第69話 不良娘(本物)と不良娘(誤解)

「頭痛ぇ…」

 目覚めると同時に襲い掛かる頭痛。完全に二日酔いだ。

 それと同時に迫り上げってくる内容物を抑えながらトイレに駆け込む。

 しばらくトイレと友達になりながらゲーゲーと吐き出した。


「頭痛ぇ…あと腹減った…」

 すっかり、そしてスッキリ吐き出した俺は、食道と口内に残る不快感を水で洗い流しながらベットに這いずる。


 思い出した。

 ベロンベロンに酔っ払い、ゲロ吐いた後なんとかホテルに戻ったのだと。

「で、こいつ誰だ…」

 何故かベットに横たわる男を見ながら、痛む頭を押さえる。

 思い出せない。

 あの後何があった?

 頭を掻きながら自分の姿を見た。


「なんで俺裸なんだ…?」

 床を見れば脱ぎ散らかした衣服と下着が散らばっている。

「やらかした…」

 ベットに横たわる男は、どう見ても未成年。完全にアウトだ。

 毛布を捲ると全裸の少年。

「逃げるか…」

 そう決意した。


「ぅ…ここは…」

 絶妙なタイミングで目覚めやがった。

 永遠に眠らせるか?

 そんな選択肢を描きながら覆い被さる。

「うぁぁあ!!」

 顔を真っ赤にしながら叫ぶ少年。

「うるせぇ!!ぶち殺すぞガキャっ!!」

 思わず叫んでしまった。それと同時に迫りくる内容物。


「うぁぁあっ!!」

 さっきよりも大きな叫び声と、俺のゲロが飛び出した。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「香紅璃!!」

 玄関を開けると同時に、目にいっぱいの涙を溜めた父さんが私に飛びついてきた。

「きゃぁ!!」

 そんな父さんを思わず避けた私。

「ぅうっ…香紅璃…こんな時間まで何をしていたんだ…」

 地面に伏せながら、父はそう私に言った。

「まだ18時半だもん…」

 部活をしている学生…いや、高校生なら別に有り得ないことはない帰宅時間であることを私は主張した。

「いつからそんな不良娘になったんだ!!」

 父は泣いていた。

 まだ日も完全に落ちていない時間に帰ったのに不良娘扱いとは…父の不良の概念を本気で問いたいと同時に、それを律儀に守っていた私って…

 そもそも、世界征服を目論む秘密結社の総帥が娘の帰宅時間に口出しするっておかしい…

 健全かつ健康的生活を第一とする父は、絶対に悪の組織の総帥に向いていないと思う。


「申し訳御座いません!!」

 我が家への不満をぶち撒けそうになっていた瞬間、氷華ちゃんの頭を押さえながら、彼女のお父さん(プディングマンの妻の夫さん)が頭を下げそう言った。

 呆気にとられる私と父。

 勢いのままに経緯を説明する彼。氷華ちゃんは不服そうに頭を押さえられていた。

「つまり、ウチの娘がその子を…友達を助けたと…」

 説明を聞き終えた父は震える声でそう確認した。

「はい…本当にご迷惑とご心配をお掛けし、なんとお詫びすれば…」

 頭を下げ続ける氷華ちゃんと彼女のお父さん。


「香紅璃に友達…そんな…有り得ない…」

 何故か父は泣いていた。

「父さんのバカァッ!!」

 私も泣いた。


 父からの評価の低さに。



 



 

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