高校生は世界転換を旅する

旭野ヒカリ

始まりの世界〜No.0/夢の世界〜No.1

 いつもと変わらない朝。いつも通りに朝食を食べ、学校へと向かう。私の日常ループはいつもと変わらない。

「じゃあ、行ってきます!」

家を出る。学校までの道は長いものだ。いつも通りの道すじを光澤凪枝、高校2年生の女子が通る。本当に何も変わらない日常だ。私はいつも通り学校に着くととある事をする。それは何かというと、日課ノートを書く。朝何があったかとか、その他諸々書いている。まぁ、いわゆる日記みたいな感じだ。私はクラスではまぁ、友達はいる方だと思う。あと、クラスで1人とても気になる人がいて…あ、恋愛対象とかそう言うのじゃないから!どう言うことで気になってるかっていうと、なんか特殊なオーラを放っていると言うことだ。実は、日課ノートにはこの子のこともしっかり書いている。あまりにも気になりすぎるから。色々と特殊すぎる子だけど、影が薄いのか、あまり名前が知られていない。同じクラスなのに不思議だ。一応名前は大富喜久という。私はこの日、いつも以上にこの子のことが気になっていた。何故かと言うと、いつもは口も動かそうとしないこの子が独り言だか知らないけど、ぶつぶつと喋っているからである。なんだろう?すごく気になる。そして、あまりにも欲が抑えきれなかった私は一線を超えた行動をしてしまう。盗聴だ。機械いじりの好きだった私は、偶然、バッグに入っていた盗聴器を取り出して、こっそりと彼の机の裏に貼った。そうして、盗聴をしてしまった。この子が話していた内容は呪文のようだった。ずっと聴いていると、突然、辺りが黒くなっていった。目は開けているのに何も見えない。やっと視界が見えた時には全く別の場所にいた。

「どこなの、ここ…」

すると、向こう側から男が歩いてきた。そう、その男こそが私が盗聴をした「大富喜久」であった。

「聴いてしまったようだね。光澤さん。あれだけ静かにしていれば誰にも聞かれないと思ってたんだけど…まさか、君に盗聴されるとはね。その手は見破れなかったね。」

彼は、そう言うと笑いながら、私に近づいてきた。そして、圧迫した声で

「何故、聴いてしまったんだ」

と言ってきた。私は

「なんか1人でぶつぶつ言ってたから気になってただけだよ。」

と答えたら、その子はため息をつき、

「はぁ、だから盗聴してしまったんだね。聴かれまいと思ってあれだけ静かにしていたのに。」

私の一線を超えた行動が招いてしまった結果だ。

「君はもう後悔しなければならない。君、ここがどこだかわかるかい?そう、ここは異世界「ダークホールNo.0」という世界なんだよ。」

「後悔する要素なんかないじゃん。それよりもその、ダークなんとかとかいう世界から抜け出すにはどうすればいいの?」

「ここからが重要だからよく聴いて欲しい。君はもう、この世界から出られない。一生。ここで最期を迎えるしかないんだよ。」

私はその事を聴き、膝から崩れ落ちた。

「え…てことは、もう友達とも話せないってこと?そんなのいや!いや!」

「もう遅いんだよ。盗聴なんかしたからこんなことになってしまったんだ。」

盗聴なんかしなければこんなことにならないで済んだのだ。後悔してもしきれない。

「あと、この世界はもうすぐ消滅する。それまでに次の世界へと繋がるところへ行かなければ君は、跡形もなく消えてしまうだろう。どうするんだよ?これから」

私はその一言も受け止められなかった。後悔ばかりしていた。しかし、その時の彼からの一言を聞きとある決心をしたのである。

「だが、一ついいことを教えてあげよう。各世界で旅をしてその世界に名を刻むことによって、次の世界へ続く道を光が導いてくれるだろう。各世界共に世界は現実世界で言うと10日で消滅してしまう。それまでにその世界で活躍をして名を刻め。自分が言えるのはこれだけだ。」

