第9話 さらなるレベルアップ

 17年ぶりの異世界アウトブレイク。

 翌日から東京は2週間のロックダウンが発令された。

 俺たち高校3年生と自衛軍、民間の冒険者は監視体制(サーベイランス)を敷くことになった。

 まあ、俺の場合はレベル1だと思われているので街中の警護。

 都合のいいことに公園のスライム討伐を続ける事が命令された。


 街中は人も車も一切見かけない。

 完全ロックダウン。

 全ての物流も停止している。

 各家庭への配給は民間の冒険者の役割だ。


 俺の持っている道具袋は10個ぐらいのアイテムしか入らない。

 自衛軍や上位の冒険者は100個や1000個入る道具袋を持っているらしい。

 レアなものだと中に広大な空間が広がるものもあるらしい。

 いつかは俺も手にいれたい。


「もっと効率よくレベルアップする方法は無いだろうか?」


 誰もいない公園の一角。

 金網で囲まれた中に発生するスライムは1日50体ほど。

 2日でレベルが1上がる程度だ。

 これでも十分早いのだが、ベルゼブブの影がチラつく。

 あんな化け物がいつ襲ってくるかわからない。

 せめて今の倍まではレベルアップしたい。


 十日間ほど毎日スライムを討伐しレベル107まであがった。

 今までの劇的なレベルアップ速度から考えると、どうしてもまどろっこしい。


「そうだ。『びっくりダンジョン』の1フロアへ行ってみよう」


 ダンジョンの1フロアはスライムの生息地と化している。

 広大なフロアに巣食うスライムを全て討伐。

 50体を倒した。

 

「よし! これならもっとレベルアップできるぞ!」


 午前中ダンジョンの1フロアでスライムを50体倒す。

 午後、公園のスライムを50体倒す。

 十日ほどが経過しレベル115まで上がった。

 レベル1の時は1体倒せばレベル2になっていたが、レベル115となると次のレベルまで116体倒す必要があり、徐々にレベルアップペースが落ちてきた。


 リストリクトでレベル1の状態で毎日6時間ほどかかっていたが、そのうちコツがわかってきて同じレベル1のままでスライム50体討伐するのに1時間かからなくなった。

 時間に余裕が出来ると考えず時間が多くなる。


「うーん。既にレベル100は越えたものの、もっとスピードアップしたい。どうにかならないものか」


 レベル1で|スライムの掃除屋(スライムクリーナー)なんて呼ばれてた頃が嘘みたいだ。

 だが、人間欲が出てしまうものだ。仕方ない。


 30体ほどフロアのスライムを倒した所で、ダンジョンに誰か入ってくる気配がした。


(ま、まずい)


 とっさに入り口横の岩に身を隠す。

 

(ミキだ!)


 ミキがなぜかダンジョンへとやってきた。


「よし! 私も単独で戦えるように訓練しなきゃ」


 ミキはそう言うとフロアのスライムを討伐しはじめた。

 ミキのレベルは20ほど、50体のスライムを一瞬にして討伐。

 ミキはスライムを倒しおわるとダンジョンから出ていった。

 どうやら無理しないようにスライムで訓練しているようだ。


「あれ? おかしいぞ」


 俺がスライムを30体ほど倒していたのに、ミキは50体倒した。


「どういうことだ?」


 もしかして……。


 俺はダンジョンを出ると中に入りなおした。

 

「うおおおおお! きたあああああ!」 


 見渡すとフロアにはスライムが50体居た。

 このダンジョン、出入りすると魔物が復活する仕様のようだ。

 これでスライム狩りを何度も出来る。


 俺はうれしくて1日中ダンジョンを出入りしスライムを討伐した。

 1日の討伐数1000体をこえた。

 一気にレベル123までアップ。


「うおおお! こいつはすげえええ!」


 俺は毎日スライム討伐に没頭した。

 レベルがおもしろいようにあがってゆく。

 2日目、レベル131。

 3日目、レベル138。

 4日目、5日目、6日目……。

 レベルアップ、レベルアップ、レベルアップ……。


 10日がたったとき、頭の中で電子音が響いた。


「レベル200に到達したため『リストリクト』の制限効果をコントロール出来るようになりました」


 ついにレベル200にまで達した。

 そして、スキルが進化した?

 コントロール出来るとは、どういうことだ?


 ステータスを意識すると視界の左上に一覧が表示された。



――――――――――――――――――――



 天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:200


 HP:39693/39693 MP:36087/36087


 攻撃力:180


 耐久力:210


 速 度:220


 知 性:180


 精神力:139


 幸 運:150


 スキル:リストリクト 任意のレベルに制限するスキル

      リリース   リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する


――――――――――――――――――――



 「任意のレベルに制限するスキル」とある。

 よし、さっそく使ってみよう。


「リストリクト! レベル2(ツー)」


 こんな感じでどうだろう?



――――――――――――――――――――



 天野(あまの) ヒサシ 17歳 男 レベル:2(リストリクト効果発動中)


 HP:14/14 MP:14/14


 攻撃力:2


 耐久力:2


 速 度:2


 知 性:2


 精神力:2


 幸 運:2


 スキル:リストリクト 任意のレベルに制限するスキル

      リリース   リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する


――――――――――――――――――――



「おお!」


 みごとにレベルが2になっている。

 これなら常識的な範囲のレベルで戦えば周りにも怪しまれないはずだ。

 レベル100ごえ、ましてレベル200なんて、日本どころか外国の工作員につかまって人体実験されるんじゃないかというレベルだ。

 いくら俺が冒険者ステータス持ちのレベル200でも軍隊や核兵器まで登場したら抗えないだろう。


「うわっ! またか!」


 突然、頭の中で警報が鳴り響いた。

 体がびくっと震えた。

 警報音は心臓によくない。


「サーベイランス招集! アラート発令! アウトブレイク! アウトブレイク!」


 およそ一ヶ月ぶりか。

 視界のマップには東京湾が示されている。

 どういうことだ?


「ワガハイは建御雷神(たけみかづちのかみ)である! 異世界アウトブレイク発生! 区立南池袋高校第三学年生は、校庭へ集まれ!」


 将軍からの招集が、かかった。

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