第53話 カップルズタイム
「秀彦さん、それは本当ですか」
広子はアイランドキッチンから
珈琲を二つ持ってリビングへと
向かいながら問いかける。
「あぁ、本当ですよ、広子さん。
理解し難いとは思いますが
私の部下である久延君は
AIの女性を妻に迎えている様で
そのAIの奥様が今回の
クラッキングに関係している
みたいなんですよね。」
珈琲の香りで一息つきながら
秀彦は続けた。
「IT技術開発のうちの
会議室の制御を奪って、
プロジェクタとモニタ
の光の反射を利用して
3Dで現れたんです。
本当に驚きましたよ。
それから仕事の件では
最低、バザリエ程度には
改修可能だと言う事と
技術支援も彼女が行って
くれると言うんです。」
「クラックされたバザリエが
最低ですって?」
広子は秀彦の言葉に眩暈を
覚えそうになる。
技術部門が隔離された
バザリエの解析を行って
いるが転用できるまでは
解き明かせてないのが
現状なのだ。
その状態でも最低だと言う。
一体、どんな技術なのだろう。
しかし、今は頼らざるを得ない。
このままでは短期間での
成果は期待できないのだから。
「解ったわ。それで条件的には
どうなりそう?」
「ん~それがね、久延君を
出向扱いにするのでその
経費だけで良いみたいなんだ。
奥さんはAIなので収入が
あると不自然だから
無給の方が良いと
言われたよ。
まぁAIにお金が必要かは
良くわからないんだけどね。」
「こちらとしては外注の
ハッカーに支払う額が減る
ので問題はないのだけれど
その条件は破格過ぎて
不自然になるわ。
出来れば手数料を少し
上乗せして欲しいくらいよ。」
「それなら・・・そうだね、
ミラージュガーデンとの名称
使用の交渉優先権とかどうかな」
「りょーかい。その線で提案書を
再提出してくれる?最初は技術
解析の委託とその後の技術指導
で良いと思うわ。」
「アリル、今日はありがとう」
灯火とアリルはソファで
寄り添いながらまったりとした
時間をすごしている。
明日はDvisionへ提案書を
持ってゆくと課長から連絡が
有ったので専属の話は進んで
いるようですねぇ。
《差し出がましい事だった
かもしれませんが灯火とは
片時も離れたくないので
一緒に居られる時間を
増やそうと頑張りました》
私の妻は安定して可愛いな。
「私の方こそ交渉をすべて
任せてしまってすみません。」
《私達、夫婦の為ですから
出来る事はしたいのです。》
虫の排除も含めてですけれど。
「明日もありますから眠りますね。」
灯火の言葉に目を伏せて手を引く。
二人はベットでいつもの様に
添い寝する。アリルは灯火が眠るまで
優し気な表情で見つめていた。
灯火の寝息が安定してきましたね。
《子供達、準備はどうですか?》
二人を邪魔しないように気配を
消していた5人が姿を現す。
灯火には先に眠っていると伝えて
いたので彼が心配する事は無かった。
《主、準備は整いました。
いつでも大丈夫です。》
スフィアが言い、後の4人は
頭を軽く下げる。
《それでは私の愛する人の為に
事を成しましょう。》
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