「私、旅するよ。その世界で名を刻むことで自分もいい最期を迎えれるし色々な人も安心すると思う。だから、人の為にも旅をするよ。」

そうだ。この時私は旅をする決意をしたのだ。

「ひとつ聞きたいんだけど、現実世界での私ってどうなってるの?」

「そうだね、現実世界では、君はもう死んでいる。簡単に言うとここは別世界。現実世界と時間軸が全く違う。俺は、現実世界とこの世界と行き来できる能力があるから、死んではいないけど、普通能力の君は現実だともう死んでいるよ。」

自分は現実世界では死んでいるらしい。もう、今までの話が、衝撃的すぎて、このような内容も普通に受け止めてしまう。

「まぁ、そんな感じで、君は旅する決意をした。早速今日から旅を始めてもらう。もうすぐこの世界は無くなるが、君はこの先の世界へ繋がる道を進めば次の世界へ行ける。俺はここまでしか案内できないが、ここから先も出会いやぶつかることもある。だけど、しっかり乗り越えてどうかいい最期を迎えてほしい。さぁ、行って来い!」

と言うと、私は彼に背中を押され、次の世界へ繋がる道を進んだ。


「夢の世界〜No. 1」

 どうやら前の世界はさっき消滅したらしい。一方私は次の世界、No. 1の世界へと着いた。さっきの世界がNo.0だったそうだ。世界へ入ると賑やかな街並みが並ぶ。私はまだ何も分かっていないから、街の人にここがどこなのか聞いた。

「え、ここがどこかも知らないで、ここに来たのか?それはすごいなぁ、ここは賑わいの街、ユメビアだよ。ここはこの地域ではでかい方だから色々な人達が集まるんだ。」

なるほど、どうやらここは商業街らしい。私はどこに何があるか分かっていない。そりゃあ、自分は別世界から来てるから。まぁ、誰も信じてくれるとは思わないけどね。私はこの街に何があるか色々と調べた。どうやら、この街には大体のものは揃うらしい。私は特に何も買わなかった。まあ、ここで買わなくて良いと思っていいだろう。その後私は興味本位で武器屋を見に行った。

「いらっしゃい!お嬢ちゃん。この街では珍しい感じだな。名前はなんて言うんだ?」

「光澤凪枝と言います。年齢は17です。」

普通に自己紹介をしたつもりだったけど、武器屋さんはとても不思議そうな顔をした。

「珍しい名前だな。大体この街の住人の名前は4文字くらいで済むんだがな。あ、名乗り遅れたが俺の名前はトルミノだ。見ての通りこの街で武器の売買をしている。ところで、何故凪枝ちゃんは、この店に来てくれたのかな?」

「ちょっと興味本位で入りました。欲しいものがあるとかは特になくて。」

「ていうか、君!武器を持っていないのかね?この街で生きていくには武器は必須だぞ。いつ何が起こるかわからんからね。」

私はこのまま武器がなくても良いと思っていた。まぁ、武器がなくても良いよね。

「いえ、自分は武器がなくても大丈夫です。お気遣いありがとうございます。それでは、先を急ぐので失礼します。お話聞かせていただきありがとうございました。」

「こちらこそありがとな。達者でな。」

この会話を交わした後、私は店を後にした。しかし、さっき見ていた街の様子とは全く違うことに気がついた。街の人がざわついている。

「ねえねえ、獣山でまた恐獣が出たんだってね。いや、この街にだけは来てほしくないものだわ。」

とか言う会話が聞こえてくる。獣山?恐獣?よくわからない単語も聞こえてくる。私は咄嗟に街の人に聞いてみた。

「あぁ、恐獣って言うのは、この街の住民を狙っている獣のことさ。そいつに食べられたら、死ぬぞ。そして、今そいつの目撃情報があって、目撃されたのが、獣山ってわけだ。」

