2023/08/15 翻訳アプリ


 バイト先には外国人観光客らしき人々がたまに訪れる。九割方、中国人で、九割方、英語が通じる。

 今日は英語が通じる中国人のご家族が四名、来店した。


 注文は指差しとかジェスチャーでどうとでもなる。

 ところが今回はラストオーダーの時間になってしまったので、「すみません、ラストオーダーのお時間なのですが、他にご注文はございますか?」と言わなければならなくなった。


 私はちょっと思案して、こう言った。


「Excuse me, do you have any other orders?」

「? ……Call?」

「?」

「?」


 私の文法がおかしいのか、私の発音が壊滅的なのか、向こうが分かっていないのか、どうすればいいのか、何も分からない。

 お客さんは翻訳アプリを起動して私に向けた。

「ほかにごちゅうもんはございますか」

 私ははっきりと日本語で発音した。

 すぐに中国語訳が出力される。

「No」

「OK, thank you」


 時代は英語ではなく、翻訳アプリなのである。

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