第111話 そして私は理解した
医師から聞いた死因はスレットとの戦闘によって負傷という事であったのだが、実際にみたお姉ちゃんはどう考えてもスレットの攻撃ではなく、味方のAランク魔術師からの攻撃であることは明らかであった。
そして、当時千葉のランキングで一位だったお姉ちゃんが死亡した事によって、その日お姉ちゃんと一緒にスレット討伐支援に向かったパーティーメンバーの一人が一位となった事を私は知った。
その一位となった魔術師が扱う魔術行使用媒体から放たれる攻撃魔術は、お姉ちゃんの外傷と一致するような魔術であったのだ。
でも、たまたまかもしれない。
もしかしたらそうしなければ、お姉ちゃんを攻撃しなければならなかった理由があったのかもしれない。
その場合はお姉ちゃんの事を攻撃しなければならない状況に追い込まれた魔術師もまた被害者なのかもしれない。
全て私の憶測でしかなく『そうあって欲しい』という願望である事は私自身理解していた。
しかしながら、そう思わなければお姉ちゃんは無駄死にであり、そうしないと私自身受け入れる事ができなかった。
そんな心の闇を抱えながら私は晴れて高校生となり、Aランク魔術師の試験として軍所属の魔術師と一緒にスレットを討伐に同行する事となった。
これで無事問題なく帰還すれば私は憧れていたお姉ちゃんと同じAランクとなるのだ。
そう思うと感無量というか、言葉では説明しづらい感情が胸の奥底から湧きあがってきて、私は涙を一筋、知らず知らずのうちに流していた。
そんなこんなで軍所属の魔術師が私達パーティーメンバーの前に現れ一人一人紹介されていくのだが、忘れもしない、あの日私のお姉ちゃんを攻撃したであろう魔術師がそこにいた。
どうか私がお姉ちゃんの妹である美里だと事が気付かれませんように。
そう強く願いながら私はその魔術師率いるパーティーと同行するのだが、その魔術師は私の事を幸か不幸かお姉ちゃんの妹である事に気付いていないようでこんな事を言ってきた。
『昔目障りな魔術師が一人いて、そいつが死んでくれたお陰で今の私がある。 それにしてもソイツの最後が傑作で、あっけなく死んでやんのよっ』
そいつはそう面白おかしく言うと、ゲラゲラと笑い始める。
そして私は理解した。
コイツがランキングでトップになる為だけに私のお姉ちゃんを殺したんだという事に。
そのスレット討伐試験が終わった後、私は魔術師としての未来を捨て、私のお姉ちゃんを殺したアイツに復讐する事だけを考えて生きてきたのだ。
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