第42話 自力で登っても一気に70階。
「ドリル!!」
20階層から30階層までの階段を俺の〈螺旋破砕〉ぶち抜いた。
地下鉱山で発見したジェムをメルルに解析して貰うと〈マナ位相次元転送ジェム〉だったことがわかった。
正式名称〈ディメンション・ディストーション・デトネーション〉ジェム。
通称DDDジェムだ。
このジェムは空間の裏側に収納することができる。
四次元ポケットのように、空間をねじ曲げる力を持つようだ。
この〈空間をねじ曲げる力〉によって、俺のドリルから発するエネルギーを増幅させたらしい。
「ドリドリドリィィィ!」
よくわかんないが、とにかく螺旋エネルギーが爆発する。
俺は20階から30階までの天井をぶち抜いた。
「なーんか勝ちたくなってきたな」
入り口の吹き抜けから70階まで飛んでいったときは楽勝ムードだったので、地下探索をしたくなったが、結果、順位は下がってしまった。
先頭集団が上にいるとなると、実際ムカついてくる
俺は磁場反射の力で「ドンンッ」と、20階から30階までの吹き抜けを飛翔!
これで下の連中もついてこれないだろう。
「鬼神さんに続けえぇ!!」
雑魚共が俺についてきた。
気づけば俺の足に紐がかけられていた。紐の能力を持つ奴がいたらしい。
「うぜえ! こんなもん、切って……」
いやまてよ。
下克上とかしたら面白いな。
絵になると思うし、番組的にもオッケーだ。
俺は足についたロープをほどき、30階層の柱に巻き付けた。
「下克上だ! 這い上がってこい。お前らぁ!」
20階から30階の吹き抜けと、ロープにより近道ができた。
途中、都度21~29階層の敵が、吹き抜けを昇る人を狙うだろうが、近道だからリスクは上等。
まあ俺はもう30階に上ったから、後続のことなんか知らないんだけどな。
コメントは盛況だった。
『感動した!!』
『俺も這い上がります!』
『がんばろうって気持ちになりました』
『なんか涙がでてきた』
『登るんだよおおおぉおお!』
ヤスシや爆乃海、五里アキラの背後からは、ダイジ君や番長がロープを登って俺を追ってくる。
地下労働者もいたのか。
地下労働者にはちょっとだけ親近感があるので、俺はにやりと微笑む。
「お前らも飛び入り参戦かよ。おもしれえぜ!」
無装備のダイジ君がロープを登りながら叫ぶ。
「おれはぁああ! ごのヂャンズば、ぜっだいのがざない!! グバァ!」
ダイジ君は弱かった。
23階あたりの敵・シザーマンに襲われていたのを、メルルの撮影カメラを通じて横目で眺める。
ダイジ君を助けたのは番長だった。
「甘い。甘いよぉ、ダイジ君。力の解放のさせ方が下手」
番長は強かった。
23階の迷宮魔獣バーバリアンオークの斧を奪い取り、ダイジ君を殺そうとしたシザーマンを両断する。
「俺はぁ……。いづも、ぞうだっだんだ! なにをやっでもだめで……ぐあああああああ!」
ダイジ君が、扇風機魔獣エアーマンに吹き飛ばされた。ロープに捕まり耐える。
「おれはぁ! 登るんだよおぉおお!」
弱いくせに暑苦しいので、俺は『ダイジ君はもういいかな』となり、先に進むことにする。
アナウンスが響く。
『先頭集団が55階を抜けたぁ!』
なかなか速いが、俺も全力で猛追してやろう。
そのとき、俺が破壊してつくった〈吹き抜けエリア〉から、隣にそびえるタワーが見えた。
たしか、アルティメットセレブタワーだ。
その最上階で、虹色の光が爆発となって弾けていたのだ。
「女神の光……?」
俺はいやな予感がした。
「女神様の気配だ」
メルルがうっかり漏らしたので、ぎゅっと身体を掴む。
「てめぇ。知ってるのか?」
「そりゃ僕は妖精世界出身だし? でも僕が来たのは単純におもしろそうだったからだよ。女神様に見つかったら、怒られちゃうからなぁ」
「……女神のさしがねってわけではなさそうだな」
「鬼神は女神が怖いの?」
「前に会ったことがある。うっすいスリットの服でおっぱい丸見えで、空を飛んできた。善だの悪だの邪神だのわけわかんねーこと言ってたからな。女じゃなかったら殺してた」
「ふえぇ。罰当たりだねえ。今度あったら、僕がなんとかしてあげるよ」
「誰がてめーに頼むか」
「株は今が買い時ですよ。へっへへ」
「どこで覚えてくんだよ。まあいい。そのときが来たらな」
「あっしは、役に立ちますぜぇ!」
メルルは女神対策のカードになるかもしれない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!
俺は30階~69階を駆け上がり、63の迷宮魔獣を瞬殺し、70階へ。
磁力による飛翔を使わずに自力で登っても、結果は変わらない。
爆散と瞬殺で一気に40階層を吹き飛ばした。
70階は肉の蠢く触手エリアだった。
先頭集団にも追いついた。
先頭集団はここで立ち往生しているようで、びくんびくんしながら倒れていた。
「いくぜぇ!!!」
鬼神が触手エリアに突っ込んでいくと同時刻。
番組制作者のディレクターは、決断をしていた。
「あの男にカメラを回せ」
「いいんですか? ディレクター」
「カメラを止めるな。いいな! 全責任は私が持つ!」
鬼神にカメラが向けられた。
全国の家電量販店で鬼神の猛攻が映し出されることになる。
ディレクターが決断した同時刻。
屍田踏彦は、アトラクションタワー最上階で、マスターキーをじゃらつかせる。
さらなる罠を差し向けようとしていた。
「触手エリアの感度を4000倍にしろ」
秘書の女性が、肩をふるわせる。
「だめですよ、踏彦様。感度4000倍なんかにしたら、絵面が汚くなってしまいます」
「かまわん。鬼神を決して上がらせるな。僕のシナリオは鬼神を敗北、脱落させ鬼竜リコを屈服させることだ。ゲームマスターに敗北などあってはいけないんだよ。それと、〈邪神ダシ〉の準備をしておけ」
「だ、だめです。邪神のダシは違法薬物扱いですよ!」
「鬼神は絶対に勝たせない。俺は手に入れると思ったものは、どんな手段でも手に入れる。そのためにテレビ局を買収し、気にくわない奴を300人退職させた。いまいる職員は全員、俺の手足だ! どんな違法ももみ消せるのさ!」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
さらに屍田踏彦が〈邪神のダシ〉を準備した同時刻。隣のアルティメットセレブタワーにて。
ニュルンルンは爆発した尻をメタル化で回復させ、立ち上がる。
再び目に光と取り戻し、ヴェーラへと不敵な笑みを浮かべた。
「ニュルンちゃん、あなたは……」
「私が神により命じられた計画。それは〈人類蠱毒剪定計画〉です」
鬼神60階触手エリア。
屍田踏彦が邪神のダシを接種し、パワーアップを始める。
そして女神ニュルンルンの計画が語られるのだった。
――――――――――――――――――――――――――――
100話くらい目標にしときますw
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます