第5話 分岐点
人間というものは出会い、そして別れが必ず来る。それに飽きが来る。
飽きって人前でいうとその人はダメ人間扱いされる。
だけど人間ってそんなもんだ。
一つの事に夢中に取り組んでいるように見えても、それを人前に見せないだけで、心の中はまるで違う。
じゃあそれを隠すように生きて、一生を終えるとき幸せだったと思えるのだろうか。
だからと言って人に迷惑をかけてまで自分のしたいことを貫き通すのはどうかと思う。
法律なんてものがなかったらこの世界はグチャグチャになり、まとまることはないだろう。
難しいものだ。
その最低限のルールに従いながら人間は生きているが、本当に不思議なことがたくさん起きる。
飽きがきたなと思う頃には、新たな風がきて大空を飛ぶ。
その新たな風に乗っていると、いつしかその風は急になくなり、その時に得た羽さえもボロボロになって、地へと落ちていく。これが地ならまだいいだろう。初めいた場所に戻っただけなんだから。
それよりもさらに下にいくと、地まで戻ってくるのは大変だ。
それが予めわかっているからほとんどの人間は新たな風に乗らない。
だけど、中にはその風に乗り、羽もさらに強化し、一人ではなく自分にとっての大切な人とさらに上の世界に飛んでいった人もいる。
周りからの目も気にせず、自分たちだけで飛んだんだ。しかもその人たちは、地に戻って来てない。まださらに上の世界があるのか?
上の世界ってどんなんなんだろう。皆楽しそうにしていると聞くがほとんどの地にいる皆は行かない。地よりも下に落ちる方がほとんどだからだ。
だけど、その落ちないようにする為にどう二人で協力するかが大事になってくるし、そのパートナーなんてそんなすぐに見つかるものではないだろう。飽きだって来る。別れも来る。
皆が幸せな道、上の世界に行くには何度も試行錯誤していかないといけない。その過程が大事なのに、よくわからないルールに縛られ、前に進むことを妬む人もいるし、「ルールだから」とねじ伏せ、根拠のない安定とした道を行かせようとする。何度説得しても。だから人は飽き、新たな道をこっそり進もうとする。
誰にも言わなければ否定もされないし、肯定もされない。
果たしてそれがいいことなのか、ルールでは駄目なのだろう。よくわからない人が決めたルール。
俺は誰とその道を行く?
私は誰とその道をゆく?
その時にはこの人に決めたって一生を捧げるけど、実際に歩めている人は何人いるだろう。
当然毎日がハッピーなわけではない。辛いことがほとんどだ。
ただ辛いことにも限度がある。
お互いすれ違った時、どう相手を受け入れようとできるか。喧嘩をしてもその後どれだけ許せることができるか。
何かしてくれたら褒めてあげないといけない。でもずっと一緒にいるとそれが当たり前となってしまう。
感謝の気持ちが薄れてしまう。
でもなぜ、この世界はその二人を縛ろうとする? 逆にいつ離れるか分からない。
今日は一緒にいれても明日は一緒にいれるかわからない。
そっちの方がその人の事を毎日大事にしよう、大事にしようって思うんじゃないか?
他の人なんかにかまってる余裕なんてない。だって一度はすごく好きになった人なのに、明日には離れてしまうかもなんだから。
だから好きな人の全てを見てはいけない。知らなくていいところは奥ゆかしくしとけばいい。全部知ってしまったら、いつかは興味がなくなってしまう。新しい空間にいっても同じことだ。
だからこそ自分にとって大切な人ができたのならば、全力でその人の事を愛すべきなんじゃないかと思う。
後悔するぞ。向き合わないと。飽きたら最熱することなんてないんだから。
こっそりでもいいじゃないか。自分の人生、楽しく生きよう。楽しく生きようよ。
あの時は全力だったなって、最期の目を閉じる前に必ず思い出すだろう。
俺は彼女と身体を重ねあった日からしばらく何も力が入らずこんなことばかり考えていた。
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