第29話 ダイソン視察 後編

 ホテルの部屋割りは男女で分かれていた。

(俺がエメラルド様と同室⁉)

「じゃあね、また夕食でね」

「ごゆっくり~」

 扉が閉まり、小次郎とエメラルドは二人きりになった。

「そうかしこまるな、小次郎」

「は、はい」

「今回の視察、どう思った?」

「どうって……。市場は活気があって良かったですし、デパートは高そうなものが並んでてルビーが壊したりしないかヒヤヒヤしてました」

「ルビーは元気だな」

「はい」

「学校も楽しく行っているか」

「はい。生徒会長として日々、生徒のために奮闘しています」

「そうか」

 エメラルドは満足そうに笑った。

 ドンドンドンドン。

 扉を叩く音がした。

「おじいちゃん、小次郎~、夕ご飯食べに行こう~」

「行くか」

「はい」


 夕食のコース料理はどれも美味しくて、4人とも、ぺろりと平らげた。


 その後、男女で分かれて風呂となった。

 大浴場を前にしてルビーははしゃいでいた。

「わ~、ジャグジーあるよ~」

「こら、お風呂場で騒がない、走らない」

 ビオラがルビーの頭を洗面器で軽く叩く。

「痛たた。ごめんなさ~い」


 風呂から出て、部屋に帰る。

 小次郎はエメラルドにルビーの様子を話していた。

「小次郎、今までルビーの護衛をありがとう。嫌だと思ったことはないか?」

「いえ、ありません」

 それは小次郎の素直な気持ちだった。

「生徒会で色々走り回ってますけど、付いていけてます」

「そうか。……なら、これからもよろしく頼む」

「はい!」


 次の日。

 エメラルドとビオラはヒフミと共に会議室で会議をする。

 子どもチームは特区内をサンゴの案内で、好きな所を見て回ることになった。

「映画館とかゲームセンターとか娯楽施設でも周りましょか」

「うん!」

 映画館はサンライトアベニューに面した通りにあった。

「何か、うちの映画館より華やかだね」

「4DXって何だ?」

「映像に合わせて席が動いたり、風、水、香りが体験できるものやね」

「観てみたい!」

 ルビーはキャラメルとストロベリーのハーフ&ハーフポップコーンを頼んだ。

 しかし、座席が揺れたりするので、ポップコーンを盛大にこぼしてしまった。

「私のポップコーン……」

 映画が終わると、小次郎はサンゴを問い詰めた。

「おい、お前、こうなるって分かっててポップコーン買うこと止めなかっただろ」

「ふうん。もしそうなら、どうするんや?」

「ちょ、ちょっと、小次郎もサンゴも止めて~。私が4DX慣れてないだけだから~」

「慣れてない奴が、どうなるか分かってただろって聞いてるんだ」

「はあああああ、めんどくっさ」

 サンゴから今までの笑顔が消えた。

「クォーツアイランドの姫をご案内とか、めんどくっさ」

 突然のサンゴの変貌にルビーと小次郎は驚いている。

「わいがこの特区の真実を教えたるわ」


 サンゴに連れられて来たところは、サンライトアベニューとは打って変わって、暗く淀んでいた。

「ここはミッドナイトアベニュー。この特区の闇や」

「おいおい、サンゴちゃんじゃないか」

 明らかに不良そうな男が話しかけてきた。

「そちらが噂のクォーツアイランドの姫かい?」

「せやで」

「なら、攫って身代金要求じゃああああ」

 不良がルビーに掴みかかろうとする。

 ルビーは回し蹴りで不良を返り討ちにする。

「な、な、あんた、その蹴り……。本当にお姫さんかいな」

「私は戦える姫だもん!」

 毎日、劉備と特訓しているのが生きた。

 いつの間にか不良に囲まれていたが、ルビーと小次郎は背中合わせになって戦う。

「な、何なん、あんたら、強過ぎるやろ!」


「おーい、ルビー、小次郎」

 エメラルドがミッドナイトアベニューに着いたのと最後の不良が倒れたのは同時だった。

「おじいちゃん!」

「ここがミッドナイトアベニューですか。主に貧困層の居住区で犯罪はこっちに集中している訳ですね」

「親父、バレてしもうたな」

「すみません、エメラルド様。サンライトアベニュ―の裏にはミッドナイトアベニューがあるのです。この貧困の格差を埋めることが出来なくて……」

「街づくりに正解はない。でも、お互いに交わらないと一生このままだぜ。一歩ずつ歩み寄っていくのがいいんじゃねえかな」

「エメラルド様……」

「ねっ、サンゴ、私、またこの特区に来るからさ。この街のディープなとこ、また案内してよ」

「ルビーはん……」

「お隣さん同士、仲良くしようよ!」

「はいっ」


 こうして2日間の視察は終わった。

 行きと同じように海王に乗って帰った。

「おじいちゃん、今回、視察に来れて良かったよ。これからさ、きっと私がクォーツアイランドの街づくりをしていかなきゃいかないんだと思う。おじいちゃんが作ったクォーツアイランドをちゃんと引き継がなきゃって思ったよ!」

「その意気だ、ルビー!」

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