第2話 二人の距離

 ある時、小春と仕事の休憩中に喫煙所でばったりあった。


俺は、正社員なので休憩中だったが、彼女は契約社員で8時から12時までの4時間勤務で帰るところだった。


先ほどまで一緒に仕事をしていたから自然と一度やり切った仕事に満足し二人でたばこを吸い始める。


 「今日は昼からも忙しいんですか?」

いつもの優しい笑顔で彼女は言う。


 「ちょっと備品が足らなくって、今からほかの事業所にもらいに行かないといけないんだよな」

と口にした。


本当そう。

なんで、休憩時間に取りに行かないといけないんだ。

まぁあの時は上司を前にして断れる雰囲気じゃなかったから、俺行きます。っていっちゃったけどさ。上司もその言葉を俺が言うの絶対期待してたよな。

とあの時断れなかった自分に対して苛立ちが湧いてきて、いつもよりタバコを思いっきり吸った。


 「あの。よかったら私も行こうかな」

その彼女の言葉に俺はびっくりした。


 海「まじで?行ったところで何もないよ」


 小春「大丈夫です。家帰ってもすぐ用事しないといけないわけでもないし、それに今日天気いいしちょっとしたドライブってことで!」

俺は嬉しかった。

いつもは彼女は同じ同僚の人といつも一緒に帰っているから、俺が休憩中にタバコを吸っていても、お疲れ様です。と社会的な会釈をしてそそくさと帰るだけだったから、今日はその同僚もいなかったからラッキーな展開だった。


実は二人でゆっくりできるチャンスを喫煙所で前々から狙っていたのも事実である。

先ほど上司になんなく釣られてしまった苛立ちは一気に吹っ飛び、いつも一緒に帰っている彼女の同僚が休みだった事と、断れず俺行きます。と言わす空気にしてくれた上司に感謝をした。


まあ元々上司はあまり好きではなかったが。


この神様からの貴重なプレゼントを手にした俺は、吸い始めた3本目のタバコをすぐに捨て彼女を俺の車に乗っけ備品を取りに行ったのだ。


 その後車中でも会話は盛り上がり、あまり聞かない洋楽をかけ粋がっていた自分。


少し強がってた自分がいたのかもしれない。


それに今日は本当に天気がよく気温も23度と風にあたるとすごく気持ちよくて俺は窓を開けた。


すると彼女の方からすごく甘く、薔薇のような香りが風とともに吹いてきた。

女の人ってどうしてこんないい匂いがするんだろう。シャンプーの匂いなんかな。

ふいによくゆう女の人からシャンプーの匂いがするって言う人は童貞であるって事を思い出した。


わかってると思うが、俺は童貞ではない。

そりゃあ初めてしたのも大学の時で当時の彼女だった。まあ付き合って三年目でやっと最後までできたのは隠しておこう。

意外と小心者である。


...。


そんな事は置いといて、こりゃいくら童貞じゃなくても、シャンプーの匂いって思ってしまうだろう。

この魅惑的な香り。

女の人って本当にせこいよな。


その匂いに浸っていると、

 あっ。逆に俺の匂い彼女にしてるんかな。

とふと焦ったように彼女に気づかれないようにシャツの一番上のボタンの隙間から匂いを嗅ぐ。

今日体力仕事が多かったから、汗たくさんかいちゃったから、速乾肌着にしてくればよかったと後悔することになる俺。


そう考えると余計脂汗がでてくる。

俺はおどおどしていた。


すると...。


 「ねえ。海さん」

汗で焦っているとふと彼女の少し大きな声に気づく。


 「おう。どうした?」

何事もなかったかのように運転を続ける俺。


 「午前中仕事大変だったけど無事に終わってよかったね。お疲れ様」

その言葉を聞き一気に力が抜けた。


はぁ~。匂いは大丈夫だ~。

そう思いより腰を深く下す俺。

その瞬間、気づくと俺の左腕と彼女の右腕がアームレストの上に置いてて触れていたのだ。


一瞬焦り、あっと思ったが彼女は腕の事にたいしては触れることもなく会話を続けた。


この感じ...。


30代ではなかなか味わえることの出来ない、思春期の頃を思い出す青春を俺たちは楽しんでいたのかもしれない。

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