第26話 ウォッカ
ウォッカは言わずと知れたロシアの魂。ロシア以外にも東欧、北欧、中欧で作られている。
無色透明で癖が少なく、非常にシンプルなスピリッツだ。
ウォッカ(Vodka)の名前はウィスキーと同じように、「アクアヴィテ」から「アクア」が抜け、「ヴィテ」の部分が訛って出来た。
ウォッカの作り方は、基本的には他のスピリッツと変わらない。
原料は大麦やライ麦、ジャガイモ、テンサイ(の搾りかす)など。
麦芽の酵素でこれらに含まれるデンプンを糖化→酵母で発酵→蒸留という流れだ。蒸留の際は連続蒸留で、限界濃度の96%もの高い純度のアルコールを作る。
これを水で薄めてから、糖類を少し加えてわずかな甘みを与え、その後は白樺の炭を使ったフィルターでろ過して瓶に詰めれば出来上がりとなる。
冗談ではなく、「水で薄めて、少しだけ味付けをしたアルコール」に近い。
メーカーによっては原材料や蒸留方法にこだわって一定の風味や癖を残したり、ハーブや果実で香り付けをしたフレーバーウォッカにしたりすることもある。
癖が少ないということで、ウォッカの生産国以外ではカクテルのベースに使われることも多い。
オレンジジュースと合わせたスクリュードライバーや、ジンジャーエールと合わせたモスコミュールは、飲み屋で目にしたり頼んだりした人も多いだろう。
もっとも本場であるロシアでは、ウォッカを水で割ったりカクテルにしたりするのは邪道で、ストレートで飲むのが正しいとみなされているようだ。さすがロシア。
瓶を冷凍庫に入れて(あるいは極寒の野外に置いたり、二重窓の間に置いたりして)半ば凍結した状態になったウォッカを、ショットグラスでグイっと行くシーンを映画などで見たことがある人もいるかもしれない。
ただし、近年のロシアでは健康志向が強まったために酒とたばこの消費量は減少傾向にあり、ウォッカの消費量も1999年には1人当たり15.2リットル/年であったのが、2005年には6.6リットル/年へと減少し、特に若い世代ではお酒自体を飲まないという人も増えている。
これからのロシアでは、かつての様にウォッカが禁止されて暴動が起きることはないだろう。
もう1つのウォッカ大国であるポーランドでは、水割りしたりカクテルにしたりすることは昔から多かったようだ。
ブランデーの項でも述べた「17世紀の危機」で寒冷化が始まる前までは、ポーランドはワインやビールがメインだったようだが、寒冷化とポーランド分割によるロシアの支配が始まると、ウォッカをストレートで飲む文化が定着した。
現代では再びビールが主軸になって、ポーランドでもウォッカの国内消費量は減少しているようだ。
それでも外国向けにカクテルベースとしての輸出が続いており、ボトルデザインも輸出向けを意識した物が増えているとのこと。
ポーランド産のウォッカで、個人的に印象に残っているのが「ズブロッカ」。
ハーブの「ズブロッカ草」を漬け込んだフレーバーウォッカで、ズブロッカの別名が「バイソングラス」であることからラベルにバイソンの絵が描かれている。
ズブロッカ草は桜餅の香りの元として知られる「クマリン」を含んでおり、日本人ならよく知っているあの香りを出す。
ボトルの中に細い草の茎が1本入っているだけだが、かなりはっきりとした香りがある。
興味を惹かれたので買ってみて、本当に知っている香りだと驚いた。
そして、全部飲むのに3か月ほどかかった。
最後の方には、草の上半分は乾燥して押し花の茎のようになっていた。
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