第3話

 学校で全校生徒の指名を見ることは可能か?

(不可能っぽい。というより夢ですからね。相馬くんは、まつ毛が多くてお馬さんと並ぶと、なんだろう、家族っぽいなあ。いや。馬面とかでなくて。顔は細い方だったけど)


〈よーし!夢の中の子の事考えてるぞ!やった!〉


お手洗いでみんなと前髪を確認し合ってた時に異世界夢想アナウンス。

 全身が固まった。

「さくらちゃん、どうしたの?足つった?なんか、ぴり、としてる」

「いや、ぴりっとってなによ」と笑いながら他の子が効果音に突っ込む。

「こういうのもオノマトペ?」

「あー、宮沢賢治?でもどっどど、とかとは、……同じなのか?」

「漫画のさー、ドキッ、とかもそうなのかなー?」

桜はドキッとした。我ながら夢の中で知らない男の子と話したのが朝、面白かったからだ。


 そして、今夜の夢は。

 寝付けない。時刻は深夜1時。

(ちょっと楽しみだったんだけどなあ)

と思いながら、寝た。

「だれ、アンタ」

目を開ける。今日は学校の体操着で寝てしまった。

「どこの学校か丸わかり。初心者だなあ」

「……」

何も言えない。ちょっと怖い。黒髪はさらさらと、左右に分けてきれいだけど、周りの人にもいろいろ強制するタイプ。

「きのうの相馬くんは優しいタイプだったのに」

「はっ?!」

今日の男子はなんだか、

「俺のこと誰と比べてんの?急に」

俺様。

「料理好きなの?すごい、ビーフシチュー?ん?ハヤシライスの匂い?どっち?ですか?」

そこは厨房だった。

「わあ、ジブリっぽい!火の悪魔がいそう、ですね!」年上かもなあ、辺りを見る桜。

「アンタ、オタクなの?見た目は、まあ。寝巻きに体操着じゃあ、がざつだな。ホコリと砂とか気にならないの?」

「ジャージでも疲れたらベッドで寝ちゃいますよ?」

「信じらんねえ!ちゃんと洗ってくれるお母さんに感謝しとけ!」

「え?1週間に一回みんなで外して洗ってます」

それを聞いたお料理が上手そうな少年は、少し悲しそうにあっそ、と言った。

「おいしそうですね。リアルでも作れるんですか?」

「まさか。市販のルゥを使うよ。ここは自由に好きな香りのスパイスで夢の力で想像して匂いが出せる」

俺の場所だから出てってよ。

わかりました。


夢が一旦終わり、2時か3時に目が覚め、


「またか!」

今度は少年はじゃがいもと玉ねぎを処理していた。

「またです!え、なんで?今度はジャーマンポテト?」

少年無言。

「食べたいものを用意するの、大変ですよね。欲しい味や作りたい味があったら研究しなきゃだけど、調味料は高いし、料理はセンスです」

黙って、いた少年が。

「別に、焦げたトーストでも、失敗した目玉焼きでも食えりゃあ、いいだろ」

「はい!」

花のように桜が笑う。

「……名前は」

「愛染桜です」

「あいぜんねえ、聞いたことないや。調べないけど」

「あの?年上ですかね?お兄さんは?」

「料理谷」

「すっごい苗字!」

「苗字だけで、食材なんてもんより、食べ物いつも探してる家だよ」

「お菓子ならあげられるんですけれど」

「なんで菓子だけ?」

「あ、お菓子もダメですね。人が作ったもの、苦手な人もいるし」

「食べられるならなんでもいいよ」

「ふふ、料理谷さんよろしく。いつか材料集めて一緒にカレー作りますか?」

「はっ?!」

そんな家族が作るようなお料理じゃだめかな。

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