第141話 地球?

僕はエリの言われるまま多次元空間から出ると、そこは懐かしい感じがするビル群だった。


しかし、こんな街は知らないなとも感じた。


ずっと東京で住んでいたから、東京以外の大都市なのかもしれない。


僕がキョロキョロとしていると、エリはそれに気が付いたのか補足説明してくれる。


「ここはお兄ちゃんが住んでいた時代から10年が過ぎた東京だよ」


「10年後の東京だから身に覚えが……って、なんか武装している人がいっぱいいる……」


ファンタジー世界の鎧みたいな武装ではないが、全身ダイバースーツみたいなのに金属が付けられた服に、剣や槍、斧や銃を身に着けた人達が普通に歩いていた。


僕の記憶では……剣なんて持っていたら捕まりそうな気がするんだけど……。


「ん? 10年前でも武器を持っていたと思うけど……記憶が混濁してるとかなのかな?」


「そうだっけ? あの人達は何してる人なの?」


違和感が凄いが、僕の記憶がおかしいのかもしれない。


「あれはダンジョン攻略とかするハンターだよ。私とかもハンターなんだよ」


「異世界の冒険者みたいなものか」


「多分そうね。まずはお姉ちゃんに会わないとね」


僕達は僕の記憶を取り戻す為にエリの姉である玲奈に会いに行く事にした。




東京を歩いていたら、ある事に気がついたのだが、僕の容姿は20歳位まで成長していたのだ。


あと、黒髪に黒い瞳で、瞳には中ニ病的な赤い魔法陣みたいなものが浮かび上がっていた。


これはなんなんだ?


「あ、そう言えば、お兄ちゃんの名前は麻藤深夜だからね? 異世界ではレイだったかもしれないけど、地球では戸籍がないと何も出来ないから気を付けてね」


「了解。麻藤深夜か……なんだか違和感はないな」


ちなみに妹は麻藤エリで、姉の方は麻藤玲奈というらしい。


「それにしてもお兄ちゃんが若返ってるのには違和感あるよ。お兄ちゃんなのに、年下みたいな」


「僕としては一気に成長した感じなんだけどね。5歳から20歳に」


「なるほどね……よく見ると、前のお兄ちゃんよりだいぶイケメンかも。異世界は美男美女ばかりなの?」


「いや、そんな事はないけど、両親が美男美女だったからかも……」


僕はエリに両親の話をする。


「そうなんだ。いいなぁ、お兄ちゃんにはそんな完璧な両親がいて。ちなみに、この世界の私達の両親は死んでいて、父親はガチでクズだったよ、母親も母親っぽくはないかな……」


「そうなんだ……」


「あ、あと、これも渡しておくね」


エリは思い出したかのように銀色の金属腕輪を渡してくる。


「これは?」


「システムリングって言って、身分証明書みたいなものかな。お金も入ってるから、自由に使って良いよ」


「身分証明書? それって役所みたいなところで発行するんじゃないの?」


「本来はそんな感じだけど、それはお姉ちゃんが作った偽装リングだから、問題は無いよ」


「え、え? 偽装リング? 問題しかないんじゃない?」


「大丈夫、大丈夫。麻藤深夜は実在するから、バレる事は無いから。それよりも、私達のビルに着いたよ」


「私達のビル?」


目の前には50階以上はありそうな高層ビルが立っていた。


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