第3話 いざ神殿に参る!!前振り

 男三人に挟まれるような形で、私達は召喚の儀が行われた場所を後にした。入り口外には二人の鎧を着た男が立っていた。前に王子様、横にぱっつん男子、後ろにミークという立ち位置で、小柄な私は埋もれるような形になっていると、警備をしていたと思われる鎧の男たちは、敬礼をする。


「おめでとうございます」


「これで、救われる」


 二人が口々に言おうとするのを、王子が右手を挙げて制止する。


「聖女様は来たばかりで、戸惑っている。静かにしてくれないか・・・・?」


 問うような言葉遣いとは裏腹に、逆らえない威圧を感じる。後ろから、ミークの咳払いが聞こえた。


「オズワルド殿下、美麗様が怯えています。もう少し優しくお願いできませんか」


「そうだそ、力でなんでも終わらせようとするのは良くない」


 気になっていたぱっつん男子の声もとても耳心地の良い青年の声で警戒が解けそうになる。召喚されたこの場所での味方が誰かわからない。いいように使われるかもしれないけど、今の私はこの世界の事を知らなすぎるから、一人でこの場を離れる方がリスクが高い。離れるとしたら、色々理解してからでも遅くないと思う。


「ミュゼァは俺に対して何か恨みでもあるのか、いつも強くあたってくる気がする」


「オズワルド殿下が自由気まま過ぎるんです」


「王子としての役目は果たしている。少しの息抜きくらいは許してくれてもいいだろ」


「お二人は相変わらず仲良しですな」


 やり取りを黙って眺めていると、同意を求めるように、ミークが私に笑いかけてきた。王子の事を否定しても良いものか。チラリとミークに視線の向けると、優しいお爺ちゃんの顔をしている。


「聖女・美麗、思ったことを言っても罰さないと約束をしよう」


 オズワルドがニコニコ笑っている。裏があるような雰囲気を感じるのは私がいけないのかもしれない。


 ミュゼァが疑うような眼差しをオズワルドに向け、鎧の男達は口を開かずに、黙って様子を眺めていた。


「責任を果たしているなら、息抜きはありだと思う」


「聞いたかミュゼァ、会ってすぐの聖女ですら、俺の頑張りが通じているんだ」


「それよりも、ここはどこですか」


 聖女として召喚されて、みんなが喜んでいる、という現状しか知らなくて、場所を変えることと、国の運命が絡んでいる。鎧の男が救われると喜んでいた、ことしか知らない。


「ワシの説明不足で申し訳ありません、美麗様。今いる場所は城の地下実験施設で、これから向かうのは、神殿でございます。美麗様のお力の確認を色々したく」


 ミークがサラッと、実験施設とか言ったけど、城の地下で何をやっているのよ。


 驚いているのを察したのか、ミュゼァがミークのことを睨みつける。


「城の結界が一番強いからと、召喚した聖女を他に奪われるのを避けるための実験施設だ。他の誰が何と言おうが、僕が君のことを守るよ」


 日本に居た頃男性経験の無かった私からすると、優しく守るだなんて言われると、照れてしまう。手で顔を押さえると、オズワルドが名案だと叫んだ。


「ミークに教育係を頼もうと思っていたが、ミュゼァにしよう。断られる前に色々話が決まって俺は嬉しいよ」


「そうですな。ミュゼァ自ら守と言われるとは……これからが楽しみですな」


「後で覚えてろよ。聖女美麗、詳しいことは神殿に移動してから説明する。移動魔法で一気に行きますよ」


 ミュゼァの言葉に、オズワルドが口笛を吹きミークが私の手を取った。


「城で魔法の制限がかかる区域で平然と移動魔法が使えるのは、お前くらいだな」


 オズワルドが私の手を取り、ミュゼァを囲むように円を描いた。


「歴代最強と言われているんだ、これくらいできなきゃダメだろう」


 小さな声で呪文を唱え始めるかと思いきや、手にしていた杖を振るうと、一瞬にして場所が変わった。


 魔法の世界ってすごい。


 聖女として呼ばれたからには、私にも魔法の能力があるのかな。夢に見ていた力が私も使えるようになるなら、怖い面も無いとは言い切れない。戦いに出るのは、尻込みしちゃうけど、ワクワクしている自分もいた。

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