第20話
電子研究部のメンバーたちは、瑛介の遺した石の話題で盛り上がっている。
貴仁:「この画像が宇宙から撮影されたとしたら、古代文明が宇宙旅行まで到達していた可能性もあるんだよね。」
啓太:「それとも、宇宙人が地球を訪れて、その記録を残したのかもしれない。」
ありさ:「ねえ、この石には他にどんなデータが入っているのかな?科学技術の情報とか、宇宙人とのコミュニケーション方法とかがあったりして!」
ありさも、瑛介の遺した石に興味を持ち、想像に胸を膨らませていた。しかし、その中で純礼だけが何かを悩んでいるような浮かない顔をしていた。貴仁が気づき、声をかける。
貴仁:「純礼、どうしたの?何か悩んでることある?」
純礼は答えられない。
話題は今後についてに変わる。
石についてこれ以上の解析を進めることは難しい状況にあった。
その理由は、人手が足りなかったことだ。
石にはこれまでに見つけた画像以外にも、膨大な量のデータが保存されていることがわかっていたが、それを解析するためには多くの人手が必要だった。
貴仁:「この石をもっと解析したいけど、現状の人手では厳しいよね。」
啓太:「そうだね、でももっとたくさんの人に協力してもらうとなると、この情報が漏れるリスクも上がってしまう。それに、これが実際に信じられる情報なのかどうかも確定していないから、どこまで広めるべきか難しいところだよね。」
ありさ:「うーん、じゃあどうしたらいいんだろう?」
そのとき、貴仁の端末に着信があった。高田圭司だった。純礼は顔をしかめ、すぐに悪い予感がした。貴仁は通話をスピーカーモードにして、純礼を含めた部員たちにも会話が聞こえるようにした。
高田:「貴仁くん、ちょっと悪いお知らせがあるんだけど…」
貴仁:「何ですか?」
高田:「実は、PT-RFIDのプロジェクトが終了になることになったんだ。こちらの判断だけど、小林純一も同意している。」
高田:「ある事情があって…。詳しいことはここでは話せないんだ。でも、プロジェクトの終了は決定事項だから、これ以上続けることはできないんだ。」
貴仁:「でも、こんなに進んでいるプロジェクトを止めるなんて、もったいないですよ。せっかく良い結果が出そうなのに…」
高田:「ちょっと待って、もう一つ提案があるんだけど。」
貴仁:「提案?」
高田:「そうだ。実は、貴仁くんの持つ石について話があるんだ。」
純礼:「石の話?」
高田:「石を渡してくれるなら、再度プロジェクトが進むように方々にはたらきかけてみるよ。」
貴仁は怒りを感じつつも、冷静に答えた。
貴仁:「それはできません。石は父の遺した大切なものです。渡すわけにはいきません。」
高田:「そうか…。残念だけど、仕方ないね。」
貴仁:「ですから、石を差し出すことはできません。それでもプロジェクトを終了させるのですか?」
高田はため息をついて、答える。
高田:「ああ、それが決定事項だ。」
通話は終了する。
思った通りだ。
こうなることはわかっていた。
貴仁は、どうして高田に石のことが伝わったか考えるだろう。
高田重工業で純礼を見かけたことに思い至る。
そして、気づくだろう。すべてを教えたのが純礼だということに。
通話が終わると、インターホンが鳴る。警察だ。
これも、純礼の想像していた通りだった。
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