第二十一話

そのまま【天馬】 に乗っていくわけにもいかないから、猫馬で賊を引き連れ皆仲良く行進していた。

街が見えて来たところで門番を勤める衛兵の男の人が目を見開いて駆け寄ってきた。


「な、何事だこれは!!!」


「途中で賊を捕まえたんです。 何しろ凄い規模だったので…」


「殿下も一緒だし本当なんだろう…。 おいおい、にしてもこの量か…。 って、これは指名手配されている奴らじゃねぇか?」


指名手配犯だったの!?

知らなかったんだけど?


「それは初耳だ…」


「殿下もかよ…」


「というより、今は冒険者だ。 殿下はやめてくれ」


「一応王都からの報告で殿下をこれより王族として扱えとの事でしたので…」


王都!?

姫様達は色々成功したってことだね。


「あいつら色々やらかしてくれたんだな」


「今度はこちらの番だ。 とのお言葉も預かっております。 それと、もっと功績をあげて王位継承権を奪い取れと」


「お、おい! お前本当に王子だったのか…? ペテン師じゃなく…?」


「本物だよ…誰にも最初は信じて貰えないけど」


盗賊以外は皆大爆笑。

僕は苦笑いしか出来ませんけど。

そして、盗賊の棟梁らしき男は下卑た笑みを浮かべ始めた。


「おい、どうした? この期に及んで…」


「てめぇらは気付かねぇのか? ずっと指名手配を逃れていてこんなにあっさり捕まるなんてよぉ。 おかしいだろ」


一瞬で空気が凍り付いた。

先程からの違和感はそれだったのか!


「俺達の真のボスは俺じゃねぇ。 液化の特殊体質持ちだ。 ここまで話たんだ。 少しは減刑してくれよ」


「それは不可能だ。 今までお前はやめろと言われてやめた事があったか?」


「ねぇな! だったら、俺らが無理矢理奴隷として働かせてたドワーフくれぇはどうにかしてくれ。 あいつらは悪さはしてねぇ」


「どうして悪人のお前らが気に掛ける?」


「俺達は元奴隷なんだよ」


奴隷は母さんから聞いていたが凄く嫌なものだった。

扱いも、その制度も。


「だからこそ、あいつらを悪徳商人から拉致って仕事を与えてたんだよ」


「「なっ!」」


「それではどっちが悪か分からないじゃないか…」


僕もそう思う。 でもそのボスって言う人は違う思惑がありそうだけど。


「だが、それを結局奴隷を上書きしたのは事実さ。 罪に問うなら罪に問いな」


『主様、不穏な気配がありますな』


それは感じている。

あの気配は一体?


「やべぇ、あいつが…あいつが来ちまった!!! 終わったよ。 俺達は終わっちまった!!!」


盗賊が不意にそう叫んだ。

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