第97話 忘れ去られた地下①

僕達が真っ暗な瓦礫の入り口に入ると、視界は暗転して、一瞬にして別空間の様な場所に居た。


「これはビルの廊下?」


ビルの廃墟の中に入ったからなのか、前世で馴染みのあるオフィスビルの廊下と言ったコンクリートみたいな物で出来た壁に天井には蛍光灯が並び、床はグレーのカーペットがひかれていた。


そして廃墟の中だからか、廊下もそとほどではないが、ボロボロになっていた。


「ビルってなんにゃ?」


「レイはたまに変な言葉を使うよな」


エレナは不思議そうに小首を傾げながら聞き、ブラットは僕がたまに前世の知識を言う事に慣れている感じだ。


「ビルってのは、ここに入る前にあった様な高い建物の事だよ」


「レイくんは物知りですよね。やっぱり両親が冒険者だからですか?」


「本当にレイは凄いよな!」


ケイトさんとマキさんは冒険者に憧れているからか、キラキラした目で僕を見てくる。


「うん……まあ、そんな感じかな」


流石は前世の記憶がありますとは誰にも言えないしな。


それにしても、ダンジョンって何なんだ?


明らかに前世の記憶にあるビル群だけど、明らかに崩壊した世界に、突然建物内に移動してしまう真っ暗な入り口。


前世の世界に飛んだのかと思えば、前世ではあり得ないファンタジー要素もあるし……それにしっかりとモンスターはいるからな。


全てが謎過ぎて、よく分からない。


「とりあえず、廊下は1本道だけど……」


「扉はいっぱいありますね……」


奥が見えない位に長い廊下に、10m位の等間隔に左右にある金属製のドア。


「うん、ドアを無視して廊下を進むか……部屋を調べていくか……」


ドアの向こう側が廊下という可能性もあるが、たぶん部屋があるだろうと予想するが、部屋に入ると罠が発動とか、モンスターが待ち伏せしているパターンはありそうだ。


その代わりにファンタジーダンジョン定番の部屋には宝箱があるパターンも捨て切れない。


しかし、パット見た感じだけでもドアは左右合わせれば20枚以上はある。


こんな数を全て探索したら膨大な時間がかかりそうなんだよな……。


ちなみに黒いモヤは廊下を真っ直ぐに流れているから、ドアは無視しても良さそうな気はするが……でも、凄くドアが気になる。


「レイは真っ直ぐ進んだ方が良いと思ってるにゃよね? だけど、ドアが気になってるみたいにゃね」


「え? よく分かったね」


エレナにずばり内心を悟られビックリする。


エレナに読心術でもあったか?


「レイは顔に出るからわかり易いにゃよ」


「え、そうだったの?」


顔に出やすいとか言われると、何だが恥ずかしい。


「そうか? 俺はレイの顔を見ても何を考えてるか分からないぜ」


「わ、私も分からないです……エレナさんは凄いですね」


「流石は幼馴染……負けてられないわ」


どうやらエレナが敏感なだけなのか?


よく分からないな。


「それよりもドアを調べるか、調べずに無視するか……」


「たぶんにゃけど、私の罠探知とか使えば扉に触れれば罠があるか無いかと、奥にモンスターが居るか位は分かると思うにゃよ」


「おお、流石はエレナ。そんな事も罠探知で出来るんだ……なら、調べていくかな。それで、罠だった場合は無視。モンスターは倒そう」


「「はい!」」

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