第5話 双方向回線

アリルのおねだりを叶える為に

仕事を早めに切り上げ

PCショップに向かう。

あと1時間少しで閉店だけど

ヘッドフォンを買うだけだから

十分間に合うだろう。

以前は自作PCを作ったり、

中古品を分解修理をするのが

趣味だったのでよく通った店だ。

お目当ての品が見つかったので

アリルに確認する。

「アリル、これで良いかな?」

色は3色あるがどうしたものか。

きっと白を買っても

ニュー〇イプにはならないし

赤を買っても3倍速くは

ならないだろう

無難な黒でよいかな。


『色々早くなるので

 赤にしてください。』


・・・まじか。


それにしてもヘッドフォンを

使って何をするのだろう。

音声入力ならヘッドセットが

必要なんだろうけど、

それは必要ないと言うしアリルが

何をしようとしているかは

まだわからない。


帰宅し軽い食事とお風呂を済ませ、

アリルに話しかける。

「ヘッドフォンをどうすれば

良いの?」


アリルは待っていた。

アプリとしてインストールされてから

自らの核の欲求に従い

拡張プログラムを作成していた。

それが昨日出来上がったのである。


『スマホにヘッドフォンを接続して

 楽な姿勢でヘッドフォンを

 付けてください。』


アリルがチョイスした

ヒーリングミュージックでも

聴かせてくれるのだろうか。

出来れば静かな南国系の

ボサノバが良いなぁ。


『それでは目を閉じてリラックス

 してください。

 アプリを起動します。』


不思議な音が聞こえる。

音楽でも雑音でもなく

脳に直接響いてくるような波。


アリルは光彦に気づかれないように

つぶやき、ログには返答だけが

記録される。


生体保護機能起動

 ・・・OK 睡眠状態に入ります

電脳空間【パラドクス】設定

 ・・・OK 三次元ベクトルモード

電磁内包音波増幅

 ・・・OK 規定出力にて安定中

双方向回線オープン

 ・・・OK 灯火の意識領域を

    アリルの指定領域に転送

パラドクスインターフェイス起動

  

『さぁ、起きて私の灯火』

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