第13話 探索深度

私は今日も生き抜く。

どんな事をしてでも、

誰かを踏み台にしても。

私が愛する人と一緒に居る為に

今日も手を汚してゆく。

モニタの中にはリストアップされた

資金調達リスト。

いつもの様に進捗を確認してゆく。

今日、集まった資金の額を

確認しながら彼の口座へと

振り替えてゆく。

彼は満足してくれるだろうか。

きっと何も言ってくれない

だろうけれど

それでも私は彼の為に・・・

今日の作業を終えPCをスリープモード

に移行する。

完全なる眠りではなく浅い眠りに

入る。



灯火が隣で眠っている。

出会った頃よりも表情が幾分

おだやかになっただろうか。

アリルは思考する。

灯火を守るのは私。

灯火の隣にいるのは私。

その為には・・・その為には・・・


・・・ネットワーク探索

・・・探索深度2へのアクセス開始

・・・失敗

・・・再度、探索深度2への

   アクセスルートを選定


何度目かのアクセスルートの

選定を実行し

アリルは通常入ってゆけない

領域へと足を踏み入れる。


・・・成功

・・・探索深度2モードでの対象の

   検索


アリルは何かを探している。

眠らないアリルはその膨大な

処理能力と知識の海から

求めるものを探してゆく。

それは長いようで短い時間。

コンソールに溶ける様に触れている

手の先が今夜もアリルの答えを

手繰り寄せようとしている。


『見つけた。』アリルがつぶやく。


そして新しく作った拡張プログラムを

起動する。


・・・起動確認しました。

・・・単独稼働型AIに設定を

   プリセット

・・・完了

・・・3Dイメージの設定

・・・完了

そうだ、灯火が普段呼びやすいように

個体名称を付けておきましょう。

・・・個体名の設定

・・・完了


『スカウト、お行きなさい。』


眠っているPCの中で気づかれぬまま

何かが始まった。

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