作品
僕という作品があって、色んな色が載せられていて、その色は塗りつくされているせいで、汚らしく見える。
それでも矜持のようなものがあって、色を選んでのせていく今を嫌に思って、画用紙に傷をつけて引き裂きたくなる。自壊欲が降り積もる。それもまた色となって僕を濁していく。
次第に色が重なりすぎて諦めの黒に収束していく。様々な人生があったとして、人の生涯がどれも妥協で出来ているなら、僕らは同じような黒を判別して名前を与えているのだろう。
僕は想像する。黒の奥の透明な色を。もう見えなくなった断片達を。貴方は何色で出来ていたのか、僕はどんな色を塗られてきたのか。もう皆目見当のつかない疑問達は、飛沫を上げる感情の波の泡に宿り、出来たかと思えばパチパチと音を立てて破裂する。
衝動性が歪を作っている。その歪の内に意識があって、巻き込まれながら、生まれ変わり、忘れる事で生きている現状が咲いている。きっとそれだけが続いていく。
日々に押されて、自我の開く時間が減少していく。それならばそれでも良いと思えるようになっていった。諦めは無関心へと変わっていく。多分、年を取るということは、そうやって感受性を失うことなのだろう。空を眺むと雲が泳いでいる。あとどれくらい、と思ってしまった。その瞬間わかった。感受性を失ったのではなく、ベクトルが移ろいだのだと。
そして、終わりの日は来た。作品を振り返る。黒が降り積りすぎている。純粋な黒へと近づいてきた事を知っていた。勿論、鮮烈な闇には程遠いけれど。色を重ねてきた達成感と、疲労感と徒労感と、まだ重ねたい欲が入り混じる。その欲と思い出が更に混じり合って、捻れていく。その瞬間、また、僕は自分が作品である事を悟った。
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