2023/09/21 嘘っぱち


 小学校から中学校にかけて、お調子者の子がクラス中に聞こえる大声で私のことをバカにして笑いを取るのが流行っていた。

 私の一挙手一投足が面白くて仕方がなかったらしい。ちょっとおちょくるだけでクラス中が笑ってくれるから、お手軽に優越感を得られたのであろう。

 誰一人として彼らを止めようとはしなかった。特にそれは授業中に起きていたことなのだから、教師たちだって誰が加害者なのか一目瞭然だったはずなのに、誰からも何のフォローもなかった。

 私は一人、黙って気にしないふりをしていた。

 

 どうせ記憶をなくすなら、こういう思い出こそ消えて欲しいのに。

 私を晒しものにし続けた者たちも、それを聞いて笑っていた者たちも、そんなことはすっかり忘れて、のうのうと生きているのだろう。

 悔しい。

 子ども時代をひたすら踏みつけられて過ごした人間が真っ当に成長なんかできる訳がないのに、踏みつけていた人間は健やかに成長できるのだ。恐らく。


 ──昔の嫌な記憶なんてもう気にならない、と思っていたけれど、久々に悲しくなってしまった。

 時間が解決してくれる、なんて嘘っぱちだ。

 せめて、芋づる式に他の嫌な記憶が発掘されないよう、気持ちを切り替えるべきだろう。

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