第7談
その麗しい一行が来訪したのは、地上からではなく空からだった。
楽の音は艶やかで、小鳥たちは聞き入るように
「あーあ、とうとう見つかったかぁ」
妓楼の回廊から空を見上げるのは
「私はあんたが出ていくのは寂しいけど、それでも良かったと思っているよ」
「あたしがここから出て行ったら、
こう言えば、引き止めてもらえるんじゃないかと期待して、上目遣いで
「私の常連さんがね、今度地方に赴任するんだって。それで見受けしてくれるって言うんだ。あんたみたいな世話が焼ける妹分がいなくなれば、私も後腐れなく行けるんだけど?」
後ろからぎゅっと抱きつかれて、耳打ちでそんな告白されてしまっては、この作戦は失敗だとしか思えない。
「……一晩中、ヤリたかったのに」
「やったことがないから、そんなことが言えるんだよ。いくら高級妓女だと言われたって、所詮、金で買われる身だよ。いろんな男に好きなようにされて、良いことなんかないよ。あんたには本当に好きな男と結ばれて欲しいと思ってるよ」
更にそう言われては黙るしかないではないか!なぜ自分はこんなに空気が読めるのか!眉を寄せて、唇を噛み締めて、拳をグッと握る。ここは聞き分けの良い娘になるしかない。
「
「ええ、大好きよ。
「立派な仙女になってね」
「あいよ……」
後手に手を降りながら、
誰が清廉潔白な仙女なんかになるもんか。抜け出してやる!
◇◇◇
【嫦娥の盃】の1階には賓客を通す特別な部屋がある。漆塗りの調度品で整えられた部屋は、この国の大臣や皇族が来訪された時以外に使われることはない。
「そんな部屋に仙女様御一行を通すとは、さすが爆炭ババア……」
背中をボリボリ掻きながら部屋に入ると、人の言葉では表すことができないほどの芳しい芳香がした。
部屋に溢れるのは雅な輝き。夜の嵐の後の朝焼けのような、涙が出そうなほどに美しい、人の心を溶きほぐす灯り。
「これが
テメェは誰だ?と言いたくなるほど猫撫で声の仮母が、
天女たちは一様に白い衣に身を包んでいる。ヒラヒラとした天衣は軽やかで、ふわりと浮いた
「
3人いる仙女は同じ衣装に見える。それでも身分差があるのだろうか。真ん中に座る仙女が
できるな……
「
ふわりとした笑い方は妓楼で習った。客をもてなすために殺気は必要ない。あくまで女性らしく、儚げに笑うことが必要だ。
「お迎えと言われましても、ほら、この子には元手がかかっておりますし……」
仮母はチラリチラリといやらしく仙女達を見る。その姿を見ながら
妖怪から
どこからあんな長さのものが出てくるんだ……と突っ込みたいけど、キラキラと目を光らせ、更によだれまで垂らしそうな仮母を見てるとそれもできない。
「世の通りは
象牙の価値は高い。しかも滅多に見ない美しさと大きさを兼ね揃えて要ることは、象牙を見たことがない
万事休す……
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