第114話 可哀そうな存在である
すると、私の技を喰らった討伐対象の魔術師はコンクリートの地面を数回バウンドした後数メートル転がって止まる。
「グフッ……お前……何者なんだよ……っ!? お前みたいな魔術師なんか今まで見たことも無ければ聞いた事も無い……にも関わらずお前の魔術の威力は間違いなくAランクのそれで、基礎もしっかりしている……。 自己流ではなく、魔術師としてちゃんと教育を受けているという事は魔術師協会に所属しているAランク以上の魔術師であるはずなのに……この私が顔も名前も知らないなどありえない……っ!!」
そして敵の魔術師は私に魔術を撃たれた脇腹を片手で抑え、ふらつきながらもなんとか立ち上がって来ると、私の顔をまじまじと眺めた後にそんな事を言うではないか。
「そうでしょうね。 あなたのような汚い手口で今の魔術師ランクを維持している人は自分の技術を上げる事よりも、より簡単な方法、例えば学生で目が出そうな人物かつ自分でも勝てそうな人を襲う為に調べている筈ですものね……。 一度簡単な手で栄光を手に入れてしまったら努力するのが馬鹿らしいですもんね? だから私はBランクでプロの魔術師になる事を諦めたんですもの……」
「……クソがっ」
なので私はなんで私が誰か分からない、見たことも聞いた事も無いか懇切丁寧に教えてやると、敵の魔術師は言い返す事も出来ずにただ悪態を吐く。
前回魔術師として復帰できない身体にしてあげた魔術師もコイツと同じような反応だったことを思い出して少しだけおかしくなる。
結局こいつらは実力に見合った努力をしてこず、それが例え他人の人生を壊すような行為であっても楽な方へと逃げる事を選んでしまう程の逃げ癖がついているという事は、実際に自分が狩られる立場になった時に自分自身を支えてきた芯が無いのでこうして悪態をつくことしか出来ないのであろう。
それが実際にその通りの事を言われているのだから猶更言い返す事も、やり返す事も出来ないというのが、目の前の魔術師が今まで楽でかつ最低な方法で積み上げてきた物なのだろう。
その積み上げてきた物は中身が無い側だけの物であるが故に、ほんの少しの強風が吹いただけで崩れてしまう。 そして本人が何よりもその事を知っているからこそその強風が吹く前に潰しにかかるという悪循環が出来上がってしまったのであろう。
可哀そうな存在である。
そして、こんな可愛そうな存在である魔術師に私のお姉ちゃんは殺されたんだと思うと猶更腹が立ってくる。
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ドラゴンノベルコンテストもラストスパートへ入りました(*‘ω‘ *)ノ
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