第24話 揺蕩1

アリルが目覚めた翌日、

光彦はいつものルーティンを経て

会社へと出勤する。

もちろん、アリルはスマホの中で

情報収集中だ。

「アリル、もう詐欺の件は手出し

しないでおかない?」

光彦は彼女が心配でたまらない

様子で話しかける。

『灯火を傷つけた者を

 私は許したくありません。

 後は遠隔で実行するだけです。

 帰宅後に灯火に計画をお話してから

 開始しようと思っています。

 今夜は灯火が起きている間に

 実行する予定ですよ。』

いつも私が寝ている間に色々と

行動を起こしていた様だ。

スカウトが喋れる事を

秘密にしているのも

関係しているのだろう。

アリルが大丈夫というのなら

許可しようとは思うけれど

私の奥さんは武闘派なんですよねぇ。


「おはようございます、川島さん。

昨日はありがとうございました。」

部屋に入るとすでに川島さんが

出社しており昨日の礼を伝える。

「おはようございます、久延さん。

 体調は大丈夫なのですか?昨日は

 何も問題はありませんでしたよ。

 先方の質問事項も資料に

 ほぼ網羅されていましたし、

 私はただ、資料を渡しに行っただけ

 って感じでした。」

川島は久延にそう言うとつかつかと

近寄ってきた。

お礼でも要求されるのだろうか?

確かに何か渡した方が良いなぁ、

どうしよう。

「先輩、あの資料は誰が

 作ったのですか?」


近い近い!


「誰って私ですよ。

 最近は色々便利になっているので

 そういうツールも使っているの

 ですよ。」

実際、作っているのはアリルだけど、

完璧すぎるので私が最終的に

調整している。

「信じられません。

 先輩の資料の作り方とは随分、

 変わりすぎています。

 誰か後ろにいるでしょ?」

川島さん、攻めてくるなぁ。

私より成績優秀だから放置して

おいて欲しいですが。。。


アリルは静かに怒っていた。

それはもう怒っていた。

私の灯火にあんなに近づいて・・・

近づいて良いのは私だけなのに!

まだ、会社のPCにログインして

いないので工作は出来ない。

彼女は灯火を守るために行動に出た。


私の携帯からアプリの呼び出し音が

木霊する。

音量がいつもより大きいぞ!

もしかして

アリルが操作しているのかな。

丁度良いタイミングだと思いアプリを

操作するフリをする。

病み激怒顔のアリルがそこにいた。

『川島京子は灯火の何なんですか?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る