7-33.天眼の理解を深める(3)
「って、まさか
「うん?」
「
「あー、今度の旅で
事も無げに笑う朧華だが、
「法眼に到って初めて分かったんだけどさ、今までの
法眼は、
「だから法眼が開いてから人に教えるのは貴女が初めてということになるんだよ、レギーナどの」
それは、レギーナにとってはこれ以上ない僥倖と言えよう。法眼とはすなわち
この得難い縁を得られたのもまた、アルベルトのおかげである。彼が若い時に朧華と出会い、そしてこの旅の途中で彼女の娘である
「…………アル、ありがとう」
「えっ、なんで俺?」
「……ふふ、何でもないわ」
思わず口をついた感謝に、理解が追いつかずポカンとするアルベルト。その顔がおかしくて、ついとぼけてしまったレギーナであった。
「……で、いつまでそんな姿でいるつもりなんだい娘々。もう戻ってもいいよ?」
レギーナとアルベルトのやり取りを微笑ましく見ていた朧華が、虎の姿で座り込んでいる銀麗に声をかけた。
それに対して銀麗は、虎の口で器用にため息をつきつつ答えたものである。
『せめて服を持ってきてくだされ母者。裸のまま戻るなどできるわけがありませぬ』
見ると、銀麗の足元に布切れがたくさん散らばっていた。彼女の衣服の残骸である。
なるほど、これでは確かに姿を戻せないはずである。真の姿を見せろと言われて銀麗が嫌そうにしたのも、実はこうなると分かっていたからなのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
レギーナのトレーニングは新たな段階に入った。ドゥリンダナを“開放”しつつ、
技量的なレベルダウンはもはや諦める他はない。落ちたレベルは上げればいいだけなのだから、地道で遠回りであっても再び腕を磨くだけだ。
(見える……!)
“開放”のさなかのレギーナの視界には、無造作に配置された木偶人形の合間に紛れるように立っているアルベルトやミカエラ、侍女のニカやミナー、それに戻ってきたばかりのナンディーモの姿がしっかり捉えられている。
木偶人形だけを斬り、彼らには一筋たりとも傷を負わせない。そういう訓練を、今彼女はやっている。
一陣の風が過ぎたあと、周囲の木偶人形だけが両断されバタバタと落ちてゆく。
「ううう〜
ドゥリンダナの継承直後の、全くコントロールできていなかった頃のレギーナを知っているミカエラは、根源的な恐怖を拭えずにいる。
「信じとうけん付き合っとるばってん、やっぱ慣れんばい。おお
「レギーナさんならきっと大丈夫だよ。今だって斬られなかったしね」
「もし万が一斬られた時のためにアルミタを待機させておりますので、皆様どうかご安心を」
「いや微塵も安心できないんですがねぇ!?」
訓練を見守る侍女アルターフが冷静に発言して、それにナンディーモが震え声で噛み付いている。まあ彼はレギーナが実際に“開放”して戦っている場面を見たこともなければ、先日の朧華の教導の際も見ていなかったのだから、いくら口で大丈夫だと言われても信じきれるものでもないだろう。
というか、斬られたが最後で即死するだけなのではなかろうか。
「心配せんでちゃ良かてナンディーさん。当たったら損ばってん、当たらんっちゃけん大丈夫て」
「いや
「大丈夫よ、見えてるから」
「あっ、レギーナさんお疲れさま」
「まだ疲れてはないけど、ありがとうアル。でもそうね、次からは立ってるだけじゃなくてみんなにバラバラに動いてもらおうかしら?」
「ううう嘘でしょおおお!?」
「んー、天眼の理解は順調に深まっているけれど、さすがに人を相手にそこまでさせるのはちょっと
やはり訓練を注視していた
「てか僕シャーム国から帰ってきたばっかりで、なんでこんな目に遭わないといけないんですかねえ!?」
「そらナンディーさんが帰ってくるタイミングの
「言ってる意味が!全っ然分からないんですけどねえ!?てかミカエラ様だって怖がってたでしょ今!」
「そうやったかね?憶えとらんばってん」
「うわこの人最低だ!」
ちなみにナンディーモが仕入れて持ち帰ったシャーム鋼の金塊ならぬ
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