「ところで獣山ってどこにあるんですか?」

と私が聞くと街の人は指で示して、

「あれだよ。あれが獣山だ。興味本位で近づくと生きて帰って来れるか分かんないぞ。」

と言った。ここからそう遠くはなさそうだ。まぁ、私は怖くて近づこうと思っても近づけないけど、興味心が勝ってしまい、行く事を決意してしまった。誰にも言わずに。

「あぁ、本当に来ちゃったな…」

私は、今獣山の入り口まで来てしまった。本当に来てしまった。

「まぁ、様子見て帰るだけだから大丈夫だよね…」

本当にただの興味本意だ。本当に。本当に…

しばらく進んでいると、遠くの方から声が聞こえた。

「タ…ケテ…」

その声がよく聞こえなくて、もう一度耳を傾けると

「たすけて…」

なんと、小さい男の子の声がしたのだ。私は見捨てるわけにも行かず、声の方へと向かった。

声のする方へ向かっていると、突然、自分の前を何者かが横切った。

「今、なんか通ったような…」

私がそんな事を思っていると、前から何者かが襲ってきた。

「わあぁぁ!」

私はその時すごく焦っていた。だって、急に何者かが襲ってくるんだよ?誰だって怖いはずだよね。私はなんとか逃げ切ろうとした。そして子供の元に着いた途端、襲ってくるものがいなくなった。そして子供を助けた。その後帰ろうとしたら、それを狙ってだろうか、さっき襲ってきたやつが、またもや姿を現し、こちら側に向かってくる。私は特に武器とか持っていなかったから、何もできず、子供だけでも無事でと思い、咄嗟に子供を庇った。そこで私は刺されたのだろう。そこからの記憶はなかった。

 目を覚まして、起きたら目の前に武器屋のトルミノがいた。

「おい、気が付いたか。お前が山で気を失ってたところを子供が助けてくれたんだ。」

「え、その子供は今どこへ?」

「あ、その子だったらすぐそこに」

私はトルミノが指を指した方向をみた。確かにそこには男の子の姿が。

「あ、お姉ちゃん!やっと起きたんだ。本当安心したよ。あの時は本当にありがとう!」

私は何故お礼を言われてるのか分からなかった。あの時、焦りで記憶が朦朧としていたからだ。

「でね、あの山のことなんだけど、恐獣が出たって噂あったらしいけど、あれに関してはここのおじさんが倒してくれたんだよね。」

「一体トルミノさんは何者なんですか?」

「俺は普通の商人だよ。少しくらいは戦闘もできるけどな。」

いやいや、あれだけの強者を倒せてる時点でもう普通の商人とかではないよね。

「もう、あの場所は大丈夫。だが、君が意識を失ってる間に他の場所にも目撃情報が出た。その場所はユメビア湖だ。この街と同じ名前の。どうやらそこに出ている恐獣はその恐獣のボスっぽいんだよ。だから、この俺でも倒すことは厳しい。だから様子を見るしかこの街にはできないんだ。」

私はこの時思い浮かんだ。私が倒せば良いと。私は何を考えているんだろう。一回やられてるのに。

「私が倒しに行きます。」

「何を言っているんだ!君はあいつらにやられて死ぬところだったんだぞ。そいつらに反撃をしようだなんて、無茶にも程があるぞ。俺でもかなり力を出してやっと倒せたぐらいだからな。」

「私も無茶なのは分かっています。だけど、この街を救えるのは私しかいないと個人的に思ってるんです。だから、私が行きます。」

「本当に行ったどころで何も出来ずに死ぬことだってあるんだぞ。」

と、トルミノが反論してるところに割って入ってきたのはさっきの男の子だった。

「おじさん、良いんじゃない?今自分で救うって言ってる人が街にいる?いないよね。だから、この人に街を託しても良いんじゃないかな?」

「なるほど、分かった。お前に託すよ。この街を。」

トルミノはついに自分に街の運命を託してくれた。この時の私は怖い気持ちよりもむしろ倒してやるという気持ちの方が強かったのだ。

「そうそう、倒しに行くんだったら武器が必要だよな。お前、手ぶらでよくあいつに立ち向かったな。ほら、これあげるよ。」

トルミノから渡されたのはステッキみたいなものだ。

「これは、夢の杖。この街に代々伝わってきたステッキだ。これだったらあいつらも倒せるだろうな。そいえばこの街について言ってなかったな。この街は別名「夢の街」と呼ばれてて、この街で見た夢は全て現実になると言われてるんだ。だからこんな感じで夢という言葉がたくさんある。」

