第17話 両親の不在を利用しちゃう系妹
「それじゃあ、明日の夜まで帰らないから、兄妹仲良くしてね」
「え、なんだよそれ?」
とある土曜日の朝。朝早くから支度をしていたお父さんとお母さんは玄関先でそんな言葉を口にした。
「何って、夏美から聞いてないの?」
「き、聞いてないけど」
「まぁ、そうだよな。夏美がお前に話しかけるわけないもんな」
俺の返答を受けて、お父さんは呆れたような笑みを浮かべて笑っていた。それに釣られて母さんも笑っている。
いやいや、笑い事じゃないだろ。
「そんなに嫌そうな顔しないの。兄妹なんだから少しくらい仲良くしなさい」
「今日と明日は親戚の集まりがあってな。少し遠くである集まりだから、行くのは父さんと母さんだけだ。旅費も馬鹿にならんからな」
小さめの旅行鞄を持っていることから、そこに一日分の着替えが入っていることが窺える。
その事実を目の当たりにして、緊張なのか身の危険を感じてなのか、脈拍が速くなった気がした。
「夏美には言ってあったんだけどね。あ、お父さん、そろそろ出ないと時間がないかも」
「ああ、そうだったな。それじゃあ、兄妹仲良くするんだぞ」
「ちょっと、まーー」
俺が二人を静止させようとする伸ばした手を勘違いしたのか、二人は笑顔で手を振って玄関の扉を閉めた。外から掛けられた重い鍵の音が、静かに玄関に響いたのだった。
まてまて、明日の夜まで帰ってこない?
ていうことは、俺は妹と二人きりの週末を送るということか?
俺と一緒にいるだけでお股を濡らしたり、俺の匂いを嗅いで一人でしたり、俺のことを性的に見ている妹と二人きり?
え? そんな妹がいるわけがないだって?
いや、俺もそう思っていたんですよ。つい最近までは。でも、いたんですよ。
それも驚くくらい身近に。
「行ったみたいだね」
「な、夏美?」
突然の後ろからの声に驚いて振り向いてみると、部屋着姿の夏美が俺の背後に立っていた。
その顔は火照ったように赤く、うっとりとした顔をしていた。熱を帯びたような瞳が揺れて、まっすぐにこちらを見ていた。
「やっと、二人きりだね。お兄ちゃん」
夏美はお股の位置を調整するようにしながら、そんなことを口にした。
夏美が着ている鼠色のショートパンツにはすでにシミが形成されており、じんわりと濡れている様子がえっちで魅入ってしまいそうになる。いや無意識のうちに魅入っていたかもしれない。
「お、お兄ちゃんが私のお股を凝視してる。げ、玄関先でやられちゃうんだ、私。親がいなくなった瞬間に、玄関先で教われちゃうんだぁ。えへへっ、想像しただけでお股がぐちゅぐちゅになってきたぁ」
「襲わない、襲わないからな」
夏美は照れながら恥ずかしがるように体をくねらせていた。両手で頬の熱を感じながら、こちらに期待をするような視線を向けている。
いや、兄に対して向ける視線じゃないからな、それ。
「期待した目でこっちを見るな。おい、なんで今のタイミングでがっかりするんだよ」
見るからにしょぼくれた夏美は、こちらにじっとした目を向けて俺が襲わないことを非難しているようだった。
なんで妹を襲わないっていうだけで、そんな目で見られなくちゃならないんだよ。普通逆だろ。
……いや、普通はそんなことを考えないのが正解か。逆っていうのもおかしいな、うん。
「ていうか、お父さんとお母さんが家を空けること、夏美は知ってたんだって? なんで教えてくれなかったんだよ?」
「だって、知ってたらお兄ちゃん友達の家とかに逃げそうだし」
「確信犯かよ。ていうか、逃げるって何する気なんだ」
「んー、おうちデート」
夏美は含みのあるような表情で、そんな言葉を口にした。俺の反応を楽しむように観察すると、夏美は少しだけ無邪気な笑顔を浮かべた。
「で、でーと?」
「そう。お兄ちゃんはこれから妹とおうちデートするの」
『お兄ちゃん』と『妹』という単語を強調するような口調。自分達の関係性を強調させることで背徳感を高めたのか、夏美の瞳が揺れた気がした。
器用な奴だよ、そして変態だよ、夏美。
「もちろん、泊りでね」
「そりゃあ、同じ家に住んでるんだから泊まりにはなるだろうな」
「そうじゃないんだけどなぁ。まぁ、今はそれでいいかな」
夏美はくすっと小さく笑うと、俺の腕を引いて俺をリビングのソファーに座らせた。その隣には厚手のバスタオルのような物が置かれている。
何のためのものか質問しようと思ったのだが、それよりも早く夏美はテレビをつけて何かの準備をしていた。
「何してんだ?」
「とりあえず、映画でも観ようよ。おうちデートの定番みたいだし」
「まぁ、そういうことなら」
何をやられるのかと思ったが、案外普通だな。ただ一緒に映画を観るだけ。それなら、兄妹として何も問題はないだろう。
そんなことを考えながら、セッティングしてくれている夏美の後ろ姿を眺めていた。
夏美が屈むとショートパンツ越しに、お尻の形がはっきり見えてしまいそうなので俺は自然な感じで視線を外したのだった。
意識はしていないぞ? ただ見るべきじゃないと思っただけで。
「そ、そういえば、俺の腕に触れるくらいは特に問題ないんだな」
「え? 問題って?」
「いや、お股が濡れないのかなと、」
「お兄ちゃん、いつも私のお股のこと気にしてるの?」
「ち、違うからな! あくまで確認だ!」
セッティングを終えた夏美はこちらに振り返って、熱の帯びた瞳を揺らしていた。赤く染められた頬は羞恥の感情なのか、別の感情が高まった物なのか分からない。
「お兄ちゃんのえっち」
「~~っ!」
夏美は俺にからかうような笑みを向けてきた。大きな音を立てそうな俺の心臓を抑え込んでいると、夏美はバスタオルが引かれている箇所に腰を下ろした。
「大丈夫じゃないよ、今もすごいぐちゅぐちゅだから、」
「な、夏美?」
そして、夏美はそのまま俺の腕に抱きついてきた。腕を絡ませながら胸を押し当てている。
夏美は俺の反応を下から覗き込むと、嬉しそうな笑みを向けてきた。
「おうちデート、だからね」
照れるように顔を赤くした夏美は初心な少女のようで、初めてのデートに浮かれる乙女のようだった。
「~~っ!」
そうは言っても、俺にとってはただの妹。当然、乙女のような表情を向けられても何も思わない。
「すんすんっ、えへへ、お兄ちゃんの匂い」
「~~~~っ!」
匂いを嗅ごうとして強く胸を押し当てられても、耳元で囁くようにそんな事を言われても、なんとも思わないのだ。
だって、俺はお兄ちゃんだからな。
……お、お兄ちゃんだから。
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