スカルディセクト ∞ 復讐の海賊姫 ∞ 〜クロノセイバー外伝〜
鋼鉄の羽蛍
宇宙の海原行く復讐劇
禁忌の魔爪と海賊王女
〜星王国の落日〜
西暦2000年代は地球人類の歴史でも、稀に見る争乱を繰り返す呪われた時代である。蒼き世界を飲み込む呪いはやがて、史上最悪の巨大霊災
そして――
その地球を包んだ呪いは、いつしか
浸蝕が如実となった太陽系標準歴、ネオ
が――
それを亡き者にせんと戦乱の火種をバラ撒いたのは、近代で目覚ましい発展を遂げたアレッサ連合国家。星王国が
ヒュビネット戦役から
そこから全貌を把握した評議会は、対応策を掲げ和平を模索するための準備に取り掛かるのだが、対応も虚しく、和平交渉も平行線のまま四年と言う歳月が流れる。だが奇しくもその時間は、幸いにも生き延びた一人の少女を成長させるだけの、十分な時間は稼ぐ猶予を得る事となった。
マルス星王国落日から約四年後の頃。地球に対し、一年で二回の季節の巡りが訪れる、火星地上は二回目の秋の事。
物語は、テラフォーミングがおおよそ進む火星地上は辺境区画より始まった。
∞∞∞
安寧の日々とは突然破られるモノ。
その当時のお父様やお母様は、痛くそれを痛感しただろうと思う。
マルス星王国は、古代の
私達は、遥か古代に地球で栄華を築いたムー帝国の末裔である彼らと些か時代線を異とする、数千年後に相次いで広がったレムリア・アトランティス世代はアヌンナキの民と聞かされてた。
早い話、地球の人類もムーラ・カナ皇王国も、そして我らも同じ同胞であると言えた。
けれどその思想的な水準には極めて大きな格差が存在し、宇宙的な広がりと一個生命としての崇高な団結意思があるムーラ・カナ民族に比べ、我らは地球の思想に近しい感覚を有していたと教えられた。
それこそが……私達マルス星王国の絆を
「おとーさま、おかーさま! 怖いよ……悪い人達がおくにを――」
「いいかい、フレノイア! お前は必ず生き延びて、再びこの王国再建のために立ち上がりなさい! アレッサ連合などという慮外者に、国民を好き勝手されてはならない――」
「我らは誇り高き、レムリア・アトランティスはアヌンナキの末裔だ!」
太陽系でも最高度を誇ると呼び声高い、オリンパス山の
火星のテラフォーミングには、多くの企業に国家が資金提供に身を乗り出していたのだけど、その中でどれだけの勢力が民の安寧を考えての行動であったかは定かではない。少なくとも長く続く星王国史の中で、近年急成長を見ていたアレッサ連合はその範疇にはなかったはずだ。
そう……星王国の転落を目論んでいた勢力こそが、そのアレッサ連合国家そのものだったんだ。
「ユリセイル、後の事は頼みました。我が最愛の愛娘をどうか、慮外者の野望から守り抜いて下さい。」
「御意にございます、ローニア妃殿下! このユリセイル・ファー・ヴァリス……この身の全てを以って、姫殿下の御身を守り抜いてみせましょう!」
激しくなる砲撃音は星王国の至る所へと火炎の地獄を生み、国家の誇る守護機動兵団〈マーズ・ディフェンダー〉の巨大機動兵装が、一体……また一体と屠られる光景。戦神の国と呼ばれた星がその時まさに戦禍に包まれようとしていた。
「おとーさま……おかーさま! いやだよ、ユーリス……おとーさま達を助けて!」
「……今の我らにできることは、逃げ延びる事! あなたまで命を落としては、この火星は奴らの思うままに操られてしまいます! どうか……どうか私めとともに――」
私にとっての、あまりに多くのものを失ったあの日。その目に映っていたのは、お父様とお母様の覚悟宿す瞳。そして――
それを見殺しにせざるを得ない、ユリセイルという執事の悲痛に濡れた面持ちだけだった。
