翻弄する愛染桜
明鏡止水
第1話
ショートカットに綺麗に整えられた眉、優しげな瞳は光が差すと柔らかな茶色で、唇は少し薄く、桜色のリップがよく似合う。
人々に愛されるために生まれてきた、それは平等なこと、誰もがそうだと知っていても。
愛染桜(あいぜんさくら)。彼女はまだ、他人を愛したことがない。
「さくらちゃーん!カヌレはめっちゃ難しいし、型が売ってなかったからさ、しぶいけど琥珀糖チャレンジしない?」
「さくらちゃーん、『はてしない物語 上』って本図書室で見つけたの!どれくらい果てしないか一緒に読んでみない?」
「さくらちゃん、たいへん!私今日31日だって言ったけど1日だったね!ごめんよう、まちがって!」
愛染桜。女の子にモテモテというか、クラスのグループで優しく楽しく、みんな仲良くを実現させる、けして誰かを悪く言わない子。
というか、意地悪されても相手が勝手に居心地悪くなって教室内にいづらくなる位、愛染桜は完璧、ではないが。愛らしい子なのである。
「カヌレ大変だよね!粉がいっぱい色々必要でバターの混ぜ方やバニラビーンズとか、必要だもんね!琥珀糖もわたし成功したことないの!一緒に作らせて!」
「あ、その本の作者、誰だっけそれ、お母さんが読もうと思って子供の頃からチャレンジしようとしてる本!モモっていうのも読みたいんだって!違う作家かも。なんか雰囲気似てるんだよね」
「あ!ついたちね!大丈夫だよ!カレンダーと日直の当番で気づいたの!きにしないで!」
ハキハキとした中に元気はつらつ!
本人ですら気疲れしないよう完璧な言葉回しと笑顔。女子には人気が高く。男子は愛染は和み系、といった認識だ。小学生の頃からころころと鈴の鳴るようによく笑い。
中学生になってからは彼氏もできた。一緒に登下校するだけの関係で、それだけで楽しかったのだが、クラスが変わって話すことが減ると、寂しいことだがお互いに別れる、というよくわからない結末に着地した。それでよかったとおもっている。
そんな愛染桜。
成長して14歳になった。ある日眠っていると不思議な夢を見た。
〈スクラッチの宝くじを買って200円もらうか、子猫を飼うことになるか、異世界で恋と愛を体験するの、どれがいい〉
なんだかドラえもんのような声だった。と思うがルフィにもサザエさんにも聞こえた。
(ん〜?)眠りながら悩む。
スクラッチって、けずるあの遊びみたいな銀のやつだよね。10円玉でこすったりする。200円て、文房具一個買ったらおしまい。猫も犬も好きだけど欲しいと思ったことはないし、お菓子作りで毛が入らないか心配。恋とか愛は現実で充分。
〈そっかあー、リア充かー……〉
なんとも言えない表現しがたい声が今度は残念がりながら神々しくため息をつく。
キャラがブレブレだ。
〈でも、お願い!向こうの男の子たちの為に!異世界!夢の中だけでも行ってきて!報酬は将来好きな人との幸せな人生と、それが魅力的じゃないなら好きな仕事への才能!世渡りはさすがに本人任せになっちゃうから!うまく大学選びや就職!時に転職も検討しようね、慈愛のある娘で私は嬉しいよ!〉
それじゃあ!
君のレム睡眠とノンレム睡眠!
いただいた!いってらしゃい!
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