溺愛したい意地悪な姉は難攻不落です!?
MURASAKI
プロローグ
リンゴーン・リンゴーン……
教会の
喜びの涙を浮かべながら笑うその顔は幸せで溢れていて、こっちまでつられて涙ぐんでしまう。
仲の良い友人の結婚式は、どうしてこんなに感動するんだろう?
やっぱり、がっつり自分がプランナーとして関わっていて緊張しまくってる結婚式より、参加するだけの気楽なお式の方がリラックスしていいのかな。
私の右前あたりに、若い女の子が沢山群がってブーケトスを待ちわびているのが見える。独身女性は前の方へ集合するようにとアナウンスが流れて、本当なら私も行くべきなのだろうけど……流石に行き遅れともなると、そういった場に自らしゃしゃり出ることは申し訳ないし、ちょっと恥ずかしいのよね。
転生前の世界なら、まだまだ私はひよっこの部類だろうけど……この世界じゃ19歳で結婚の決まった
シンデレラの世界で「意地悪な姉」に転生した私、
私ドリゼラを含め、お
実際に
私が楽しんでいなくちゃ、誰も幸せになんてできないじゃない?
「キャーッ!」
私が自分語りに浸っている間に、ブーケトスが始まったみたい。
実は、ブーケトスをこの世界で庶民レベルに広めたのは、何を隠そう私だ。貴族の間でのみ細々と継承されていると聞いて、これはチャンスだと思った。
最初は大切な
私が花を出す魔法を使えはするんだけど、花の魔法はすぐに効果が切れてしまうから……その代わりに考えたのが、安定して生花を供給できる独自ルートの開拓だったってわけ。
やっぱり、私はこの世界で商売をする運命なのよ!
鼻息荒く脳内でガッツポーズをしたとき、周りの空気がちょっとおかしなことに気が付いた。
「あああ!」
「キャー! 何でそっちに行くの?」
ブーケトスで集まったお嬢様たちの悲痛な声が聞こえる。ああ、なんだかちょっぴり
エラの時も、ブーケが強風であらぬ方向に飛んで行って、護衛で参加されていた騎士団長のサミュエル様の腕にすぽっと納まったのよね。
驚いて目を白黒させているサミュエル様の表情ったら……あれはあれで面白かったけど、そう言えばあのブーケって、最終的に誰に渡ったんだっけ?
「あ、危ない!」
私はその声に反応して、勝手に身体が動いた。おかげで周囲が騒然となってしまうなんて思わなかったのよ。
ブーケを追って倒れかけた女の子と一緒に、あろうことかブーケまでキャッチしてしまった……。
私が男性だったなら、お嬢さんを救ったオトコマエの行動に黄色い歓声が上がって耳が痛かったんだろうけど……そんなこともなく、ただの行き遅れの私がブーケを手にしてしまったことで、その手と私の顔に交互で無言の視線が集中した。
ゆ・許してぇ、そんな目で見るのはやめて~! 事故よ、これは事故なのよ~!
半泣きで壇上に居る結婚した友人・エイダの顔を見上げると、それはそれは綺麗な笑顔で私の方を見ている。
これはもしかしなくても、は・謀られた!?
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