∞∞∞
「――レアちゃん! フレア・リベリアちゃん起きて! もう授業終わってるよ!」
「……ふぁ……えっ!? わ、私眠って――痛いっ!?」
「こらー、先生の受業をなんだと思ってるんだー? まあいいけどね……疲れてたんじゃない?フレアちゃん。」
秋の空。しかし地球圏ほどの自然に恵まれぬテラフォーミング中の大地には、雄大な自然が存在する訳でもなく、申し訳程度の秋を思わせる植生林が存在するのみ。けど、その植生林は元々地球圏でも四季に富む地の国家由来の、貴重な秋の風物詩だと聞いていた。
その植生林から紅葉が散りゆく季節の始め頃、火星圏フォーム区画辺境〈クセフ区画〉には、火星の未来を担う私達の通う女学院が存在する。
――フレーベル女学院――
古い部族の言葉で、地球の神話で言う火星を意味するその名が与えられた場所は、女学院として今も子供達を受け入れている場所。でも正確に言えば、そこはいつアレッサ連合の魔の手が及んでもおかしくはない、中立区を貫く勢力圏ど真ん中だったんだ。
「どーしたどーした? ふーたんまた、先生のお目玉だってぇ? 懲りないねぇ。」
「……もう、蒸し返さないで下さい! そしてふーたん呼びはやめて――わっ!」
「つれないのじゃ! ペクリカ達は、ふーたんの友人なのじゃ! なー?船無し船長さん!」
「誰が船無しじゃ……。ブチ壊すぞ。」
「ユリンちゃん、お口が乱暴。ここ女学院……はぁ。」
いつとも知れぬ不安の中でも、学業に励まなければと私はそこへ通い続ける毎日。そんな学園生活の放課後で、学友でも取り分け仲のいい友人が弄る様に、私の席へと集合していた。
女学院高等部の三期生が学ぶ教室一角。すでに他の生徒が部活動なり帰宅なりに移る一コマを、友人との団らんに費やす私は名をフレア・リベリアと呼称します。けれどそれは、偽りの名だったのだけど。
その私と睦まじく?放課後を過ごす片割れは、オレンジの髪をポニーに纏めた少女。とても女学生とは思えぬプロポーションも、やや背丈の小ささが玉にキズなお色気担当のユリン・グラシール。対する紫がかる蒼のお下げ少女は、まん丸メガネが意外とオシャレな、けれど出る所が不憫な語尾に特徴のある少女、ペクリカ・ラビッツ。
彼女達の会話でも分かる点で、なんとユリンの家系は宇宙海賊だとか。けど、昔話レベルのキナ臭さ漂う所はご愛嬌。船無し船長との弄りに反応する彼女曰く、現在は船さえ無いにも関わらず、実家で船長後継者に選ばれてるとか。
それってどうなの?と困惑さえ覚えるのだけど。
「二人とも、ふーたんが困ってる。それにもう下校時間……アレッサ連合の襲撃がいつあるか分からないんだから。」
「「でかいのが来た……(汗)。」」
そんな二人にもみくちゃにされる私への助け舟に訪れた、少し背丈があり、お胸の辺りに至っては二人が零した通りのデカイものをお持ちな、素敵な黒髪艷やかな友人の一人。こちらは、正統な家系に生まれた少女。ノルン・ヴェル・マーズハルトと呼称する彼女は、かつてマルス星王国のお抱えであった、名門マーズハルトと言う機動兵装乗り家の生まれ。彼女は幼い時から機動兵装乗りとしての鍛錬を受けて来ていて、世が世であれば星王国が誇る王国騎士団の機動兵装〈スターナイト・フレーム〉を駆るはずだったのです。
はずだった――
それは即ち、すでにその王国がアレッサ連合により侵略・解体された事を意味しています。
私達はそんな、連合の魔の手が伸びる事を恐れながらの日々を送っていたのでした。
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