第455話 辛抱ならない物は辛抱ならない
初めて出た外の世界は想像していた以上に冷たく───
「やっと出てきたか。お前が出て来るのを今か今かと待っていたのだぞ?化け物が」
───そして残酷であった。
◆
「見事な演技であった。このまま死んでしまうかと思うたぞ」
「いえ、演技などでは無く本当に死にかけているのです。なので早くこの胸に刺さった剣を抜いて貰えませんかね。痛くて痛くて敵いません。このままでは後三日後程で死んでしまいます」
「恐らくお主を痛めつけれるチャンスは今しか無いと分かってはいるのだが、そのせいで今後より一層厳しくなってしまってはたまったものでは無いからな。ここは素直に剣を抜く事により貸し一つとした方が頭の良い判断であると言えよう」
「全て聞こえてますよ」
そう言いながら俺はリカルドの胸に刺さったままの、正真正銘本物の聖剣を抜く。
この聖剣には様々な能力があるのだがその能力の一つに邪悪な心を持つ者ほどその威力は増すというものがある。
今回はこの能力のおかげでリンドバルに寄生していた化け物を騙してリンドバルの身体の外へとおびき出す事が出来たのである。
リンドバルからすればただ剣に貫かれた程度のダメージしか通らない上に化け物の力を手に入れた今のリンドバルからすれば、剣で身体を貫かれる位では今更死にはしない。
しかしリンドバルに寄生しているこの化け物にはリンドバルの身体を通して聖剣の力が作用し、その為リンドバルと化け物との間にダメージ量の乖離が起こったのである。
「さてと、リンドバルよ。聖剣だけでは足りぬので必要な物を揃える間の護衛を頼む」
「かしこまりました、我が主人よ」
そして俺達は教会から姿を消すのであった。
◆
やっと神の糞やろうと相対する事が出来る。
そう思うと興奮してしまい今すぐにでも神の糞やろうを殴りに行きたいという欲求がわたくしを襲って来る。
しかしまだわたくしにはやり残した事がある為その欲求を精神で何とか押さえつけ何とか冷静を保っていられる。
しかし、それもそろそろ限界に近い。
「我慢、今は我慢ですわ」
バキッ!
何故かわたくしの手元から乾いた音が鳴る。
「あら、何故か万年筆が真っ二つになっておりますわね。最近万年筆がよく割れるのですけど、不思議ですわね」
そしてわたくしは何故か真っ二つに折れた万年筆をゴミ箱へ捨てる。
そこには数え切れないほどの万年筆であった物が大量にあった。
しかし、功を急いで手から零れ落ちる等という目も当てられない結果を防ぐ為という事は分かっていても辛抱ならない物は辛抱ならない為どうしようもない。
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