230. 到着
ふぁぁ、なんか微妙な目覚め。
絶対にこの時間に起きなきゃいけない睡眠って、もしかしたら妖精になってから初めてかもしれない。なんか寝てても心のどこかで起きないとって思いがあって安眠できなかったよ。
それはそうと、そろそろ着くハズだ。伸びをしてから鳥籠の外に出ると、ドラゴンに乗っているみんなは死屍累々だった。え、寝てないの?
私が起きたのに気づいたみんながバッとこっちを見てくる。え、こわ。もしかして通り過ぎたとか? 地図を出して確認してみる。まだ目的地まで距離はあるよね? うーん、なんかモニョるけどまぁ良いか。そろそろ減速しだしとこう。
目的地っぽい場所が見えてきた。特に何もない森の中だ。
え? ここじゃない? もっと向こう?
でもお酒マンが転移したのはここだと思うけど……。でもまぁ、ここじゃないんだろうね。じゃないと聖女さんの出身地が森の中になっちゃうもん。
もう1度スピードを出してさらに進む。と、突然聖女さんと
みんなが「わー!」とか「あー!」とか色々叫んで、通り過ぎた瞬間に「ああっ!?」とか「あぁ……」とか色々なリアクションがあがる。まぁまぁ、ちょっと失敗しちゃったけどこれも旅の醍醐味だって。
とりあえず目的地はわかった。地図にもマッピングされたし後はUターンしてさっきのところに行けば良いよね。
十分にスピードを落としてそろそろ旋回できるかなって頃合いになると、鳥籠メイドさんが何かブツブツ言い始めた。え、もしかしてすごい鬱憤たまってたりする? そんな呪詛みたいなの垂れ流されても……、って、うわー!?
突然鳥籠メイドさんが地上に向けて極太ビームをぶっぱなした! 鳥籠メイドさんの怒りが火を噴いたーッ!? ドラゴンの右旋回に合わせてビームが地上を薙ぎ払っていって、吹き飛んだ土が壁のように舞い上がり、さらにビームに合わせて北から南へ土壁が移動していく。
わ、しかも人いるじゃん! 極太ビームで渓谷みたいな縦長の穴が開いたすぐ先に、なんか人がいっぱいる。
あ、でも赤点だ。さっき目的地を通り過ぎてから地図を出しっぱなしにしてたから気付いたけど、鳥籠メイドさんがビームぶっぱした地上の人たちは赤点だった。つまり敵対関係だったりするのか。
基本この世界は平和っぽいんだけど、たまに思い出したように人殺しが平気で起きるからめちゃくちゃ怖いよ……。
とか思ってたら、ドラゴンの旋回の遠心力でロープで拘束してた人がふっとんでった。やば、ロープで縛ってたからあの人だけ踏ん張れなかったのか。間一髪でドラゴンの左後ろ足でロープ男のキャッチに成功する。あぶないあぶない。
想定外はあったけど、聖女さんの誘導でなんとか目的地らしい場所にたどり着けた。結構大きな街だ。街の中央に青いドーム屋根で白壁の宮殿がある。
いつもいる街はアーチ形状が宗教的な意味を持ってるっぽかったけど、ここはアーチ状のモノがそんなに見えないな。建物もなんか様式が違う感じがするね。そこここにドーム屋根が見えるし。後でここも観光しようっと。
聖女さんの指示で宮殿の前の広場に
無事着陸して周りを見ると、なんか武装した人たちに囲まれてる。いきなりドラゴンでお宅訪問はまずかったか。でもこっちには聖女さんと
そう思って聖女さんと
聖女妹カッコ仮さんが出てきたとたん、ドラゴンの上のみんなが一気にピリついた。銀髪ちゃんなんて思いっきり睨んでるじゃん。こわ。
銀髪ちゃんは聖女さんと結構仲が良かったと思ってたけど、妹さんとは仲が悪いのかな。聖女さんも
そう思って見てると聖女妹カッコ仮さんがヒステリックに喚きだした。
あー、ヒステリック系かー。たぶん相手すると疲れる系の人だ。それに悪意みたいなのをすっごい感じる。話も進んでない感じだし、ちょっと驚かせて黙ってもらおうかな。
「グオオオオオオオオオッ!」
――ドスッ
本邦初公開、ドラゴンの雄叫びです!
どうよ、カッコイイでしょ? 聖女妹カッコ仮もびっくりして黙り込んだし。
「ちょっと! 光の玉を落とすなんて馬鹿XXXXXX!?」
と、思ったら聖女妹カッコ仮がまた叫びだした。えー……。
たしかにドラゴンの口に咥えさせてた玉が地面に落ちちゃったけど、別に問題ないじゃん。壊れてないし、誰にも当たってないのに。もし壊れてもまた作れるよ。それとも地面の方の心配かな? 草地だから大丈夫かと思ったんだけど。
うーん、観光目的でついてきたけどちょっと後悔してきた。ついて来ない方が良かったかも……。あ、けどついてこないと帰りに困るか。
でもまぁ、私はただの付き添いだ。つもった話を律儀に聞く必要なんてないよね。みんなの用事が済むまで観光してこようかな。とりあえずみんなを地面に下ろしてっと……。
んじゃぁ、ばいばーい。夕方には戻ってくるよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます