第2話
まさかの推しがペットショップに遊びに来ていて、冬夜は緊張しながら何故かペットショップ内の案内をしていた。
「こっちでは、えっと、ハムスターとかがいまして…」
「おー、可愛いなー…こっちがジャンガリアンで、こっちがゴールデンか」
ハムスターを見て楽しそうな慶汰の笑顔に冬夜は写真に納めたいと何度も思ったが何とか抑えて、仕事をし続けた。
「店員さんは、何が好きなんだ?」
「え…!?」
まさかの質問に頭に出てきたのは今目の前にいる慶汰だったが、慶汰の指は犬や猫が入っているガラスのケースを指していて、すぐにペットの方だと頭が察知するとニッコリ営業スマイルで答えた。
「俺は猫が好きですよ、昔実家で飼ってまして…」
「へー、いいなー!俺も猫飼いたいんだけど…仕事が忙しくて飼えないんだよなー」
(知っています!今、雑誌のモデル何本も持ってるみたいですし、今度ファッションショーにも出ると!!)
しょぼんと落ち込む慶汰に冬夜は少し考えてから、とある事を思いつくと「少し待っててください」と慶汰を止めてから裏に向かった。
そして数分後、慶汰の元に猫を抱き抱えてくると慶汰は目をキラキラ輝かせた。
「え、え…店員さん?これはいったい…?」
「たまにこうやってお客様に触って貰ったりしているんですよ、ペット飼えないという事なんでどうぞ」
猫を差し出すと慶汰はゆっくり手を伸ばして頭をゆっくり撫で出し、幸せそうな笑顔を浮かべて冬夜も嬉しそうに笑った。
「ありがとうな、店員さん!」
「いえ…」
(慶汰さんが少しでも元気になれるなら、ちょっとだけでもお手伝いをしよう)
「じゃあまた!」
手をブンブン振って去っていく慶汰に冬夜も手を振りそうになったが、頭を下げて「ありがとうございました!」とお礼を言って見送った。
慶汰のファンではあるが流石に仕事中で相手はプライベートな為、普通に接客をしただけだった。
(本当はもっと仲良くなりたかったんだけどなー)
「ねぇねぇ!見てたわよ!」
女性の先輩社員さんが口角を上げて楽しそうな笑みを浮かべながら近づいてきて、冬夜は人気モデルだとバレたか、と思ったが…出てきた言葉はまさかの内容だった。
「あの人、イケメンだったわねー!しかもちょっと良い雰囲気だったじゃない?」
「………へ!?」
思っていたのとは違う発言に冬夜の顔は真っ赤になり、慌て出しすぐさま「そんなことないですよ!」と否定をしたが先輩社員さんは「照れなくていいのよー」と楽しそうに笑いながらその場を去っていってしまい、その後の冬夜の仕事はミスの連発になってしまったのであった。
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次の日、とある撮影スタジオでは慶汰と鷹汰が撮影の準備をしていた。
先に慶汰はヘアメイク等の準備を終えて、鷹汰が終わるのを待ちながら昨日のペットショップでのことを思い出していた。
(やっぱり猫いいなー、いや犬も可愛かったが…ハムスターもいいな…)
昨日戯れたペット達を思い浮かべていると、対応してくれた店員さんの顔が頭を過ぎって頬を緩ませてしまった。
するといきなり後ろから衝撃が来て「うぉっ!?」と驚きながら振り返るとヘアメイクを終えた鷹汰が抱き着いていた。
「お待たせ、終わったよ!何か凄いニヤニヤ笑っていたけど何があったの?」
「鷹汰…別に、お前には関係ねぇよ」
冷たくあしらうと鷹汰はむぅ…と頬を膨らませて、慶汰のふくらはぎら辺を軽く蹴り出した。
「お前な!」
「だって、いつも色々教えてくれるのに今回は教えてくれないじゃん、なんで?」
「それは……」
確かにいつもなら鷹汰に聞かれたら色々報告をしているが、何故かあのペットショップと店員さんは教える気がなかった。
何かモヤモヤしてしまったのだ。
黙っていると、また鷹汰はむぅ…と頬を膨らませて今度は抱き着いてきた。
「慶汰?答えられないくらいお気に入り出来たの?」
その言葉に顔を真っ青にしてすぐに否定しようとしたがその前に「2人ともイチャつくならカメラの前でー」とカメラマンさんに言われて鷹汰はすぐに離れて返事をした。
撮影が始まったが胸騒ぎがして撮影に集中出来なかった。だが仕事なので何とかやろうと慶汰はいつも通り鷹汰に口付けようとしたが…
「んっ!?」
まさかの鷹汰の方から口付けてきたのだ。
普段は受け身で鷹汰からは全くしないが、今回は押し倒してきて鷹汰から積極的にしてきた。
「んっ、はぁ…んんっ……」
いつも慶汰がしていることをされて、鷹汰は余裕そうな表情でカメラ目線をしたりしながらキスをしてきていた。
「はい、OK!珍しいね、鷹汰くんからのキスなんて!普段とは違う撮影になったよ」
「へへ、ありがとうございまーす」
唇を離してニコニコ笑いながらカメラマンと話す鷹汰。だが慶汰はずっと唖然としていて動けなくなっていた。
すると鷹汰が近づいてきてにっこり笑うとギュッと抱き締めて耳元で囁いた。
「…慶汰は俺以外見ちゃダメ…俺、慶汰が居なくなったら生きていけないんだよ?」
冗談みたいな言葉。
だがこれは本当だった。何回も慶汰は離れようとしたが結局戻ってきてしまう。
慶汰は鷹汰を見捨てることは出来ない。
大事なたった1人だけの双子の弟だからだ。
「ああ」
小さくそう呟くと鷹汰は嬉しそうに笑ってしっかり抱き締めてきて、慶汰も背中に手を回してギュッと抱き締め返した。
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