アフリカラリア地方

第38話 旅の計画と出発

 城のルビーの部屋で、ルビーと小次郎は旅の計画を立てていた。

 スピリットフォンや図書館で借りて来たスピリットファイトの雑誌を見ながら、どのように旅を始めるか夢想している。

「まずはハートエッグ孵化場があるところに行かないとダメだね」

「それからスピリットファイトの選手登録をして、俺達は初めてだからビギナーランクだな」

「ビギナー、スーパー、ハイパー、マスターのランクがあるんだよね」

「ビギナーの最後に、メダルを5つ集めた者しか参加できない大会に出て、優勝者が決まる」

「アジアン地方ビギナーランク優勝者はメープルさんだったね」

「ああ、すごかった」

 二人は先日、テレビでスピリットファイトリーグの様子を見ていた。

 メダルを5つ集めた実力者同士のバトルは迫力があって、二人は圧倒された。

「私達もなれるかな、あんな風に」

「さあな、やってみないと分からない」

「だよね。やらないうちに不安がってるのは私らしくない! さあ計画の続き、続き!」

「まずは何処の地方に行くかだよな」

「アフリカラリア地方、アジアン地方、ヨーロッパ地方、アメリカ地方の4つだね」

「ええっと、それぞれの地方の特色は、アフリカラリア地方が自然豊か、アジアン地方が独自の文化、ヨーロッパ地方が綺麗で洗練された街並み、アメリカ地方が産業の発展、さあ何処がいい?」

「う~ん、ここはダーツで決めよう!」

「そんなテキトーな決め方でいいのか⁉」

 ルビーは壁に地図を貼って、ダーツの矢を持ってきた。

「よし、いっくよ~」

 射止めた先は……?

「「アフリカラリア地方⁉」」

 小次郎はアフリカラリア地方をスピリットファイトフォンで検索する。

「自然保護区が多く、固有のスピリットも生まれ、発展途上の国も多い」

「へえ~、行くの楽しみだね!」

「旅に必要な物は、まずスピリットファイトフォンだな」

「略してスピフォ! そういえば私達のはガラケー型だけど、メープルさんのはスマホ型だったね。どうせなら最新型が良かったなあ」

「文句言うな。エメラルド様からタダでもらえただけ有難いだろ」

「それはそうだけど~」

「じゃあ持ち物チェックの続きするぞ。金はいるよなあ……」

「いくら持っていけばいいんだろう」

「スピフォにチャージすることも出来るから現金はあまり必要ないかもな」

「スピリットファイトに勝つと、ファイトマネーももらえるんだよね」

「確かスピフォに自動的に入るんだったよな」

「着替えは必要だよね」

「スピリットファイト専用ホテルに無料で泊まれるし、そこにも歯ブラシとかシャンプーとかはあるって書いてあるぞ」

「じゃあ、大荷物にしなくてもいいってことだね」

「でも止む無く野宿になる時もあるらしい……」

「え、テントセットとか持っていった方がいい?」

「そうだな。俺が持ってくよ」

「ありがとう!」


 その後は旅の準備を進めたり、スピリットファイトのシミュレーションをしたりして日々は過ぎていった。


 出発日前日、夜。

「いよいよ明日ですね」

 ビオラが風呂上がりのルビーの髪を乾かしながら話しかける。

「うん。楽しみ~」

「旅に出たら、こんな風に髪のお手入れも出来ませんからね。自分で何とかするんですよ」

「小次郎いるし大丈夫」

「まさか小次郎と一緒のお部屋に泊まるおつもりですか?」

「え、そうだけど?」

「ダメです! 年頃の男女が同じ部屋なんて! 破廉恥です!」

「え~、だって小次郎だよ? 赤ちゃんの頃から一緒じゃん」

「いいですか、ルビー、あなたはクォーツアイランドの大切な姫なのです。旅先でも、そのことはお忘れなきよう」

「分かってるって!」

「ああ、心配になってきました! チェシャだけじゃなく、私にも電話するんですよ?」

「うん!」


 次の日。

 フェリー乗り場にはルビーと小次郎の見送りに大勢の島民が集まっていた。

「ルビー、絶対に電話するにゃあ~~~」

「うん、するよ~」

「私にもですよ!」

「うん、分かってるって」

「小次郎、旅先でも鍛錬を怠わらないように」

「はい」

「ルビーを頼んだぞ」

「はい」


フェリーに乗り込んだ二人は島民が見えなくなるまで手を振った。

「アフリカラリア地方で一番近いのはオセアニア国のブリスベンだな」

「そこから私達の旅が始まるんだね!」

「ブリスベンのハートエッグ孵化場で、ハートエッグを孵化させて、スピリットファイトの選手登録もする」

「心の卵かあ。どんなのが生まれるんだろうね?」

「メープルさんのは小熊だったな」

「何で小熊だったんだろう?」

「さあ」

「オセアニア国まで、あとどれくらい?」

「あと一日かかる」

「え~、遠い~」

「ずっと海見てなくても、船室に戻って休もうぜ」

「うん、そうしよ」


 船室で少し休んで、ご飯の時間になったので食堂に行き、昼食を食べる。

 ルビーはカレーを、小次郎は天丼を食べる。

 フェリーにはクォーツアイランド外から来た人達も乗っており、食堂にはパラパラと人がいた。

「この中からスピリットファイトに出る人もいるのかな?」

「さあな。ただの観光もいるだろ」

 昼食を食べ終え、船室に戻り、スピリットファイトの動画を見たりする。

 夕食の時間になって食堂に行くと、人が増えていた。

 ルビーは焼肉定食を、小次郎はチキン南蛮定食を頼んだ。

「スピリットファイトって体力使うじゃん」

「そうだな」

「私達、劉備師匠に鍛えられてて良かったね」

「劉備師匠に感謝」

 船室に戻って、少しダラダラした後、シャワー室でシャワーを浴びる。

 ルビーはチェシャとビオラに電話をかけている間、小次郎は精神統一をしていた。

「じゃあ、おやすみ~」

「長かったな」

「二人が中々離してくれないんだもん」

「そろそろ寝るか」

「うん」


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