第460話 明日へっ、向かってっ、打つべし
わたくしはもうお姉さんですし、前世も含めると年齢的には三十年以上もの経験と記憶がございますもの。
今更お化けだ何だと怖くはありませんわ。
ただ、正体が分からない何かが怖いのであってお化けが怖いとかではないとかでは────
「まったく、ゴミムシ────」
「ひっ………」
「むっ………?お主見かけない服装をして────」
「ひゃぁぁぁぁあああああっ!!お化けが出ましたわぁぁぁあああああああっ!!!!!」
怖くはない。
怖く等ない。
しかし、それとこれ、攻撃をする攻撃をしないはまた別問題である。
アレが未知の魔物である可能性だってあるのだ。
であるのならば先手必勝、気付かれる前に殴る、考える前にとりあえず殴る、である。
そう、これはお化けが怖い等ではなく計算尽くされ、かつ常に不測の事態を想定しているわたくしの、身身体がちっさくなった名探偵も驚愕する天才的な頭脳を持ってしまった故の行動であると言っておこう。
「打つべし打つべしっ!!明日へっ、向かってっ、打つべし打つべし打つべし打つべしっ!!!…………はぁ、はぁ、はぁ、や、やりましたわっ!!」
そして私は倒れた未知なる生物(敵認定)に馬乗りになるとジ〇ナサン・ジ〇スターもかくやという様な勢いで殴り続ける。
そして、脅威が去ったわたくしは落ち着きを取り戻し、殴り殺した未知なる生物を戦々恐々(決してこの化け物が怖いとかではなく、私のパンチの威力に恐れおののいているだけであるっ!)としながらもその姿をのぞき込む。
するとそこには頭はボコボコ、身体は人間の姿がそこにはあった。
「ひ……………っ!!」
そしてわたくしは別の意味で恐怖する。
「殺ってしまいましたわっ!殺ってしまいましたわっ!どうしましょうっ!!自首するべきなのかしらっ!!あぁ、この歳で務所行き、臭い飯に固いお布団で一生過ごさなければいけない人生なのかしらっ!?でも、でも、わたくしっ!わたくしっ!」
最早、関係ない一般人を殺してしまったという罪悪感と、|来る(きたる)未来を想像してしまいわたくしの頭の中は大混乱である。
あーでもないこーでもないと死体の横を右往左往している様は他人から見れば実に恐ろしい光景であっただろう。
しかし、その事に気付ける程、今のわたくしの脳には余裕がないのだから勘弁願いたい。
「うぅ、いきなり殴り殺そうとするなど、貴様万死に値する狼藉であるぞっ!!この脳筋がっ!!」
「あぁ、良かったですわっ!!まだ生きておりましたのねっ!!立ち上がり悪態をつくくらい元気があれば命に別状はございませんわね。ですがだからと言ってこのまま放っておくのも、後で何か起きても困りますし後遺症が残っても困りますのでわたくしが扱える最上級の回復魔術を行わせて頂きますわねっ!!」
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