第3話 外の様子を確認しに行こう

 家の周囲の状態が解らないことには、家の中に引きこもる事になってしまう。

 現状来訪者等が訪れた時にどんな感じに対応すれば良いのか想像も付かない。

 一応、周囲の状況を確認する事にしたのだ。


「お兄ちゃん家の外、大丈夫かな?」

 サクラは心配そうに俺の方を見つめている。

「大丈夫、サクラ、本当に家の周りを見てくるだけだし、危ないと思ったらすぐに家の中に逃げてくるよ」

「うん、わかった、玄関の側で待っているから危ないと思ったらすぐに戻ってきてね」


 朝起きて外の様子を見た時は普通に出てしまったが、母屋との光の空間を体験した今では確実に日本では無いし、たぶん地球でもないこの場所が恐ろしく感じるのだ。


 玄関を解錠し恐る恐るゆっくりと扉を開ける。


 鬱蒼とした森の中で太陽の光が少しだけ差し込んでいる庭。

 小さな庭には特に変化は無い。

 駐車場には俺の車が止まっていて、住宅の外構部…エクステリアから先は森が広がり、地球側では舗装道路だった場所には未舗装の道が繋がっていた。


 家の敷地内に変化や変な物が無い事を確認すると外に出る。

 サクラに扉を施錠させ敷地内の調査の開始だ。


 花や庭木はそのままの状態で、本当にエクステリア部分から内側が切り取られて敷地ごと別の世界に飛ばされたような感じである。


 新築された母屋との接続部分は綺麗に分断され黒い空間で塞がっていた。

 母屋があったと思われる部分は黒い空間が広がり手で触っても何も起こらず、家の中の扉と同じような状況になっている。


 二階へ昇って黒い部分向こう側を確認する必要がありそうだが、母屋のあった場所は全て黒い壁に覆われていて何もする事は出来ない。

 エクステリア部分がコの字型に残っており、俺の車とサクラの自転車が残っているだけ。

 地球なら屋根にスズメくらいは止まっていそうだが、時々飛んでる鳥の姿を見ることが出来ても家や屋根に止まる事は無かった。


 ただ妙に感じたのは外に出ると何だか体が軽くなった感じがする事だ。

 サクラの言っているラノベの異世界転移って転移者は特殊な能力を持っていたりする物らしいからもしかしたら俺にもそんな能力が付与されているのかとか、馬鹿な期待をしてしまう。


 こんなことを考えているとサクラがドアを開けて叫んでいた

「お兄ちゃん!大変!窓の外に変なのが居るよ!!!!」

「どうした!」

「早く家の中に逃げて!」


 危機を感じ家の中に逃げ込むと、サクラが窓の外に変なのが居ると指を指す


 緑色をした凶悪な顔つきの小さい人間?

 いや!あれはゴブリン!?

 ファンタジー物をほとんど知らない俺でもゲームはするので、ゲーム内知識でしかないが。



 小柄なゴブリンを引き連れ巨体でマッチョな奴が中心となり、この家の様子を伺っていた。


 俺達は、奴等に気が付かれないように窓から奴等の様子を伺っていたが、小柄なゴブリンが石斧を振り上げてガラス窓を目がけて投げつけてきたのだ。


 石斧からかばうようにサクラの身を守る俺。

 次の瞬間、外からカキーンと音が響き、窓に石斧が当たった様子は無かった。


 次に窓の外を見たときは数十体のゴブリンがエクステリアによじ登ろうと群がっている所だったのだ。


 ただ、様子がおかしい。

 エクステリアの金網部分を越えようとするとはじき返されるようでこちらに入ってこられる感じがしない。


 状況に進展が無い事で巨体マッチョのゴブリンが丸太のような棍棒を振り上げエクステリアを破壊しようとしたのだが、はやりカキーンと音がして弾きかえされてしまったのだ。


 この様子を見てサクラは呟く

「結界なのかな?」


 反対側は真っ黒な壁で覆われていてコの字状になっている家の敷地、何かしらの力が作用していても不思議ではない。


 とりあえず現状、ここにいれば安全のようなので飽きて去ってくれるのを待つことにしたのだった。


 しかし問題がおきた。

 2時間ほど経過したのだが、まだゴブリン達は外にいる。

 外でギャーギャー騒ぎならエクステリア部分を叩いているのでウルサイ。

 窓の外を見ると奴等は数を増やし、巨体マッチョのゴブリンの数も増えていた


「お兄ちゃん、あいつらウルサイよ!全然諦めてくれないよ!」

「野良犬、野良猫と違うからなぁ…」

 野良犬、野良猫なら石でも投げてやれば驚いて逃げる。

 別に当てなくてもいい。

 警告するだけで賢い奴等は逃げてくれるのだが…


 ゴブリン達は庭に入れない事が解ったので、俺は玄関を開けて外に出ると小さな庭石を拾ってゴブリン目がけて投げつけた。


 シュン!と音を立てて飛んで行く小石。


 そのままエクステリア上部をすり抜け、運良くゴブリンの頭に命中する。

「こっちから攻撃は通るんだ」

 そんなことを考えていたら、石が命中したゴブリンは柵部分からボテッと落下しそのまま動かなくなった。


「えっ?」

「お兄ちゃん!倒したの?」

「わからない、でも倒れたな」


 ただこの行動でゴブリン達の怒りに火が付いてしまい、逃げるどころか逆に攻撃的になってしまう。


 外側がギャーギャー、カキンカキンうるさい。


 庭に落ちている小石の数にも限りがあり、元々庭は母親が管理していた事もあり邪魔小石などは気が付けば取り除かれているのだ。


「サクラ、親父達に頼んで、地球から小石貰ってきて」

「了解!」


 その間俺は庭に落ちてる小石を見つけてはゴブリン目がけて投げつけていた。

 ただコントロールが悪いので当たっても倒れないし、ゴブリンも防御しながらこちらを攻撃しようとしているので、余計に倒れないのかもしれない。


 最初の一発が運が良かっただけか。


「お兄ちゃん!パパから小石貰ってきたよ!、あとね害獣対策ならエアガンで撃てばだって」

 エアガンって、たぶん親父達はゴブリンが何だか知らない。

 観光地で暴れまくっている野生の猿みたいな認識しか無いのだろう。


「私、エアガンで撃ってみるね!お兄ちゃん部屋に入るよ!」

「おう、好きなの持ってきて撃ってみろよ」


 小石で少しはダメージを与えられるのだから、人が当たっても痛いエアガンなら地味な痛さで逃げてくれるかなと。

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