第19話 穢れのない魂 2

 最初は見守るだけで十分だった。


 本当だよ。


 だってね、私があげた羽根には特別な力を込めていたから。


 なんて言うのかな。


 天使の加護、もしくは守護、って言葉が合ってるかも。


 咲ちゃんに不幸が降りかからないようにしてたんだけどね。


 イジメられないように、学校で独りぼっちにならないように。


 家族にも友人にも愛されて育った彼女は、とっても美人さんになった。


 可愛い系というよりも美人系。


 切れ長の瞳が魅力的で、前髪なしの前下がりボブがよく似合っていた。


 だけど。


 時が経つにつれて羽根の力は薄れていった。


 咲ちゃんが就活しているとき、ついに力は失われてしまって。


 まさかのブラック企業に就職。


 私にはよくわからないけれど、彼女はその大人びた容姿から『仕事ができる』と周囲から思われたらしく、新人さんなのにガンガン仕事を押しつけられて。


 咲ちゃんは頼まれたら断れない性格だから引き受けちゃって。


 綺麗な目を台無しにするクマを作ちゃって。


 これまで不幸をはね退けていた反動がきちゃったのかなあ。


 申し訳ない。


 それでね、私たちは話し合ったの。


 このまま咲ちゃんを放っておけないって。


 このままじゃ咲ちゃんが死んじゃうって。


 そんな展開許せるわけないでしょ。


 だから決めた。


 5人で地上に降りて彼女を救おうと。


 この頃には、頭の片隅にあったのかもしれない。


 彼女を地上から連れ去る。


 そういう選択肢が。

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