番外編〜その1〜

いつも通り昼休みに保健室でご飯を食べている時の事だった。

凪咲は「あ!」と何かを思い出したかの様に口を開くと律と佐野先生が凪咲の方を向いた。

「どうかしたかい?凪咲」

「課題やり忘れたか?」

「いや、今日新巻発売日だから帰りに本屋寄らなきゃなーって…」

「へぇ、何という本?」

律に問いかけられて凪咲はスマホを取り出して本のタイトルを確認すると何も考えずに答えた。

「えっと…『ドMなオレは沢山殴られてイかされたい!』って漫画だよ!」

そう答えるとお茶を飲んでいた佐野先生はブーッと吹き出してしまい、すぐに周りを片付けると勢いよく凪咲に向かって叫んだ。

「お前!なんつぅ漫画買おうとしてんだよ!!」

「BL漫画ですよー、攻めも受けも不良なんですけど受けがドMで……あ、そういや律も佐野先生も同性愛者ですけど、受け攻めって決まってるんですか?」

凪咲からの問いかけに2人は顔を見合わせると、律は笑顔で何も言わずに圧をかけそれに気付いた佐野先生が溜め息をつくと話し出した。

「俺は最初から攻め。まず恋人が綺麗だし可愛いから…それにその、何というか…俺は最初から同性愛者じゃないんだよ…でも恋人は俺と会う前から同性愛者で他の人に開発されてた…」

「え!?そうなの!?」

「それで、寮で同室だったって話はしたろ?あいつ…俺がいない間にお尻弄っていて、それを見てから…まぁ、意識し出す様になって…」

だんだん顔が真っ赤になっていく佐野先生に凪咲も律もニヤニヤ笑っていると佐野先生は律を指差しながら「お前の番!」と回してしまった。

律は顎の下に手をやって少し悩んでから口を開いた。

「僕は…どちらでも。でも経験的には攻めかな?」

「例の元彼さん?」

「うん、彼…いじめている時が可愛かったから」

ニッコリ笑いながら伝えられた言葉に凪咲の体にブルっと寒気が来ると、凪咲は適当に用事を作って保健室から逃げ出した。

そんな凪咲に律と佐野先生は首を傾げるだけだった。


「律って、ちょっと…いや、かなりドSか…しかも攻め…」

小声で呟きながら廊下を歩く凪咲。

頭の中で色々考えていると……


『凪咲…ちゃんと言わないと、お仕置きだよ?それともされたくてわざとそうしてるのかな?』


いつもの余裕そうな顔でドSな発言をしてくる律が出てきて、すぐに凪咲は頭をブンブン横に振ってその妄想を消し去った。

(だ、大体!僕はドMじゃないし!律と恋人関係ではないから!!ないし!!それに僕には優しくしてくれるよね……多分)

自信が無くなる凪咲なのであった。

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