夢雑記2
柴犬美紅
第1話 死者が蘇る夢 ホラー?系
自分は仕事をしていたか、学生に戻っていたのかとにかく午前中に何かをしていた最中だった。
母から突然、電話が来た。
「ちょっと検査入院することになったから。」
どうも状況的に即日の入院のようだ。この夢の中では昨日母に会って出かけたばかりで、一見すれば病気があるとは思えなかったが、母の中で何か嫌な予感があったのかもしれないし、本人も詳しく語りたがらないで電話を切りたがっている様子だから、自分はその通りにした。
「わかった、何かあったら連絡ね。」
自分はそう言って電話を切る。これから仕事の自分はそうして仕事へと向かった。
その数時間後だった。家に帰った夜だ。知らない番号から電話を受けた。
『〇〇さん(自分の名前)ですか?お母様のことでお電話をさせていただきまして……。』
検査した結果母は重い病気を患っていることが判明して、治療のために入院治療が決まったと思われたが、夜に容態が急変して……。
『お母様が、亡くなりました。』
と看護師の方から報告された。
突然のことで頭が回らないが、はっきりわかったのは昨日まで元気だった母が、死んだと言う事実。自分は親戚に連絡し、とりあえず明日病院に集まり話をしようとなった。
ところが翌日、病院に行って自分の名前と電話のことを伝えたのだが、看護師が戸惑ったような態度で霊安室ではなく、病室へ我々を案内した。
すると、パジャマ姿の母がこっちを見て元気そうに手を振っていた。
何でも翌日、霊安室に行ったら母が不思議そうな顔で起き上がってたと言うことだ。
検査をすると治療するところはしないとならないのだが、心肺はしっかり蘇生して普通の人間のような状態になっている、とのことで普通の病室に戻したと言うことだ。
夢だから色々ツッコミどころ満載なのだが、今日は一旦家に帰って入院支度を整える予定をそのまま続行することにした。
親戚は母が生き返ったことに喜んで話しかけていたが、それに笑顔で応対する母を見ておかしくないのかと言いたくなる。しかし会話は弾んでいて口を挟む場所がない。
(母の顔、死人のように青白いままじゃないか。)
元々母は色白だったせいなんかで済ませられるレベルじゃない。
今、目の前にいる自分の母親の青白い顔は完全に死人の色だった。
自分は仕事があるからと手伝いを親戚に頼んだ。これは母から離れる嘘だ。自分はあの日かかってきた電話番号を見つけて再度電話をかけた。
「昨夜電話してきた方とお話ししたいのですが、〇〇さんと言う方で……。」
と聞くと、ちょうどその人は今出勤していて手が空いているからと、快く電話に出てくれた。
「昨夜お電話いただいた時、母は確かに……?」
「はい、仏様……でした。心肺停止も、急変の時の対応もしていたので……。」
私の質問に看護師さんは言いづらそうに、でもちゃんと答えてくれた、やはり母は死んだ。いや、本来ならば死んでいるはずなんだと確信した。
ここは普通の世界だ、人間が生き返るなんてことはありえないことを自分は知っている。
「一度死んだと診断された人間が生き返ることはありますか?」
「普通はあり得ません、ましてや、お母様の場合は容態が急変したら助かる確率も……。」
「ちなみに、母の死体は霊安室に?」
「いいえ、ありません。間違いなく一時帰宅された方はお母様で間違いありません。」
看護師さんに礼を言って、自分は電話を切った。死んでしまったら普通は蘇らないことがわかればいい、しかも母の容態急変は確実に生き返ることがない事象だった。
母親は確かに死んだと言った。
青白い肌を保ったまま、母らしく振る舞っているように見えるあれは、一体誰なんだ?
あれが母ではなくて、母の姿を乗っ取った誰かである確信は自分の中にあった。
母とは何度か死生観について語り合ったことがあった。彼女は死ぬことを恐れず受け入れると言っていた。数年前から変わっていないし何なら入院前に会った日もそのスタンスを崩さなかった人が、今更死にたくないなんて願うとは思えなかった。
その日の夜、自分は何故か病院の前にいた。自分の体は眠っているが夢遊病状態で病院前まで歩いてきたらしい。しかし服もきちんと着替えて、だ。
夢とはいえ凄いしっかりやってんなぁと思い、自分は病院に侵入を試みる。当然堂々真正面から入る気はなかったので裏口などから入れないものかと探し壁に触れていたら、視界だけが突然建物内へ入り込んで、ある一室を自分に映し出した。
「かわいそうに。」
母の病室が映っていた。しかし母はベッドにいて、青白い顔で目を閉じている。その姿は完全に死んでいる。
ベッドに腰掛けて、謎の女が母を眺めていた。形は人だが、明らかに『人』じゃない。
「私があなたの身体で楽しんであげる。」
女はそう言って、母の腕を無造作に掴む、人形みたいにぐたっとしたところから、自分の腕を重ね合わせようとした……その瞬間、謎の女と自分の目があって、まるで弾き飛ばされるように病院から遠ざけられて、私は目が覚めた。
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