第17話 リーシア 中編

翌朝、冒険者ギルドに向かい、セリーナが掲示板を見ている

「昨日はありがとうございました」

リーシアが職員に連れられて来ると頭を下げている

「無茶はしない事だ」

アーレルはリーシアが槍を杖代わりしているのを見て睨みながら言うと、セリーナとフィーネもリーシアの事を見ている

「薬草採取ぐらいしか出来ないので…」

悔しそうな顔をしながらリーシアが呟く

「家に帰った方が良いだろう? 違うか? 少女1人で冒険者は無理だぞ」

「え! …家に居場所なんて…もう無いです…」

リーシアがうつ向きながら言うと、職員も驚いている


「悪かったな…深入りするつもりは無いが…怪我が治るまで静養しないと、死ぬぞ」

「それは…」

リーシアが泣きそうになっている

「リーシアさんは、野営しながら冒険者をしています。 今回倒れたのも何も食べないで薬草採取をしていたからです。このままだと飢え死にしか無いですが…怪我が治っても、末路は解ってますよね?」

職員がアーレルを見ながら話していると、リーシアが驚いている

「面倒事を押し付けようとするな!! ウルソンの町まで早く行きたいのだから」

アーレルが困ったように言うと、セリーナとフィーネがリーシアを見てから、アーレルの顔を見ている

「ウルソンの町に? それなら尚更です! 多くの冒険者が集まる町ならば、Fランクの依頼も沢山選べます」

「町なら依頼は有るが、女を食い物にする奴らも多いぞ!! パーティーに誘って、娼婦代わりにボロボロにする奴らも沢山いるだろう!! 末路は知っているだろう? 職員が目の届かない所に追いやりたいだけだろ!!」

アーレルが職員を睨んでいる

「え! それは…」

職員がアーレルの視線に驚き後退りすると、セリーナとフィーネがキョロキョロしている

「この頃の冒険者が質が低いのは、ギルドの追いやりたい体質の所為か?」

「冒険者は自己責任です」

「自己責任? その通りだが、受けさせる依頼内容は確認しているだろ! 能無しに無理な依頼を受けさせたのが悪いじゃないか? 違うか?」

「ランクで受けれる内容しか受けられませんが…」

「能力も無いのに、ランクをあげる方が悪い! 違うか? 大体弱くて覚悟も無い奴がランクアップさせている方が悪い!!」

「それは規定で…」

職員が黙り込む

「御父様、言い過ぎです! リーシアさん泣いています」

セリーナがアーレルの顔を睨んで言う

「セリーナ…」

アーレルが苦笑いしながら、セリーナを見てから大粒の涙を流しているリーシアを見ていると、アーレルが鑑定を使っている


剣豪…豪剣と衝撃斬…このレベルで使えないスキルしか持ってないか…腕の太さからして、大剣なんて持てないから…無理が有りすぎるな…大剣特化の能力だと普通に無理が有るだろう…晩成型だと、育てても何年もかかるぞ…


アーレルが考え込んでいる

「御父様?」

セリーナが考え込んでいる、アーレルの顔を覗き込む様に見上げている

「セリーナ、早く依頼を受けて森に行くぞ」

「御父様…えーと、この依頼お願いします」

セリーナが薬草採取の依頼書を職員に渡すと、カウンターの方で見ていた筋肉質の男が歩いてくる

「話しは聞いていましたが、どうでしょう、リーシアさんに冒険者の基礎を教える依頼を受けて貰えませんか?」

男が笑顔で言う

「Dランクだから指命依頼は受けない」

「え! それでもこのままだったら、どうなるか解ると思いますが…どうでしょう? 出発まではまだまだかかるでしょうから、1日銅貨50枚でどうですか?」

「早くウルソンの町に行きたいから無理だな」

「当分行商人は来ないと思いますが…」

「は? 何故だ」

「こちらに向かう街道に魔物が住み着き、商隊や行商人は、迂回してウルソンの町に向かうからですが…」

筋肉質の男が説明している


「セリーナ、フィーネ、仕方無いから歩いて向かうぞ」

アーレルが考えてから言う

「はい! 御父様」

セリーナとフィーネがアーレルを見て返事をする

「子連れで無理な旅をする必要は無いのでは? 」

筋肉質の男が慌てて言う

(何を考えている? 子連れで野営しながら旅なんて不可能だ! この冒険者は子供の事を考えてないのか? 何としてもパーティーを組ませたい…女性がいるパーティーなら安心も出来る)

「こっちは急ぎの旅だ! 子供が重傷と連絡が有ったからな!」

アーレルが睨みながら言う

「御父様、今から準備をして出発しても日が暮れますけど」

セリーナがアーレルの顔を見ている

「あ! そうだな…今日の依頼だけはこなして、夕方食料等を買いに行くか…」

アーレルがセリーナを見て苦笑いしていると、セリーナがリーシアを見ている

「セリーナちゃん、このお姉さんも一緒に連れていってくれるかな?」

筋肉質の男がニヤリとしてから、セリーナを見ている

(この少女を味方にする方が早いな)

「え? 足手まとい!」

セリーナが即答すると、筋肉質の男と職員が驚いている

「それなら…依頼を受けてくれる様に説得してくれないかな?」

「え? 嫌! 足遅そうだから…怪我人を連れ回したくない! 治してから連れてきて」

「え! それは…」

筋肉質の男が苦笑いしている

「無理なの? 人に頼み事するのに足を引っ張らせるの?」

セリーナが筋肉質の男を見ていると、フィーネも見ている

「それは…」

筋肉質の男が苦笑いしている

「ごめんなさい…借金したら…もう終わりだから…複数のポーション買えなくて…返済の目処も無いのに…」

リーシアが涙を流しながら言うと、職員がセリーナを見ている

「複数の? 必要なの?」

セリーナが少し驚きながらアーレルを見ている

「ポーションなら1本で大丈夫だぞ、粗悪品なら何本も必要だろうが」

アーレルがセリーナを見て言うと、筋肉質の男と職員が驚いている

(この男何を言っている)

「は? この傷なら冒険者ギルドで扱っているポーションでも複数必要だ」

筋肉質の男が戸惑いながら言うと、職員がポーションを見せると、アーレルが鑑定しながらため息をする

「ポーション? クズだな…薬水? 程度も良くないな…魔力も薄いから、これじゃあ銅貨50枚が良いところだ!」

アーレルがじっくり見て言う

「何を言っている!! ポーションにケチをつけるのか!」

筋肉質の男が慌てた様に叫ぶ

「フィーネ、ポーション出してくれるか」

アーレルがフィーネを見て言うと、フィーネがポーションを出して見せると、筋肉質の男が受け取り見比べている

「何だ色合いが…」

筋肉質の男が慌てて見比べながら考えている

「もしかして、本物のポーションを見たことが無いのか? まさか! こんなクズをポーションの価格で売り付けていたのか!! 詐欺だぞ」

アーレルが筋肉質の男を睨み怒鳴る

「まさか…そんな事は…」

筋肉質の男が戸惑いながら職員を見ている

「ギルドマスター、効果を確認をした方が良いと思います…もし言われている事が本当なら大変な事に…」

職員が青ざめながら言うと、筋肉質の男と相談をしている


「このポーション買い取りたい…小銀貨3枚で良いか?」

筋肉質の男がアーレルを見ながら言う

「良いぞ、どうせヒーラだから緊急時しか使わないからな」

アーレルが笑顔で言うと、職員と筋肉質の男が顔を見合わせている

(ヒーラ? 本当にヒーラか? ヒーラならポーションなんて不要だろう!!)


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