第37話 赤く染まる白T

 倒しても倒しても、湧き出る怪獣と怪人たち。

 会場中央で背中合わせにもう1人のヒーローと死角を守り合いながら戦う。

 

「きりがないわ!!どうなってんのよこの国のヒーローは!!」

 現状、戦い続けるヒーローは私とその1人だけだ。

「焦るな…敵事態は弱い。」

 そう答えるのは、この国のNo.1ヒーロー。アルティメイター。

 パパには劣るが非常にガタイが良く、能力に頼らずとも、フィジカルだけで怪獣を倒している。

「そんなの分かってるわよ!!私が言ってるのは、大元を叩く戦力はあるのかって聞いてんのよ!!」

 私は燃費が悪い。

 一対一なら、能力のごり押しで勝てるが、集団による持久戦になると分が悪いのだ。

 この場を一気に制圧する力はある。しかし、敵の親玉も、ヴィラン軍団の発生源も分からない今、それをしても戦力が減るだけ。しかし、このままだとジリ貧。

 他の遊撃隊があるのか聞いてるのに、アルティメイターは淡々と戦い続けるだけ。

「レベル低過ぎるわよ!!この国のヒーロー!!」

 苛立ちを隠せずに思わず力を放つ。

 

 お腹空いた…



−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ヤバイ…

 超可愛い…


 背中合わせに立つ少女、レインボークリス。

 世界的なヒーローであり、その容姿でアイドルヒーローとして世界中で人気の次世代ヒーロー。

 そんな少女に良いところを見せようと、冷静に振る舞うが、彼女は苛立っている。

 それもこれも、情けないヒーローたちのせいだ。

 俺だってジリ貧なのは分かってる。しかし、俺とレインボークリス以外のヒーローが全滅してるんだから仕方ないんだよ!!

 そんな本心を隠し、淡々と戦う。それしかなかった。

 

「レベル低過ぎるわよ!!この国のヒーロー!!」

 苛立ちのままに放つレインボークリスの火炎は、ヴィランの軍団を薙ぎ払う。

「凄い火力だ…」

 純粋な称賛が漏れた。

 しかし、再び湧き出るヴィラン軍団。

 エネルギー切れを起こしたのか、レインボークリスの動きが鈍くなっている。

 どうする…どうするんだよ俺!!

 格好良いところを見せながら敵を倒し、大元を叩く方法が思い浮かばない。

 レインボークリスを庇いながら戦う俺。

 

「出店を爆破した奴は誰だ?」

 絶望的な戦場に舞う艷やかな漆黒の長髪。

「言わねぇなら、テメェら全員死なねぇ程度に痛めつけてやるよ…」

 その言葉と同時に戦場を支配する黒髪の女性。

 『百道のプリン』とプリントされた白いTシャツが赤く染まっていく。

「せっかくのデートを台無しにしやがって…泣こうが喚こうが、許さねぇぞ?」

 武生院の最高傑作にして失敗作。誰の手にも負えない最強の主婦が出陣した。


「武生神娘怖い…」

 泣きじゃくるレインボークリスに、どう粋な言葉を掛けようか考えながら、圧倒的な力を見ていた。

 

 No.1ってなんだろう…


 遥かに強い存在がいるのに、No.1って…

 レインボークリスと一緒に泣き出したいくらいだったが、そこは踏み止まった。





 

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