ジョブホッパーの異世界創世譚

フェアリーP

第1話 転生

 自分は目が覚めると、目の前に見知らぬ天井が見えていた……。


 某アニメネタで言うのなら笑えるが、実際に目が覚めて知らない天井が見えたらとても怖い。


 しかし……懐かしさも感じるのは何故だろう?


 それにしても、此処はどこなんだろう?


 確か寝る前の記憶では……都内に拠点をおく建設の内装工事全般を請負う会社に勤めていたはずだ。


 まあ、勤めていたと言っても自分は入社してまだ半年位しか経っていないから半人前みたいなものだった。

 しかし、半年で1人前にしてしまう程の仕事量を毎日していた。そして実際には元々似たような仕事をしていたので1ヶ月ほどである程度の責任ある仕事をさせられていた。


 昨日も確か都内に建設中の中層マンションで内装工事をやっていて、働いていた場所はいつもの様にマンションの内装仕上げで、内覧会までの期間が3日しかないという修羅場モードに突入していた現場だった。

 その為、会社の優しさ?により現場近くにアパートが用意されており、その部屋で数時間の仮眠していたはずだった。


 しかし、今自分の目の前には見える天井は、明らかに仮眠していた部屋とは違う場所だった。


 自分は視線を動かし周りを見ると、高い木の柵が付けられたベットに寝かされていた。 


 ……なんでベットに柵があるんだ?


 まるで子供がベッドから落ちないようにする為みたいな柵でかなりの高さだ。寝ている部屋の全体像がよく分からないが、多分6畳間位の大きさの部屋だと思う。


 天井や壁に壁紙が貼っていないし、ログハウスにしたって内壁の木材にコーティングがされているはず。


 しかし木は新しい感じがするので新築かもしれない……。


 状況かまったく分からないから、とりあえずは起きて自分の置かれている状況確認をしなくてはダメだな。


「あう?」

(っ!? あれ?)


 自分は起き上がろとしたのだが、身体がほとんど自由に動かないし、声までしっかり発音が出来なかった。


 舌も動かしにくいし、って歯がない!?


 しかも自分の手を見てみると、赤ん坊のように小さかった。


「あう、あ~。」

(……これって、あれだよな?)


 もしかしてと思い、部屋の周りをよく見ると天井には、今までの人生で見た事が無いタイプの照明?があった。

 照明?の中央部には色の付いた石が付いており、石と金属板が配線で繋がっており、金属板が光を放っていた。


 何で光ってるのかよく分からなかった。


 明らかに地球には無い技術のような気がする。


 最近、仕事の無い日に良く読んでいるライトノベルなどで登場する異世界転生だったりするのではないだろうか?


 ……って、そんなことある訳が無いか。 まだ寝ている間に拉致られたって方が信じられる。


 しかし、自分の小さい手を見ながら考える。


 手は赤ん坊の様に小さいし、身体は自由に動けない……。


 まず異世界転生は無くても、転生はしている気がする。


 しかも赤ん坊になってるみたいだけど、視界は良好だから産まれてから数ヶ月は経ってるかもしれないな。


 転生している確信をしたと同時に、前世での死因や死亡場所が気になっていた。


 転生したのなら確実に、前世では死んでるって事になるよな……。 そしたらアパートで過労かなにかで死んだのかな? アパートなら現場には直接迷惑がかからないからセーフかな?


 もし作業中に現場内で過労死とかしたら凄い迷惑だよな。 現場事故ゼロ運動してたのに最後に過労死が出ていたら、一緒に頑張ってた同僚達に悪いなぁと考えていたのだが。


 あれ……? 現場の人達の顔とか名前が思い出せない。 そう言えば自分の名前も思い出せないぞ?


 何の仕事をしていたかは覚えてるのに職場や家族、友人等の人物関係になると記憶がスッポリ抜けてる感じがする。


 記憶喪失になるとこんな感じなのかな?


 激しい物忘れをしているみたいで気持ち悪いな……。


 ガチャ


 しばらく考え事をしていると部屋のドアが開き、1人の女性が部屋に入って来た。



 まず、その女性の容姿を見てもの凄くビックリした。 何故なら髪の色が凄かったからだ。


 その髪色はコスプレイヤーが、アニメキャラに似せてかぶるカツラの様な、鮮やかで綺麗な青色だった。


 そして、顔の作りも日本人では無かった、分かりやすく言えば外国人のモデルみたいな彫りの深い顔だった。しかし、不思議と鮮やかな青色の髪と顔が凄く馴染んでいた。しかもスタイルも良く、背も高い気がする。


 こんなコスプレイヤーがいたら、自分はファンになっているに違いない。


 あと、服装はなんと表現して良いのか分からないが、日本ではまず着てる人はいない様な服だった。 白くて綺麗なワンピースの様だが、少しキラキラしていたのだ。 光沢のある素材という訳ではなく、周りがキラキラしている感じだ。


「あら、レイは起きていたのね。じゃあ、今のうちに……」


 その美人女性は、聞いた事の無い言葉で自分に話しかけてきた筈なのに……自分はこの美人女性の言葉がはっきりと理解出来た。


 日本語でも英語でもなく、何語か知らないのに馴染みの日本語以上に違和感無く聴き取れた。



 そして突然、女性からの授乳タイムが始まった。


 この女性が母親かもしれないなと考えながら、特に興奮することなく飲み始めるのだが、何故か飲んだ時に違和感を感じる。


 なんだ? ミルク以外の何かが体内に……ああ、懐かしく感じるこのエネルギーは魔力……ん?


 魔力ってなんだ?


 自分はミルク内にある違和感を、ファンタジーでしかあるはずのない魔力だと無意識的に感じていた。


 そう、体内に入ってくるものが魔力だと思うと何故か納得してしまう。


 胃に入っていくミルクとは別に、身体全体へ何かが巡っていくものを感じ始めていた。


 例えるなら血管に流れる万能感みたいなのがあるのを感じた。


 そんな感じで魔力を体感しながら食事は終了した。


 そして背中を叩かれる。


「ゲフッ」


 前世では小さい頃から食べるのが大好きで、大人になってからはコンビニの新作スイーツやニュースで特集したレストランや食べ放題に行ったりしていた。


 料理を作れるのにも自信があったので、外で味を覚えては自宅で再現しようと料理していて、昔から暴飲暴食気味だったのでミルクでは量も質も物足りなかった。


 成長したら好きな料理を作りたいな……。


 調味料とか食材がしっかりあれば良いな~


 後は授乳の時に感じた、身体の中を流れていった万能感はなんだろう?


 ここが異世界で、魔力とかあるファンタジー世界だと思うと、中二病的な事を考えながらニヤニヤしていたら、女性は手を自分に近付けたと思ったら突然光りを放っていた。


 そして、その光は自分の身体を包むように輝いた……。


 輝きはすぐに消えるが、身体の表面をさっき感じた魔力がモゾモゾしてる感じで、くすぐったい様な気持ち悪い様な、何ともいえない感じになるのだった。


 そして、この光を見て自分は本当に異世界転生したんだなと思った……。


 元オタクとしては魔法があるかもしれないと思ったら嬉しくなってきた。


 やはり、テンプレとしては子供の頃から魔力とか鍛えると魔力が増大して魔法無双とか出来るのかな?とか、さっき感じた魔力を自在に操れるようにするんだろうか?とかそんな事を考いた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る