せっかくモテ期が来たのに告られたら時が巻き戻るラブコメ
司尾文也
第1話 初めての告白
「────
肩の高さで切り揃えられた茶髪を揺らしながら、宝石のように輝くまん丸の瞳を微かに湿らせつつ、彼女は俺にそう言った。
俺のことを好きだと言う美少女が目の前にいる。なんて最高の気分なんだろう。
夕暮れ時の校舎裏、俺は一人の少女と向き合っていた。彼女の名前は
「私、一年生の頃からあなたのことが気になっていたんです。クラスは違ったけれどとても魅力的な殿方だと思っていました」
彼女の瑞々しい唇から零れ落ちるのは、俺への惜しみない賛辞。思わずニヤニヤしてしまいそうになるが、ここで鼻の下を伸ばしては台無しだ。グッと堪え、俺史上最高のキメ顔で受け止める。
「二年生になって、同じクラスになって自分の気持ちに確信が持てたんです。私はあなたのことが好き。どうしても、この気持ちをあなたに伝えたくて」
あぁ……なんかもう泣きそうだ。泣かないけど。ここまで来るのには、辛く長い道のりがあった。それを思うと、感動すら覚える。
なにせ俺は決してイケメンではない。ブサイクってこともないけど、顔面偏差値的には精々中の上。本来なら真殿に相手されるような男じゃない。
だから俺は勉強を頑張り、スポーツを頑張り、身だしなみを整え、ファッションセンスも……いや、そこはまだ勉強中だけど、とにかくモテるために様々な努力をしてきた。
モテたい。その一心だけでここまでやってきた。その結果がこれ! 間違いなくこの学校で一番、それどころかこの街で一番と言っても過言ではないほどの才媛であるところの真殿からの告白。
「あなたと一緒にいると、幸せな気持ちになるんです。だからどうか……私と……」
真殿が不安げな表情で返事を待っている。彼女ほどの美少女であっても、告白する時は心配になるものらしい。答えなんか一つしかないに決まっているのに。
「嬉しいよ。俺も────」
もちろん答えはイエスだ。告白を受ける。断る理由なんかない。あとはどれだけ格好良いセリフで応じられるかだけど…………。
「……?」
返事をしようとした瞬間、視界が急速に真っ暗になった。背後から頭でも殴られたみたいに意識が暗転し、闇の中に転がり込んでいく。
「あ……あれ?」
音が遠のいていく。光が遠のいていく。何も聞こえない、何も見えない。目の前の美少女は既に跡形もなく、広がるのは無限の闇だけ。そしてもこもこした感触。ふわふわした手触り……ってなんだこれ?
馴染み深いような……毎日のように感じているような……体を優しく包み込んでくれるみたいな、どこか安心できる感覚で……。
────気が付けば、俺は自分の部屋の、布団の中にいた。
(あとがき)
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