第14話:フェンリル、飼い主を守るべくまたしてもダンジョンで無双してしまう


「ワワワワーン!!!」


「はははっ、フィルは本当にダンジョンの中を走り回るのが好きだよな」


 家の近所にあるダンジョンに入ってしばらく経った後。フィルは相変わらずダンジョンの中を走り回っていた。

 普段どうしても家の中じゃ走り回れないもんな。ていうか走り回られたら家の中が壊滅してしまうからどうしても止めるしかないんだけど……。


———

「フィルちゃん猛スピードで走り回ってて可愛いいいいいいいいいい!!!」

「すっげえスピードwwww」

「こんなのが街中散歩するのは確かに無理だwww」

「ダンジョンという最高のドッグランを手に入れてるってことか!」

「そもそも家の近くにダンジョンがある社畜って一体……」

「確かこのダンジョンって阿澄レナを迷惑系から助けたところだよな。社畜の近所だったのか」

「全然このダンジョン知らないんだけど。どこにあんの?」

「特定したら社畜の住んでる場所もわかっちまうだろうが!」

「それにしても全然モンスター出てこない。フィルにビビってんのか?」

「もっと下まで行って欲しい!!!」

———


「ワンワン!」


「フィルちょっと待てって! 俺を置いてくな!」


 今日は思いっきり走り回りたい気分なのか、はたまた取れ高を気にしているのかはわからないけれど、フィルが下層までダッシュで駆け出して行ったので、俺はなんとか離されないように追いかける。

 

 ひい……寝起きの体にはあまりに酷だ。帰ったら二度寝しよう。それが土曜日の特権だ。


「ワンワン」


「ぜえ……ぜえ……や、やっと追いついた……」


 走り飽きたのか、それとも俺を待ってくれたのか。フィルが止まってくれたのでようやく追いつくことができた。それにしてもここ、どこだ?


 フィルを追いかけるのに夢中で気づかなかったけど、結構深いところまで来てしまったんじゃないかこれ?


「ワンワン!」


「ど、どうしたフィル?」


 俺が追いついたのを確認したフィルは、突然地面の方に吠え出した。今までこんなことしたことないのに、いきなりどうしたんだ。


「ワンワンワン!」


 ここ掘れワンワンと地面をガシガシと掘り起こしながら夢中でフィルは何かを掘り起こそうとしている。あ、もしかしてここにお宝があるんじゃないかってことか!? 


「ここにお宝があるのかフィル?」


「わん」


「よし、掘り起こすか!!!」


 男として生まれてきた以上、目の前にお宝があるとわかっているのに何もしないわけにはいかない。俺はフィルと一緒に地面をガシガシと掘って土の中に埋まっているものを掘り起こそうと奮起する。


 えいさ、ほいさ……あれ、穴掘りとかガキの時以来じゃね? よく考えたらなぜ俺はこれを平然とやっているんだ? まだ酔いが回ってるのかな……それともフィルと一緒にいるからテンション上がってるのか?


———

「フィルと一緒に穴掘りすなwwwww」

「社畜も野性的だよな……w」

「宝とかほんとに埋まってんのか?」

「これでガイコツとか出てきたら笑う」

「いや、流石にそんなすんなりと宝が手に入るわけがないでしょw」

「宝を手に入れようとしたらトラップが仕掛けられてたパターンですねこれ」

「頼む、社畜たちに最高の宝をプレゼントしてやってくれ!」

———


「視聴者さんたちにも若干引かれてるし……でもここまできたら掘り起こしてやる!」


「ワワワワーン!」


「お、フィルこれは!?」


 ひたすら闇雲に地面を掘り続けていたら、金ピカの王冠みたいなのが出てきた。おいおい、これ絶対高いやつじゃん。どうしようかな……質屋で売るか? いやそれはもったいない。


 あ、そうだ!


「この王冠はフィルにぴったりだから被せてみるか。おお、似合ってるじゃんフィル、王様っぽい」


「ワンワン!」


 超でかい大型犬に王冠……うん、相性バッチリな気がする! 写真撮るか、これを俺の写メにしようっと———


「ワン!? ワンワン!」


「ん、どうしたフィ……うわっ!?」


 王冠を被ったフィルの姿を写真に撮ろうとしたその瞬間、ふと後ろから無数の巨大なゴーレムが俺に襲いかかってきた。

 間一髪のところでフィルがオークに体当たりをしてくれたおかげで攻撃は当たらなかったけど、危うくぺちゃんこになるところだったな。


 でもなんでいきなりモンスターが。掘り起こしている時には全然気配すらなかったのに……あ!


「ま、まさかこの王冠をとったからモンスターが湧き出てきたのか!?」


———

「早くもフラグ回収」

「これはフィルの無双が見られるか?」

「散歩とは思えない濃厚な配信」

「ほんと社畜とフィルは見せてくれるねぇwwwwww」

「こいつら配信の神様に愛されてるだろ」

「フィルちゃん頑張れええええええええええええええ!」

「社畜を守れフィルううううううううううううう!」

———


「フィ、フィル。無理はしなくていいからな。やばかったらすぐに逃げ——」


「ワワワワーン!!!」


「あ」


 フィルを心配してなんとか逃げられないか色々考えようとした矢先。フィルは速攻でゴーレムたちを倒して、頭の上でキラキラと輝く王冠が奴が勝者であることをより強調していた。


 そうだった。こいつはあの時バカ強そうなモンスターたちを瞬殺するようなフェンリルだったわ。


「ワン」


「お前……本当にすごいよな。強くて可愛くてかっこいいフィルは本当に最高だな!!! だろ、視聴者さんたち?」


———

「激しく同意」

「フィルちゃんまじで神」

「フィル最強!!!」

「フィルがナンバーワンだ」

「こりゃもうフィルが最強ってこと間違いなし」

「あ、社畜がフィルをまたもふもふしながら思いっきり撫でてる」

「フィルも本当に気持ち良さそうにしてて可愛い」

「やっぱ社畜がいるからフィルが輝くんだろうな」

「超朗報:フィル、飼い主を守るべくまたダンジョンで無双してしまった模様wwwwwwwwwww なお戦利品はフィルにぴったりな王冠wwwwwwwww」

———


=====================

【大事なお願い】


 よろしければ星やフォローをよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る