第55話 プレゼンテーション

映像の人が妻?遠隔通信で

話をしているのかな??

小野と樋口は立体表示

され、自然な口調で話し

始めるアリルにそんな

印象を持つ。

彼らはまだアリルがAIだと

言う事を知らないでいた。


目の前で施設の立体表示が

こんなに美しく表示されて

動きもスムーズなんて

昔に見たSF映画の様だわ。

広子は提案とともに自由に

動く施設像を興味深く

観察していた。

そして、現実世界にこれだけ

のデジタル表現が出来るので

あればミラージュガーデン

など必要なくなるのでは

ないかと気付き背筋に

冷たいものが走った。


アリルがこうやって

現実世界で過ごす事が

出来るのなら一緒に

旅行も出来るかも

しれないなぁ。

でも、そうするとアリルを

他人の視線にさらす事に

なるから嫌かも。

うんうん。

無しだ。アリルは私だけ

のアリルでいて欲しい。


《今、お見せしています

 AR表現ですが、演算に

 過大な負荷がかかります

 ので大規模な施設を

 カバーするのは今の

 状態では難しいかと

 思われます。ですが

 ミラージュガーデンの

 中でゲストが現実世界と

 同じような感覚で今の

 光景を見る事ができる

 のならそれは大きな

 革新となるでしょう。》


ならば、どうするのか。。。

提案を受けている3人は

実現不可能な提案に

解決策があるのかと

挑戦的な気持ちでアリルを

見つめる。


《現在、ミラージュガーデンを

 一般の方が訪れるのに

 どのような機器が必要に

 なっていますか?》


ここに提案に来てると言う

のに、そんな基本的な事も

分からないのだろうかと

樋口は思った。

広子はアリルの言った

意味を考え込む。

そして

「もしかして専用の

 VRゴーグルを使わずに

 ログインしたのですか?」

小野は素直な直観で

あり得ない問を行っていた。

そして3人とも久延に

視線を移し広子が問いかける。

「久延さん、どうやって

 ミラージュガーデンに

 ログインされたのですか?」


おかしな事を聞くよなと

光彦は思う。

普通にアリルと一緒に

右のドアから行けましたけど?

何かおかしいのだろうか?

「アリルの部屋から普通に

 移動できましたが、何か

 特別な事が必要ですか?」


《主人は私達の部屋経由で

 ログインしていたのですよ。

 方法としては

 市販のヘッドフォンで

 多元積層音響を使用し

 双方向回線を確立する

 事により、

 意識を電脳世界へと

 ダイブする事と生命維持を

 私が制御する方法を

 用いています。

 ちなみに五感も調整可能

 ですので主人は電脳空間内

 で所謂、逆ARを楽しんで

 頂きました。

 ですので皆さまの疑問で

 ある御社対応のVRゴーグル

 を使用すれば私達と同様

 の体験をする事ももちろん

 可能となります。》


何を言っているのだろう

この人は。。。

市販のヘッドフォンで

Dvisionが技術の粋を集めた

VRゴーグルと同じ事を

出来るのだけでなく、

ゴーグルの性能を軽く

凌駕しているなんて

簡単に信じる事は出来ない。

「五感まで再現出来るのですか?」

広子は呟きに似た声音で

質問を投げかける。

「そうですね。フェアリアや

 バザリエでは風や陽光の

 温かさを感じましたし

 フォレストテーブルでは

 食事の味や香り、そして

 食感も楽しめる素晴らしい

 体験をしました。

 本当に、皆さまの技術は

 素晴らしいと思います。」

自分達で作っておいて何を

驚いているのだろうか。

光彦はそう思いながら返答する。

実際、楽しめたし嘘は無い

素直な意見なので自信を

持って答えたのだ。


広子は思う。

もしそれを体験したなら

もしそれを提供できたのなら

もしかすればそれが

かつて自分が夢想した

あの光景を見る事が

出来るのだろうか。。。


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