私はやっと、この世界が何故夢の世界であるかということがわかった。だが、旅で関係したのは夢と名前についているこの杖ぐらいだ。

「さぁ、凪枝!お前が今日からこの街の勇者だ。行ってこい!」

と言われ、私はそのボスと思われている恐獣がいる、ユメビア湖に向かった。

「ここから約8キロ北西、だね。」

私は長い道のりをひたすら歩いた。ラスボスに立ち向かうかのように。まぁ、本当に倒しに行くんだけどね。

 そして私は、湖に着いた。今の所何も起こっている気配がない。

「今の所何も起こってはいないみたいだね。あれ?なんだろう…」

私はとあるものに気づいた。そう、湖に不審に浮いている浮き輪。そこには小さな子供が。あれ?人の気配なんてしないのに人がいるとは。

この時もう察してしまったのだ。あれが姿を変えた恐獣であると言う事を。あ!こっちを向いてきた!案の定、恐獣だった。

「やはり、恐獣だったか。これはやるしかないね。」

私は、そいつに斬りかかった。そいつは私が斬ったら溶けながら斬れていった。どうやらこの杖は熱を帯びているらしいが、私には何も感じない。おそらく恐獣しか感じない熱なのだろう。もう終わりかと思っていたらまた奥から出てきた。

「しつこいなあ。」

私は先ほどと同様に斬った。これを何度か繰り返し、やっと、倒した。

「あとはボスらしき恐獣だけか。」

まだ、私の前には姿を現していない。

「出てきて良いんだよ。恐獣さん。」

煽り気味で待っていると、本当に姿を現した。

「でか…こいつを倒すとか私言ってたのか。」

そいつのデカさは私よりも遥かに大きく、見上げないと顔が見えない。だが、私は引いたりしない。

「待ってました。恐獣さん。残念ながらあなたを倒さなければならないので斬らせていただきます!」

そう言うと、私は大恐獣に斬りかかった。しかし、相手はびくともしない。

「え、何も効いていないの!?こいつ何者だよ。」

恐獣が攻撃体制に入った。私がもう無理だと思っていたら、

「そのお姉さんに手を出すんじゃない!」

何かが私の目の前を通り、恐獣を斬った。恐獣はひるんでいる。

「さぁ、今だ!とどめを刺せ!」

と言われ、私は

「さようなら!!」

恐獣は斬溶(とどめ)をさされて消えた。私は本当に倒したんだ。

「倒したの?あのドラゴンみたいな奴を。」

そこに現れたのは武器屋で会った男の子だった。

「無事で良かった!本当に倒してくれたんだね!」

「もしかして、さっき恐獣をひるませてくれたのって…?」

「あ、恥ずかしながら僕だよ。僕一応戦うことはできるんだ。少しの技しか使えないけどね。」

私たちは無事に街に帰ることができた。

「本当に倒したのか!?マジで感謝だよ!」

トルミノだけではなく街の人にも祝福を受けた。だが、この世界が消滅してしまうのもあと7日、1週間しかない。なんとかしなければ!

「よろしければで良いんですが、私を      にしてもらえますか?」

「よし!君はこの街の恩人だからな!もちろん大歓迎だよ!」

この街で何になったかが気になったら夢外伝を見てね。


そして7日後。私はこの世界を去る時が来た。

「本当に今までありがとな!本当に感謝してる!」

「いえいえ、私もできる事をやっただけですよ。」

などと街の人たちと会話を交わした。

「それではそろそろ行きます。みなさん本当にありがとうございました!」

そして、私はこの「夢の世界」を去った。次の世界へ着くと後ろ側に見えた、世界が消滅した。この時初めて泣いた。もう戻れないと思って。だけど、これから先もまだまだ長い。私はひたすら前へと進んでいった。

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