科学情報が収録されている。


「瑛介の石にも、ゴールデンレコードと似た内容が含まれているのかもしれないね」と貴仁は言った。彼は石から得られた情報が、地球外文明によって開発された未知の科学技術を示す可能性について考えていた。


「そうだね。もしかしたら、この石の中には、私たちがまだ知らないような画期的な技術が隠されているかもしれない」と高田も同意した。


純礼は、瑛介の石を眺めながら、その中に刻まれた地球外生命体の思いにふけっていた。


「この地球外生命体たちがどんなことを考えていたのか、そもそも彼らにも考えるという発想があったのかしら。どんな生活を送っていたんだろう」と純礼は疑問を投げかけた。


高田はしばらく考え込んでから、「彼らは私たちとは違うかもしれないが、何らかの感情や意志を持っていたことは間違いないと思う。彼らが地球に石を送った理由も、何か特別な目的があったのかもしれない」と述べた。


貴仁もまた、自分の考えを共有しようとして言葉を続けた。「彼らの生活は、私たちが想像できる範囲を超えているかもしれないね。でも、彼らも愛や友情、家族といったものを大切にする存在だったのかもしれない。私たちと共通する部分があるのかもしれないよ」


純礼は彼らの意見を聞いて、優しい笑顔を浮かべた。「そうね、彼らも私たちと同じように感情を持っていたり、愛するものがあったのかもしれないわ。それを考えると、彼らが私たちに石を送った理由も、もしかしたら、私たちに何かを伝えたいという願いがあったのかも」

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