003 お約束どこいった!?
『いや、なんでよ!?』
お約束どこいった!?
魔法少女になるタイミングで、なんでこんなのになってるのよ!?
「えっ? えっ、ちょっと、なに、これ……?」
戸惑ってるのは少女も同じようで、あたしを襲ってきたのが嘘のようにうろたえている。
『さぁさぁ、さっそくやっちゃうのですよ~!』
場違いに明るい声。しかし、辺りを見回しても、どこにも声の主らしき相手はいない。
『ちょっと、なにがどうなってるわけ!?』
『なにって、変身してもらっただけですよ? 最初ですから、今回は僕が代わりに変呪<シフトワード>を唱えたのです。それよりも、今は目の前の敵を倒すのが先ですよ!』
『いや、倒すって、何をするつもり……?』
敵というのが目の前の魔法少女であるとは分かるが、いったいどうしろというのだ。そのそも、触手になった身体で何をすればいいのだろう。
『何のために変身したと思ってるんです! ほら、こうやって絡め取って……』
声に従うように両腕だった、つまりは服の袖から伸びていた触手が、その場でうろたえていた魔法少女に絡みついた。どうやら触手は私の身体らしく、無理やり腕を動かされているような感覚と、絡みついた魔法少女の柔らかな肌の感触が伝わってくる。
「なっ、なにこれ……? ひっ、いっ、いや、なんなのよ……!?」
恐慌状態に陥りもがく魔法少女だが、ぬめりを帯びた無数の触手に絡みつかれ、逃れることはできない。そんな彼女に追い討ちをかけるように、声が続ける。
『後は気持ちよくなるように、敏感なところを弄ってあげればいいのですよ』
「きゃあっ、んっ、そんなとこっ……」
魔法少女が声を上げた。しかし、それも当然だろう。その胸元や、スカートの中、首筋などを触手が這いまわっているのだから、声を上げるなというのは無理な話だ。
『無理やり動かすのは疲れます。では腕や指を動かす感じで、続きをお願いするのですよ』
『あぁ、もう! やればいいんでしょ、やれば! えっと、これでいいの? あっ!』
言われたとおり、腕や指と同じつもりでやってみると確かに触手が動いた。なんというか、まとめて数本分で腕、触手一本一本が指といった感じだ。
身体全体が触手な今の感覚は、腕が複数本、指が数十本あるという深く考えると気持ち悪くなるものだが、動かすことは不思議と難しくはない。
『ちょっと! 服溶けてきるけど、大丈夫なの……?』
触手から出る粘液で魔法少女の服が所々溶けてきている。服を溶かすだけならまだしも、身体まで溶かすようなら洒落にならない。まぁ今の段階でも十分酷いが……。
『魔力の服を溶かしてるだけなので大丈夫なのです。それよりもっと激しくするのですよ』
『なんだかしらないけど、大丈夫ならいいわわ。流石に殺人はいくらなんでも嫌だからね。まぁあっちにしてみれば全然よくないだろうけど……』
――ぐちゅ、ぐちゅ! じゅる、ぐちゅ! ぬちゃ、ぐちゃ!
卑猥な音をたて、触手が少女の身体をまさぐる。魔法少女服はほとんどが溶けてはだけ、ほぼ下着姿だ。やっているのが自分という事実が嫌になる。
「あんっ!? そこっ……! はぁぁ、んんっ!」
一際大きな、そして甘い嬌声を上がる。適当に動かしてたら下着に引っかかってその奥の、敏感なところを刺激してしまったようだ。正直、やってるこっちが恥ずかしい。
『……ていうか、なんでこんなことを?』
訳が分からない。触手に変身して魔法少女を触手責めとか、何の意味があるのだろうか。
『理由は後で、ってこんなこと言ってる場合じゃないです、口に触手を入れてください!』
『えっ、いきなりなんなのよ! というか口って、本気!? いくらなんでもそれは……』
『早くしてくださいなのです、このままじゃ間に合わなくなってしまうのですよ!』
「何なのよ、もう! 分かったわよ、入れればいいんでしょ、入れれば!」
焦った声に促され、言われたとおり魔法少女の口に触手を一本突っ込んだ瞬間、
「むうう――――っ! んんんんっ―――ッツ!」
言葉にならないような、一際大きな叫びを上げて、魔法少女の身体がビクンと跳ねた。
『なにがおこったの、それに大丈夫なの、これ?』
魔法少女は全身の力が抜けたようにぐったりしている。息はあるが、意識はないようだ。
『心配要りません、もう大丈夫なのです。下ろしてあげてくださいですよ』
『道路にそのままってのは少し気が引けるけど、分かったわ』
そもそもあたしだってこの娘に地面に押し倒されたのだし、ここは我慢してもらおう。
『ほら、見てください』
触手のせいで粘液塗れでほぼ溶けきっていた魔法少女服やその付随品らしき小物が光を放ったかと思うと、ちょっと大人しめな普通の洋服に変化していた。
『これって、変身が解けたってこと?』
『はい、そうなのです。終わりましたし、僕達も戻るのですよ』
そう声が言うと、今度はあたしの身体、服も触手も含めた全体が、光を放った。
「あっ、手……」
視線をおろすと、見慣れた両手があった。服も魔法少女服じゃない、着慣れた制服に替わっていた。顔を触ってみても細長い何かに変わってなどおらず、普通に顔の感触がある。
「元に、戻れたの?」
安堵感が押し寄せる、日常に戻れたのだと。今までのことは、全て夢なのかもしれない。
「そうよ、きっと夢だわ! そもそも、あんなことがあるわけないわよね……! まったく、こんな時間に白昼夢を見るなんて、あたし疲れてるのかな?」
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